第83話 それだけでは補えないくらい、理解不能な行動をするので……

前回のあらすじっ!

 火口さんが心にダメージを負ってしまった!(原因は俺)しばらくは放置して回復に努めてもらおう!以上っ!




 火口さんがブツブツ呟いているので、放置するように店長へとお願いすると…


「わかりました!」


 そう言って、なぜか火口さんの下へ向かう。


「今さっきの“わかりました!”は、なんだったんだよ!」


(全然わかってないんだが!?俺の話聞いてた!?)


 俺の言葉を華麗にスルーする店長。


 そして、火口さんの耳元で何かを呟く。


(えっ!もしかして、さっき話してた『お嬢様のコスプレ』を再度、お願いしてるのか!?)


 そんなことを思いながら、しばらく待つと…


「わ、私……着ます!」


 と、大きな声で言う火口さん。


「えっ!無理して着なくていいんだよ?」


「い、いえ…無理なんかしてません」


 そう言う火口さんの顔はやる気に満ち溢れていた。


「ささっ!アチラの試着室で着替えましょう!」


 そう言って、店長が火口さんを連れて行く。


(相変わらず、着る気のない女の子にコスプレをさせるのは天才的だなぁ)


 そんなことを思いながら、店を出ようとすると…


「グへッ!」


 制服の襟を掴まれる。


「なんで今回も店から出ようとしてるんですか!」


「いや、だって俺なんかにコスプレしてるところ、見られたくないと思ったので……」


「はいはい、そんなこと言わないの」


 と、言って、俺を試着室まで連れてくる店長。


(あれ!?この流れってなんか経験したことあるんだけど!?)


 そんなことを思いながら試着室前で待っていると、カーテンが開き…


「ど、どうかな?汐留さん……似合ってます………か?」


 と、聞かれる。


 火口さんが着ているのは、リューくんのお嬢様の衣装。黒のロリータファッションでフリルがついているワンピースタイプ。


 普段見ない格好と、火口さんが恥ずかしがっている様子がとても似合っていて…


「あ、あぁ。とても似合っているよ。お嬢様みたいだ」


 と、少し顔を赤くしながら答えると…


「あ、ありがとう……ございます……。汐留さんにそう言われて……とても嬉しいです」


 と、顔を真っ赤にしながら言われるので…


「あ、あぁ……どういたしまして…」


 と、答えることしかできない凛であった。




 あれから、再度、店長から揶揄われて、火口さんは慌てて試着室へと戻った。


 火口さんの着替えを待っている間…


「店長」


「はい?なんでしょうか?」


「俺、なぜか店長の連絡先をゲットしたんですが、破り捨てた方がいいですかね?」


「やめてください!私のプライベート用の連絡先ですよ!?簡単に手に入るものじゃないんですよ!?」


「えー、でも店長の連絡先ですよ?需要ないと思いますよ?」


「いやいや!需要すごくありますよ!私、美人だと思いませんか!?」


「まぁ、美人だとは思いますが、それだけでは補えないくらい、理解不能な行動をするので……」


「私、そろそろ怒っていいような気がするんですが!」


 そんな会話をしながら火口さんの着替えを待つ凛であった。


 ちなみに店長の連絡先は登録させられました。連絡を取り合う機会がないことを願おう。




 火口さんが着替え終わり、現在は俺が火口さんを家へと送っている途中。


「あ、あの!今日は無理矢理付き合わせてしまい、ごめんなさい」


 と、火口さんに言われたため、慌てて否定する。


「い、いや!無理矢理とかではなかったよ!火口さんとのアウトレットはとても楽しかったし!」


 それを聞いた火口さんは…


「ホ、ホント!よかったぁ。汐留さんに楽しんでもらえて…」


 と、安堵する。


「ホントに楽しかったよ!火口さんの普段は見れないところも見ることができたから!」


(お嬢様のコスプレをした火口さんや、リュー様の登場で興奮する………いや、この火口さんは何度も見たな)


「そ、それなら!あ、あのね……もしよかったらだけど……連絡先を交換しましぇんか!?」


 と、噛みながら提案される。噛んでしまったことで、火口さんの顔は真っ赤になる。


「え!?俺なんかの連絡先をゲットしてもいいことないけど?」


「そんなことはないけど……どう…かな?」


 と、不安そうな顔で聞いてくる。


 それに対して俺は…


「あぁ!いいよ!」


 と、返答する。


 それを聞いた火口さんは“パーッ”という効果音が聞こえてくるくらい、一瞬で笑顔となり…


「あ、ありがとね!汐留さん!」


 と、いつも自信のない言葉遣いとは違うこともあり、見惚れてしまう凛であった。

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