第96話 ア、アイツ!まだ生きてる……だと!?

※腕ゴールテープとは、立ち去ろうとする女性に対して、腕を伸ばして制止することで、ランナーがゴールテープを切る様に見えることから名付けられております。プロレス選手がよくするラリアットを、首ではなく、胴体にする動作と思ってください。ちなみにダメージは0です。


前回のあらすじっ!

 先島さんに壁ドンしたら理央に怒られました。理由はわかりません。以上っ!


注意:火口さんは一言も喋ってないわけではありません。うるさいのでみんなからいないものとして扱われているだけです。今も一人で喋ってます。そろそろ教室を飛び出しそうで怖いです。




「いい!?凛くん!今、先島さんにしたことは、壁に追いやって壁ドンしただけだよ!?」


「言葉にすると、そうだな」


(もうこれでいいんじゃないか?陰キャの俺が女の子に詰め寄ったら、先島さんのように後ろに下がるから進路妨害は完璧だろ?そして、壁に手を突いて更なる進路妨害……完璧やね?)


 と、俺が思っていると…


「これじゃダメだよ!」


「あ、はい」


 鬼気迫る勢いで否定されました。


「いい!?凛くん!『腕ゴールテープ』とは、まず、私たちが向かい合います」


「ふむ」


「私は凛くんと口喧嘩のようなことをして、凛くんの横を通って逃げようとします」


「ふむふむ」


「そこで、凛くんは私の進路上に腕を出します」


「ほう」


「すると、私は凛くんの腕にぶつかって歩けなくなります」


「ほうほう」


「そして、耳元で例の言葉を囁くことを『腕ゴールテープ』といいます!」


「へぇ……ってできるかぁ!!!!」


(誰だよ!囁くとこまで必要にしたのは!てか、こんなことする人いるの!?)


「はいはい。そんなこと言ってる場合じゃないでしょ?」


「うっ!そうなんだけど、これって耳元で囁くから抱き寄せるみたいな姿勢にならないか?」


「そ、そそそんなことないよ?」


「なぜ疑問系なんだよ!」


(目が泳ぎまくってるんだが!?)


「か、仮に抱き寄せる姿勢なっても私は気にしないから大丈夫だよ!」


「俺が気にするの!だって陰キャに抱き寄せられるんだぞ?周りを見てみろよ。さっき俺が先島さんに壁ドンしたから、俺に敵意剥き出しの目で見てる奴らが沢山いるんだけど…」


 そう、理央に言いながら俺は周りの人たちの声に耳を傾ける。


 すると…


「お、おい!アイツ涼風さんや火口さんだけじゃなくて、俺たちの先島さんまで奪っていきやがった!確か名前は……塩月ブス男!!」


「えー!涼風さんや火口さんだけじゃ飽き足らず、先島さんまで毒牙に!えーっと名前は確か…福留陰キャ!」


「ア、アイツ!まだ生きてる……だと!?俺があの陰キャの顔を浮かべながら、デ○ノートに『キモ谷カス夫』って名前を書いたはずなのに!?」


(ヤベェよ!クラスメイトたちから、反感を買われすぎてる!しかも一人、確実に殺そうとしてたし!名前を覚えられてなくてよかったって初めて思ったわ!)


 どうやら俺は新学期開始1週間でクラスの嫌われ者になったようだ。


(1週間でってヤバいな。スピード出世だぜ!)


 と、現実逃避をしながら理央にある提案をする。


「この状況で理央を抱き寄せるとか無理だから!やめよ?てか、火口さんにもしたらマズイと思うんだけど!?だから、別の案を考えようぜ?」


 と、提案するが…


「あー!そんなこと言っていいんだね?」


「あ、あぁ。俺の身が危ないし、さすがに抱き寄せるのは……」


「ふーん、じゃあ火口さんにリュー様を探し始めるよう促してこよー!ちなみに、止めてほしかったら私に演技してねー!」


「ちょ!」


 そう言って俺の横を通り過ぎようとする。


(止めるにはやるしかないのか!)


 そう思ったため、腕を出して理央が火口さんに向かうのを止めて俺の体の方へ抱き寄せる。


「!?」


 と、理央が驚いているが無視して…


「どこに行くんだ?お前は俺だけを見ればいいんだよ」


 と、耳元で囁く。


 すると一瞬で顔が赤くなり…


「〜〜〜〜〜〜〜!!」


 またもや悶え始める。


(はい……止まるには止まったが、思考も停止してしまいました。さすがにやりすぎました)


「ご、ごめん。理央。さすがにやりすぎた……」


「い、いえ……と、とても……よ、よかったです……」


「ごめんな、付き合わせて…あとわざわざ感想まで言ってくれて。でも、俺の演技は合ってたようで安心したよ」


(ホントは俺なんかにされたくはないだろうが、火口さんのもとへ向かわせないようにするため、無理矢理やってしまった。あとで何か奢ろう)


 そんなことを思う凛であった。

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