第81話 ごめんよ…店長…。今度、コスプレ以外のお願いなら聞いてあげるよ

前回のあらすじっ!

 店長がコスプレした俺を呼んでいる。はやく拡散を止めないと!以上っ!




 店長が表にいるリューくんファンに向けて、俺がいることを教える。


 それを聞いた俺は、店の裏手から登場する。


 すると……


「「「「キャァァァァァァ!!!!」」」」


 と、割れんばかりの悲鳴が聞こえてきた。


(悲鳴あげるくらいなら会わないでほしいんですけど!てか、俺に文句を言いたい人多すぎだろ!)


 そんなことを登場して数秒で思う。


(えっ!この空気で今からイケメンセリフを言うの!?無理なんだけど!)


 と、思ったが…


(いや!気絶までして俺に付き合ってくれた店員さんに、合わせる顔がなくなってしまう!よし!頑張るぞ!)


 そう、気合を入れてから、俺は髪をかきあげて、キメ顔で…


「俺に惚れたら火傷するぜ?」


 と、言う。


 すると…


「「「「キャァァァァァァ!!!!」」」」


 登場よりも大きな悲鳴をいただく。


(あ、やっぱりね……わかってました。俺、気持ち悪いよね?………ごめんね、リューくん……またファンを減らしてしまったよ)


 と、凛は思っているが、周りの人たちは……


「ヤ、ヤバい!あれは!“俺執事”の第3巻で『このカッコいい俺を執事にしているのはこのお嬢様だ!ということを、SNSに拡散する時の動画でリュー様が言った言葉!』それを選択するとは…………グッドです!」


「カ、カッコ良すぎる!しかも第3巻のあの名シーンと、類似しすぎている!これは、私たちへ“『拡散して!』というメッセージ!受け取ったよ!リュー様!!」


「ヤ、ヤバすぎる!今日もいるかなーって来ただけなのに、もう一度、リュー様に出会うことができるなんて!こ、この動画も全国のリュー様ファンに拡散しなければっ!」


 そんなことをどこかの人たちが話していたが、叫び声や凛が変なことを考えていたため、凛の耳には届かなかった。


 また、リュー様を見た火口さんが…


「キャァァァァ!カッコいいよ!!しかも、近くで見るとわかる!このコスプレをしている人は、絶対にあの時私に“顎クイ”をしてくれた王子様!ホントに私と同じ学校の人かも!」


 と、叫んでいたことも、凛の耳には届かなかった。




 店長の作戦を実行して…


(ふぅ、とりあえず、これで拡散が止まったな。まぁ、全身に悲鳴を受けて心は辛いがな!)


 そう思っていると、店長が俺の耳元で…


「素晴らしい演技でした!あの演技なら、私は文句ありません!」


「おっ!ホントですか!店長からお墨付きをいただけたのなら、これで拡散も止まりますね」


「……………あー、うん!止まりますね!」


「なぜ返答までに間があったのかはわかりませんが、店長がそう言うなら一安心ですね!」


「……………………」


 なぜか黙る店長だが、俺は気分がいいため、疑問に思うことはなかった。


 また、店長が…


「多分リュー様ファンなら、このセリフを“拡散してほしい”って捉えることは黙っておこう……。店が繁盛することはいいことだからね」


 と、呟いてたことに気づかない凛であった。




 俺はその後、更なる苦情を聞きたくなかったので、すぐに店の裏手へと移動する。


 そして、リューくんコスプレから制服に着替えて、火口さんと、店長のもとへと歩く。


「あ!汐留さん!どこに行ってたんですか!?」


「あ、あぁ。ちょっとトイレに」


「汐留さんが店から出るところを、たまたま店長さんが見てたからよかったです。でも、今度からは急にどこかへ行ったりしないでくださいね!」


「は、はい、善処します」


(おい!この店に来た時よりもテンションが高いんだけど!)


「でね!汐留さんがいなかった間に、なんと!リュー様に会えたんですよ!」


「お、おう……。それはよかったよ……」


「でね!リュー様は第3巻に出てくる名言を言ったんだ!」


「へ、へぇ……どんなセリフだった?」


「“俺に惚れたら火傷するぜ?”ってセリフなんだけど、その言葉にはリュー様からファンへのメッセージが込められてたんだ!」


「お!そうなのか!」


(やっぱり、店長の言った通り、あのセリフには“拡散するな”っていうメッセージが込められてたんだ!ごめんよ…店長…。今度、コスプレ以外のお願いなら聞いてあげるよ)


「うん!私はそのメッセージをしっかりと実行しようと思ってるんだ!」


「おー!それはいいことじゃないか!」


(リュー様ファンにはしっかりと伝わってる!しかも、俺からのメッセージを実行してくれる!やっぱり店長の作戦を行ってよかったよ!)


 そんなことを思う凛であった。

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