第37話 俺のせいで客が少なくなっても知りません。働き続けます。
前回のあらすじっ!
“ドゲザリス”が不憫で仕方ない!以上っ!
月日は遡り俺が高校1年生の夏休み頃…
「よし、採用!」
「ホントですか!ありがとうございます!」
俺は“喫茶 ストーン”でバイトの面接をしていた。
「うん!君みたいな子を私は待ってました!さっそくなんだけど今週の日曜日からバイトお願いね」
「はい!わかりました!」
そう俺は返事をして喫茶店を出る。働く条件として前髪をヘアゴムで結ぶ事を条件として出された。そのため、俺の目つきの悪さを伝えて、見ていただくと、なぜか一発で採用が決まった。
(理由はわからないが、マスターの奥さんが俺の目つきの悪さを見て採用したんだ。俺のせいで客が少なくなっても知りません。働き続けます。多分、“恐怖の喫茶店”とかで売り出すんだろう。失敗しても俺は関係ありません)
そんなことを考えながら家に帰る。
今週の日曜日、つまり勤務初日。俺はホールの仕事を任された。
「基本的にお客様から注文を聞いて、私や旦那に伝えるのと、机や床の掃除、お客様の席への移動等の対応をお願いするよ」
「わかりました」
そう答えるが…
「ちょっとちょっと!リラックスしなよ!そんな怖い顔したらダメだよ?」
「あ、すみません、今度、整形してきます」
「いや、そーゆーことじゃないんだけど!」
どうやら笑顔になってないらしい。体が硬くなって表情がぎこちないとか。
「接客する時は笑顔が大事!いい!?」
「わかりました!」
「そうそうそんな感じよ!」
奥さんからもOKが出たので、肩の力を抜いて笑顔で仕事をする。
凛が奥の方で仕事していると、カウンター前では…
「マスターの奥さん!あの美男子は初めて見るけどバイトの子かい?」
「そーなんですよ!なかなかの美男子でしょ?あの子、今日がバイト初日なの。これから平日夜や土日のどちらかは出勤してもらうから、是非、目の保養に時々寄っていただきたいと思います」
「商売上手だねぇ、奥さん。まんまとその作戦に乗ってしまいそうだよ!」
「いえいえ、そんなことないですよ」
等々、凛のことで盛り上がってた。
大分、仕事に慣れた夕方ごろ、他のお客様の対応をしていると…
「おいおい、俺の服が濡れちまったじゃねぇか!?」
「す、すみません!」
と、女の子が謝る声が聞こえた。そちらを向くと、中学生くらいの女の子がガタイのいい男に頭を下げていた。
(止めに入らないと!)
そう思って仲介に入る。
「どうされましたか?」
「あ?こいつが俺の一張羅を汚しやがったんだよ!」
「ほ、ホントにすみません!」
どうやら女の子がつまづいた拍子に男性の服へ飲み物をかけてしまったらしい。
「私からも申し訳ありません。サービス等もさせていただきますので……」
と、俺や女の子が頭を下げるが……
「あ?俺は今から大事な用があったんだよ!どーしてくれるんだ!」
まだ男の機嫌は一向に良くならない。徐々に周りのお客様がこちらに注目している。
「できる限りのサービスはさせていただきますので…」
そう言うと…
「そうか、それなら今から俺のダチを呼ぶから。で、俺とダチの飲食代はタダにしてもらおう」
そんな提案をしてくる。
「さ、さすがにその要望はこちらも厳しいところが……」
「あ?できる限りって言っただろ?これくらいできんのか?」
(コイツ、ここまで謝っててまだ突っかかってくるのか!なんかイライラしてきたぞ)
「ですからそれはさすがに厳しいと…」
「おい!そんなこと言っていいのか!?俺は一張羅を汚されたんだぞ!?」
(ちょっと声がうるさいなぁ。他のお客様も注目してきたし。てか、もう下手に出なくてもいいよな?)
「お客様、うるさいですので、そろそろ黙ってもらっても……」
「あ?なんだ?その言葉遣いは?お客様は神様なんだろ?」
「あ、申し訳ありません、神様。他の神様にご迷惑がかかりますので、少々……」
「舐めた口聞いてんじゃねぇよ!」
と、自分が座っていた椅子を力強く蹴る。
(コイツ、ついには物に当たり出したぞ)
「すみません神様。そちら他の神様が使用される椅子ですので、手荒なマネは……」
「てめぇが舐めたマネしてんだろうが!」
そう言って俺に殴りかかってくる。
「はぁ」
と、ため息をついてから男のパンチを右手で受け止める。
(男が驚愕の顔をしているが、止められたことに驚いているのか?こんなの父さんのパンチに比べたら怖くもなんともなかったぞ?)
「なんだ、こんなもんか?」
そう言って睨みつける。
すると、「チッ」と舌打ちして喫茶店を出て行った。
周りは拍手するものやスタンディングオベーションをする人もいる。
(いや、ショーを見せたわけじゃないんだが!)
そう思ったが、まず、優先すべきは女の子の方だ。
「あの、大丈夫ですか?怪我はないですか?」
「あ、は、はい!あ、ありがとうございました!」
そう言って女の子は頭を下げる。
「いえいえ、どういたしまして!怪我がなくて良かったよ」
俺はそれに応えるように笑顔で返答する。するとその女の子は顔を真っ赤にして、慌てて…
「こ、これ!ウチが食べた分のお金です!ご、ご馳走様でした!」
そう言って慌てて喫茶店を出る。
(あ、安心させるように渾身の笑顔を女の子にしてしまった!これは悪い男からの恐怖に加えて、俺の渾身の笑顔(恐怖を付与)によって逃げられてしまった……。後で奥さんにこの件を全力で謝ろう)
そう決める凛であった。
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