第97話 誰だよ!“学生”っていう言葉を言ったのは!

※腕ゴールテープとは、立ち去ろうとする女性に対して、腕を伸ばして制止することで、ランナーがゴールテープを切る様に見えることから名付けられております。プロレス選手がよくするラリアットを、首ではなく、胴体にする動作と思ってください。ちなみにダメージは0です。


前回のあらすじっ!

 理央に『腕ゴールテープ』をしました。オッケーはでましたが、顔を赤くして俺と目を合わせてくれません。どうしたら許してもらえるかなぁ……。以上っ!




 未だに理央が復活しないが、後で真剣に土下座するので今は放置させてもらおう。


「とりあえず理央からオッケーが出たし、火口さんを止めるか。まずは『腕ゴールテープ』とかいうものには頼らず説得しよう。そしてダメなら頼って、後で全力で謝ろう」


 そう思い、火口さんのもとへと向かう。


 未だに一人で「あー!今日もアウトレット行けば会えるかなー!」とか言ってる。これは重症だな。


「なぁ火口さ……」


「あ!ねぇ!汐留さん!汐留さん!」


「はい、汐留です」


「今日もアウトレットに行けばリュー様に会えるかなー!?」


「うーん……今日は会えないんじゃないかな?」


(だって俺、三神さん(先生も付いてくる)と食事会だし!)


「そうだよね……さすがに2日続けてはないよね……」


 と、火口さんのテンションが落ちる。


(お!これはもしかして、“会えないよ”ということを伝えればテンション落ちて、そのまま、いつもの火口さんに戻るんじゃないか?)


 そう思ったため、作戦変更。


「うんうん!おそらくだけど、その人は学生のようだから、さすがに3日続けてはないと……」


 “思うよ?”と言おうとした時…


「あー!そうだ!汐留さん!リュー様はもしかしたらこの学校に通ってるかもしれないんだよ!」


「…………………………」


(おいぃぃぃぃ!!!!なんで復活してんの!?誰だよ!“学生”っていう言葉を言ったのは!一瞬で元に戻ってるじゃねぇか!)


「だからね!今から探しに行こうと思ってるところなんだよ!」


(ヤベェ!今から動くとか言い出した!ホントに先島さんが言った通り、全男子生徒に聞いてまわりそうなんだけど!)


「あーえーっと……いないんじゃ……」


「じゃあ!行ってくるね!」


 と、言って教室から出ようとする。


(くっ!これはもうやるしかないな!)


 そう決意して、火口さんの進路上に腕を出す。


「ん?汐留さん、どうした……」


 と、火口さんが何やら言っているが、無視して俺のもとへ抱き寄せる。


「!?」


 火口さんが驚いているのがわかる。しかし、ここまできて止めるわけにもいかないので…


「どこに行くんだ?お前は俺だけを見ればいいんだよ」


 と、耳元で囁く。


 すると…


「…………………………」


 時が止まったかのように動きを止める。そして“ボッ”と湯気出るくらいに一瞬で顔を真っ赤にして…


「ふぇっ!あ、えーっと……あ、ありがとうございます……」


 と、俯きながら感謝される。


(なぜ感謝されたのかはわからんが、いつもの火口さんに戻ったからいいか。とりあえず全力で土下座しよう)


 そう思う凛であったが、その時の火口さんの心境は…


(し、汐留さんから『腕ゴールテープ』された!す、すごくいい!顔が赤くなってるのがわかるし、ニ、ニヤニヤしてしまう!ヤ、ヤバい!汐留さんの顔が見れない!)


 と、パニックを起こしていたことには気づかなかった。




 3人とも復活したら謝ろうと思っていたが、チャイムの音で復活したため、土下座するタイミングがなくなってしまう。


(まぁ、授業と授業の間の時間に土下座するか)


 そんなことを思いながら1限目を過ごした。




 1限目が終わり、俺はさっそく隣に座っている火口さんへ土下座をするために声をかける。


「あ、あの…火口さん。朝はごめんなさい。俺が抱き寄せるようなことをしてしまって……」


「い、いえ……私も迷惑をかけてしまったので……そ、それに……嬉しかった……です」


 と、モジモジしながら答える。


「ん?最後の方は聞こえなかったが、怒ってないようで安心したよ」


「お、怒ってはない……よ?できればもう一回してほしいなぁ…って思ってるくらいだし……」


「も、もう一回!?そ、それはできないかなぁ…」


「で、ですよね……はぁ…」


 と、ため息までつく火口さん。


(俺がもう一回すると、どうなるんだ?も、もしかして!動画を撮って、脅してくるとか!?………いやいや、火口さんはそんな悪い女の子じゃないはず……。理由はわからんが、もう一回するメンタルはないので、断って正解だな)


 そんなことを思う凛であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る