第82話 あ!いい意味でね!

前回のあらすじっ!

 俺からのメッセージがたくさんのリューくんファンへ伝わっているようで安心したぜ!以上っ!




 俺が一安心していると、店長が俺の耳元で…


「先程は私のお願いを聞いていただきありがとうございます!」


「いえいえ!俺も拡散が止まるようなので安心してます!」


「…………と、ところで!先程は私のお願いを聞いていただいたので、今度は君のお願いを叶えようと思います!」


「えっ!俺、店長にお願いすることとかないですけど?」


「またまた〜、隠さなくてもいいですよ!?今日も私に手伝ってほしいんですよね!?彼女をコスプレさせるために!」


「そんなわけあるかっ!」


(ものすごい勘違いをしてるんだけど!?)


「えっ!この店に5日連続で訪れて、女の子たちにコスプレさせているので、てっきり今日もコスプレのためかと……」


「最初の方は事実だが、そんな目的でこの店に来たことは一度もない!俺は火口さんの付き添いできたの!」


「そう言いながら実は、その女の子のコスプレした姿が見たくて付いてきたんですよね?」


「だから違うって言ってるだろうが!」


「えっ!違うの!?じゃ、じゃあ、も、もしかして、わ、私に会うために!?」


「それも違うわ!」


(むしろ会いたくなかったんだが!)


「そんな照れなくてもいいですよ?あ!これ私のプライベート用の連絡先です!」


「なぜ渡されるのかが理解できないんだが!?」


「あ!登録の仕方がわからない?それならお姉さんが懇切丁寧に……」


「だから違うって言ってるだろうが!」


(なぜ、連絡先を渡される流れになったんだ!?)


 そんな話をしていると、急に店長が真面目な顔をする。


「ホントは、あのかわいい女の子にもコスプレさせようって思ってるんですよね?私のお願いを聞いていただいたので、お手伝いしますよ?」


「だから違う………」


「了解致しました!その願い、この店長が叶えてみせましょう!」


「聞けよ!」


 と、言う俺の言葉に聞く耳持たず、俺から離れて火口さんの下へと向かう店長。


 そして、火口さんに…


「よかったら“俺執事”のお嬢様のコスプレをしてみませんか!?」


 と、言い、コスプレ衣装を着てもらうために動き出していた。


(そのコミュ力がすごく羨ましいよ!)


 初対面からコスプレをお願いできるコミュ力に驚く。


「ふぇっ!わ、私には無理です!そ、その……お嬢様みたいに……可愛くない……ですので…」


(あれ?テンションが高かった火口さんが、少しオドオドし始めてるぞ?)


「そんなことないですよ!私はすごくかわいい女の子だと思いますよ!ねぇ!君もそう思うでしょ!?」


 と、突然、俺に話を振る店長。


「えっ!俺ですか!?」


「そうそう!他に誰がいるんですか!?」


「ですよね。でも俺なんかに褒められても……」


「はいはい、そんなこと言わないの!女の子の方は返答を待ってるよ?」


 そう言われたので火口さんを見てみると、すごく真剣な表情で俺を見ていた。


 そのため、答えるしかないと思い…


「えーっと……ひ、火口さんはその……女の子らしくて、かわいいと思うよ?」


 と、思っていたことを素直に言う。


 すると、火口さんの顔が“ボッ!”と一瞬で赤くなり…


「あ、ありがとう……ございます。その……とても嬉しい……です」


「あ、あぁ。こんな陰キャから褒められても嬉しくないとは思うが…」


「い、いえ…ホントに嬉しい……です」


 と、お互いに顔を赤くして、恥ずかしがっていたため、店長が暖かい目で俺たちを見ていたことに気づくことはなかった。




「はいはい!イチャイチャはこれくらいで!」


 との店長の言葉で俺は復活する。


「べ、別にイチャイチャしてたわけじゃないですよ!?なぁ!火口さん!?」


 と、火口さんに同意を得てもらおうとするが…


「し、汐留さんが、私のことかわいいって……うぅ〜」


 何やら一人でブツブツ呟いていた。


(俺から褒められたことに対してなんらかの自己防衛機能が働いたんだろう。しばらくは放置しとこう)


「すみません、火口さんは陰キャから褒められたため、別の世界で休養してるようです。そのため返答できませんでした。しばらく放置しといてください」


「なるほど、これでも気づがないんですね……はぁ〜、さすが鈍感…」


「それ褒めてないよな!?」


「あ!いい意味でね!」


「遅いわ!」


(いや、“いい意味でね!”をつけてもフォローになってねぇよ!)


 そんなことを思いながら、火口さんの復活を待つ凛であった。

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