2章って“修羅場”と“ツッコミ”ばかりの日常なんだが?

第48話 呼んでみただけ〜!

〜2章開始〜


 あれから改めて、涼風さんと挨拶をした俺は、涼風さんを家に送るため、一緒に歩いている。


 そして涼風さんの家の前に着くと…


「今日はありがとね、凛くん!」


「こちらこそだよ!涼風さん!」


 と、挨拶をするが……


「………………」


 何故かジト目で睨まれている。


「えーっと……なに?」


 そう聞くと、涼風さんは頬を膨らませながら…


「なんで!私は凛くんって呼んでるのに、凛くんはまだ私を名字で呼んでるの!?」


「そこ!?」


 もっと深刻なことで睨まれてるんかと……


「“なに、そんなことで?”みたいな反応をしない!」


 やべぇ、顔にでてたらしい。


「い、いやぁ………女の子を名前で呼ぶのって、慣れるまで恥ずかしいから……」


 と、苦笑いをして頬を掻きながら言う。


 すると…


「照れてるところも良き!だよ!凛くん!」


 と、頬を赤くしながら言う涼風さん。


「て、照れてねぇよ!?」


 図星を言われて叫ぶしかできない俺。


(な、なんか胸がドキドキするんだけど!くそぅ、美羽のように小さい頃から呼んでる女の子には抵抗ないのに、何故、俺は涼風さんを下の名前で呼ぶのを照れてるんだ!?)


「へぇ、照れてないんだ〜!」


 と、ニコニコしながら俺に詰め寄ってくる。その時、上目遣いとなったため、俺はさらにドキドキしてしまう。


(くっ!なぜかわからないが、涼風さんの名前を呼ぶのは恥ずかしい!)


 目を逸らしてしまったためか、涼風さんが追撃してくる。


「ふふっ、ねぇ、凛くん!」


「な、なんだよ?」


「呼んでみただけ〜!」


「くそぅ………」


 からかいやがって!やられたらやり返す精神の俺なので……


「り、理央………」


 と、思ったけど、照れずに言えなかった。俺の顔が一瞬で赤くなったのが自覚できる。


「ふふっ!な〜に?」


「よ、呼んでみただけだ」


「ありがと〜!」


 コイツ、やりたい放題だな!


「じゃ!また学校でね!凛くん!」


「あ、あぁ、またな、理央………」


「うん!」


 そう、笑顔で返事をして家に入っていく。なんか今日は怒涛の1日だったなぁ。そんなことを思いながら家に帰る凛であった。




「ただいま〜」


 と、玄関に入ると…


「おかえり、お兄」


「あら?おかえり、凛」


「た、助けてくれ〜凛!」


(あれ?おかしいな?舞以外にも挨拶をされたぞ?)


 そう思ってリビングへ入ると、正座をしている父さん、『汐留篤しおどめあつし』と、正座している父さんを上からゴミを見るような目で見る母さん、『汐留葵しおどめあおい』と、この家に異常はないかのようにテレビを見ている舞がいた。


 ………なにこの状況!?


「凛、おかえり。ご飯食べた?」


「凛、助けてくれぇぇぇぇ!」


(舞がスルーしてるってことは、どうせ、父さんがまた変なことして怒られてるんだろう)


「ご飯はまだなんだよ。母さん、今日はなに?」


「それは………」


「凛!?え、助けてくれないの!?」


 と、父さんが母さんの言葉を遮って話し出す。

(舞が無視してるから助けないんだよ!)


 母さんの言葉を遮ったため……


「ねぇ、あなた。反省してるの?」


「してますしてます大いにしてます」


「じゃあ、反省したことを今、言って?」


「はい。わたくし、汐留篤は今後、胸の大きい女性に目移りは一切しません。汐留葵一筋です」


「そう、それでいいわ、あなた」


「はっ!ありがたき幸せ」


(いや、なにこれ!?自分の妻に“ありがたき幸せ”って言葉、普通使わなくね!?)


 そんなことを思いながら、今日の晩御飯のカレーを食べ始める凛であった。




 俺の父さんの名前は汐留篤。元ボクシング世界チャンピオンで、現在はバラエティーやドラマなどのスタントマンとして活躍している。若い頃の写真を見るが、普通にイケメン。殴ってやりたいくらいに、イケメン。そして、今も普通にカッコいい。父さんも目つきが悪いが、それがなぜかイケメン度を上げている。俺にもそのDNAが欲しかったんだけど!


 俺の母さんの名前は汐留葵。大人気女優で現在も活躍中。40代のはずなんだが、全然見えない。20代後半や30代前半と言われても納得してしまうくらい、若作りをしている。欠点としては胸がその………コメントできない感じになってるため、巨乳に凄まじい敵意を向けている。




「そういえば、父さんと母さんは確か同じドラマの撮影に行ってなかった?今日は帰ってきて大丈夫か?」


 と、疑問に思ったことを聞く。


「えぇ、今日は帰ってくる予定なかったんだけど、あなたが、脂肪の塊ばかりに目がいってしまってたからお仕置……じゃなくて、調教しようと家に帰ってきたのよ」


(いや!言い直したことで、さらに酷くなってるんだけど!父さんなにしたんだよ!)


 と、父さんを見ると、全力で首を横に振っていた。まるで、“そんなことしたら、母さんからのお仕置……じゃなくて調教が待ってるからするはずない!”とでも言っているようだ。


(父さんも言い直して酷くなってるし……。もう俺の両親は手遅れのようだ……)


 そんなことを思う凛であった。

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