第36話 今日も土下座ご苦労様です!

前回のあらすじっ!

 メイド服って…………ヤバいな…………。以上っ!




 しばらく無言の時間が続き……


「はいはい、イチャイチャしないの!」


 と、店長がこの空気を変えるように大きな声を出す。それによって俺も復活する。


「い、イチャイチャなんかしてません!な?山野?」


 俺は全力を持って否定するが、いくら待っても返答がない。そのため、山野を見てみると…


「えへ、えへへへ、せ、センパイが、か、かわ、かわいいって!」


(コイツ聞いてねぇし!)


 現在もどこかの世界へいるらしい。今も「〜〜〜〜〜〜」と声にならない声をあげて悶えてる。


(いや、かわいいな!ってそうじゃねぇだろ!)


「い、いや〜、ど、どうやら俺みたいな奴から褒められて、嫌な思いをしたんかな?現実逃避してますので、決してイチャイチャしてたわけではありません!」


 と、力強く否定する。すると…


「はぁ………あ、もうそれでいいです」


「ホント適当だな!」


(この人ホント店長なの!?って疑いたいんだが!)


 未だ戻って来ない山野を横目にそう思う凛であった。




 メイド服の試着を終え、お店を出る。外もそろそろ暗くなる時間になってきたため、解散という運びになった。今はアウトレットを出ようと歩いている途中だが……


「あ!見てください!センパイ!」


「ん?なんだ?」


 そう言って山野が指差している方を向くと


「お、ガチャガチャか」


 大量のガチャガチャが見えた。


「ちょっと寄りましょ?」


「あぁ、いいぞ」


(俺も久しぶりにガチャガチャを見たくなったからな)


 しばらく二人で見て回っていると……


「あー!センパイ見てください!これ!」


「ん?ってなんだこれは?」


 山野に呼ばれて見てみると…


「これはですね!今流行りの“ドゲザリス”です!かわいいですよね!」


 と、ドヤ顔で言う。よくみるとリスが土下座をしていた。


「かわいい……のか?」


「はい!小動物のリスが頭を下げているところとか、すごくかわいいじゃないですか!!」


「リスになにさせてんだよ!」


 この製作者はリスに恨みでもあるのか!?っと思いたくなるような完璧な土下座をしていた。


(ついに日本の土下座文化をリスに体現させる時代になったのか………。この先の日本、大丈夫か?)


 なぜ人気なのかはわからないが、今を生きる女子高校生が言うんだから、人気なんだろう。多分、みんなリスに土下座させて悦に浸りたい人たちばかりなんだろう。…やべぇ、リスに同情しか湧かねぇ。


「ねぇセンパイ!一回やりましょうよ!」


「やらねぇよ!?俺、リスに謝ってほしいこととかないし!」


 手に入れても“今日も土下座ご苦労様です!”としか思わねから!


「えー!センパイのケチ!」


「はいはい、なんとでも言いなさい」


 どう言われようが引かないからな。


 すると…


「ケチ、バカ、シスコン!」


「いや、シスコンじゃねぇよ!」


 やべぇ、なんとでも言えって言ったけど、反論してしまった。コイツ、ことあるごとに俺をシスコンにしたいらしい。


「はいはい、わかってますよ。シスコンじゃないんですよね」


「全然わかってるような態度じゃないんだけど!?」


 コイツ、ホントにわかってるんだか……


「もう、そんなこと言わずに一緒に引きますよ!」


 と、強引に俺をガチャガチャの前に移動させる。


(はぁ、ま、ガチャガチャだから高いわけでもないし、一回だけなら)


 そう考えて一回だけする。


 すると…


「おー、これはまた、見事な土下座だな……」


 俺が当てたのは青年の服を着たリスが土下座してる物だった。「なんだこれ?」と思って付属している説明を読むと…


「ふむふむ、“彼女に浮気がバレた時の土下座”かぁ……ってリスになにさせてんだよ!」


「へぇ、センパイ、ウチに黙って浮気をしてるんですね?そんなセンパイには………」


「してねぇよ!」


(俺が“浮気がバレた時のドゲザリス”を当てたからか、なんか俺が浮気してるみたいに勘違いされたじゃねぇか!………いや、そもそも別に俺が女の子と遊ぼうが山野には関係なくね!?)


「まぁ、いいでしょう。では!気を取り直して!」


 そう言って山野もガチャガチャをする。すると…


「おー!かわいいリスが当たりました!」


 俺も見てみると、山野が当てたのはスーツを着たリスが土下座しているものだった。


(うわぁ、今度もリスになにさせてるんだか…。これ、絶対上司に土下座してるパターンだよ……)


 そう思い、説明を読んでみると…


「ふむふむ、“娘さんをください!と娘の父親へ土下座しているシーン”って、なぜそれをチョイスしたし!」


(いや、仕事上での土下座じゃないんかよ!)


 そんなことを考えてると…


「え!センパイ、ウチを貰うためにウチの親に土下座するんですか!?」


「せんわ!さっきからなんで当たった“ドゲザリス”を俺と山野で想定してんだよ!」


「え〜、ウチはそれでもいいんですけどね〜」


 と、ニコニコしながら言うので…


「はいはい」


 と雑に扱う。なんでこんな後輩と関わってんだろうと、ホントに考える凛であった。

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