第69話 べ、別に、私が聞きたいからってわけじゃないんだからねっ!

前回のあらすじっ!

 そんなに俺の演技酷かった!?ねぇ!拡散するくらい!?俺、外出れなくなるよ!?以上っ!




「ねぇ、これでもまだ、お兄でないって言う?」


(くっ!俺だけなら誤魔化せるかもしれなかったが、美羽までバッチリ動画に収められてるから、言い訳が思いつかぬ!)


「……………………」


(よって最終手段、黙秘権を行使するっ!)


「へぇ、黙ってるつもりなんだ……」


「……………………」


「いいよ、お兄がそのつもりなら……」


 そう言って、舞はスマホを触って…


「『黙って俺に守られてりゃいいんだよ』」


「『俺のそばから離れるな』」


「『そんな顔されたら………』」


「わー!!!!ごめんなさい!俺です!それ、俺ですから!」


 永遠に舞のケータイから、俺が演技したときの声が流れてくる。


(えっ!なんで舞のやつ、俺の演技した時の声だけケータイから流してんの!?ま、まさか!俺の弱みを握るため!?)


 そんなことを思ったため…


「な、なんで、俺の声が永遠に流れてるんだ?」


 と、聞いてみる。


 すると…


「それは!言われてみたかったセリフを、いつでもお兄の声で聞きたかった……じゃなくて!いつでもお兄を脅すことができるように、編集したの!……べ、別に、私が聞きたいからってわけじゃないんだからねっ!」


 俺の想像通りの返答が返ってきた。


(やべぇ、舞に逆らうことがどんどんできなくなってる…)


 そんなことを思っていると…


「ま、まぁ!この動画がお兄ってことは、わかってたんだけど、なんでそんなことになったの?」


 と、舞が首を傾げながら聞いてくる。


「えーっとですね。て、店長と美羽にコスプレさせられて……気がつくと、こんなことになってました。俺も何故かはわかりません」


(うん、ホントに、なんでなんだろう?)


「………美羽ちゃんいいなぁ………」


「ん?美羽がどうした?」


「美羽ちゃんが可哀想だって言ったの!!」


「それを本人に言うのも可哀想だぞ!?」


(目の前に本人いるんだけど!?)


「お兄はいいの!」


「よくねぇよ!」


 なんでそう思うんだよ!


「はぁ、お兄が何故、コスプレをして、こんなことになったかは大体想像できるから、置いといて」


(えっ!わかんの!?当事者の俺でさえ、わかってないのに!?)


「お兄、私がなんで怒ってるか、わかる?」


「……こんな、下手くそな演技が流出して、妹として恥ずかしいとか?」


 俺が思っていたことを言うと…


「はぁ、わかってないと思ってたよ」


 なぜか俺がわかっていないことが、わかっていたようだ。


「いい?お兄。今回はコスプレしてたから、コスプレの人がお兄ってことはバレてないと思う。でも!お兄の顔は、そ、その……か、カッコいい……から……」


「ん?俺の顔がなんだって?」


 最後の方が聞こえなかったため、聞き返すと…


「な、なんでもない!」


 と、慌ててはぐらかす。


(はぐらかすってことは、俺に言ったら傷つくようなことなのかな?つまり、俺の顔を見られないようにしろ!ということが言いたいようだ。……やっぱり俺の顔は世に出回ったらダメらしい)


 改めて、舞から、自分の顔のひどさに落胆していたため…


「うぅ〜、なんで私はカッコいいの一言が言えないのよ……」


 と、そっぽを向いて言われたことに凛が気づくことはなかった。




〜とある女性視点〜

※重要キャラではありません。


 私はある動画をSNSにアップした。


 すると…


「この男性、めっちゃカッコいい!」


「ヤバい!完全なるリュー様!」


「えっ!どこのコスプレイヤーさんですか!?」


「演技も完璧だ!これは大物俳優がやってるんじゃないか?」


 等々、SNS上では大盛り上がりを見せている。


「まだまだこの程度の盛り上がりで済ませてたまりますか!」


 そう、私は決意して、全国のリュー様ファンへと拡散していく。




 とある女性の努力のおかげで、次の日のテレビで、この動画の人は誰なのか!?というニュースが取り上げられた。そのため、知らないところで、凛が有名人となっていることに、凛は気づかなかった。


 また、SNSの拡散やニュースにて取り上げられたため……


「ん?この動画って……凛くん!?これは何があったか問い詰めないと!」


「えっ!この人!学校で私に“顎クイ”してくれた王子様!?ってことは、このリュー様は同じ学校の人!?」


「なんでセンパイがウチ以外の女とイチャイチャしてるんですか。……なるほど、センパイにとってウチは都合のいい女なんですね。それならウチがセンパイの1番となるために、邪魔をする女は全員消さないと………」


「こ、この動画って汐留くんと幼馴染の子だよね!?明日、何があったか委員長権限で聞かないと!」


「おい、この動画って汐留凛じゃないか。くっ!こんな身近なところに、優良な結婚相手がいたとは!!」


 と、5人の女性がこの動画の正体に気づいたことを凛が知るのは、もう少し後となる。

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