第25話 俺をゴミでもみるような目で見る先島さん

前回のあらすじっ!

 俺が全て悪いです。火口さんと涼風さんは悪くないです。以上です。(敬礼)




 とりあえず俺は正座をする。俺をゴミでもみるような目で見る先島さんと、それに便乗する涼風さん。


(おい!涼風さんはこっちだろうが!ってものすごく言いたいが、言える空気ではないので黙っておく。この恨みはいずれ何倍にもしてやり返す!)


 注意:エッチなことでやり返すとか考えてはおりません。ご了承ください。


「で、何でこんな状況になってるの?」


「それがわか………………」


「汐留君は黙ってて」


「………………はい」


 なんか最近、有無を言わせぬ圧力をよく感じるんだが!


「それで、何があったの?涼風さん?」


「それがですね、私が春休みの時に汐留くんに悪い男から助けてもらった時の話をしたんですよ。そしたら火口さんがあのような様子に………」


「なるほどね」


 “はぁ”とため息をつく先島さん。


「ゆきっちは少女漫画が大好きで、常日頃から“この漫画のような出会いがしたい!”とか“こんな言葉を言われたい!”とか言ってるからね。その話をする時のゆきっちに似てるから、おそらく涼風さんが話した内容のどこかに、ゆきっちが理想としていた出会いや会話があったんだと思う」


(へぇ、火口さんが…意外だなぁ)


「まぁ、いつもこの手の話をする時の相手役の男の子は………いや、これは今、言う必要ないね」


 と、最後の方は俺を見ながら言う。


(なるほど。さすが秀才の先島さん。涼風さんのちょっとした情報だけでここまで見事に俺たちを納得させるとは……。将来は美少女探偵かな?)


 今でも火口さんは「あの時の汐留さんは名乗るべきでした!」だの「いやいや、名乗らなかったからこそ、再会の時、運命の出会い!ってなるのかな!?」だの一人で言ってる。未だに自分の世界から帰ってこない。


(おい!もうすぐ昼休憩終わるんだけど!?)


「では、どうすれば火口さんがもとに戻るのでしょうか?」


(お!ナイス質問だよ涼風さん!俺もそれが聞きたかった!)


 すると、先島さんは悩んだ後…


「あ!この方法なら自分の世界から戻ってくると思うよ!」


「それはなんでしょうか!?」


(そうそう、問題はそれだよ!)


 俺たちの反応を見るや、先島さんは俺を見て……


「それはね!汐留君にかかってるんだよ!」


「え!俺に!?」


 俺が何かすれば簡単に火口さんは自分の世界から戻ってくるらしい。


「でもね、この方法は汐留君が臆さず演じ切るか!が重要なんだよ!できる?」


(うーん、なんか恥ずかしい演技をしないといけないらしいが……。まぁ、どうせあの芸人の一発芸をしろ!とかだろう)


「それくらいなら俺に任せろ!どんな芸人でも演じきってやるぜ!」


 胸を張って言う。


「お!言うね〜。それなら……………うん!この演技をお願いしよう!」


 そう言って俺を手招きする。


「どうやら、ゆきっちの最近のブームは“顎クイ”らしい」


「ふむふむ………………ありくい?」


「“顎クイ”!!今さっきの“ふむふむ”は一体何だったんだよ!」


「いや、考えたらわかるかな?と思ったけど、分からなかったから聞き間違えたのかと…」


「いや、ゆきっちの最近のブームが“ありくい”ってなに!?そんなブームがある子と友達なんかなりたくないわ!」


 ごもっともである。


(“顎クイ”かぁ。初めて聞くな。そんな芸をする芸人とかいたかな?)


「で、どんなのなんだ?」


「マジかぁ、知らない人がいるとは……」


「伊達に陰キャしてないからな!」


 ドヤ顔で言ってやる。


「いや、ドヤ顔して言う言葉じゃないから」


 おっしゃる通りです。


「とりあえず、目が隠れているとできないから髪どめやヘアゴムでどうにかしないと…」


「やめて!それはしない方がいいよ!」


 と、今まで黙っていた涼風さんが、勢いよく止めに入る。どうやら俺の目つきは火口さんや先島さんに見せるべきではないらしい。……泣きそう。


「え!ど、どうしたの!?涼風さん!?」


「い、いやぁ……………そう!目つき!汐留くんは目つきが悪すぎるから前髪で目を隠してるらしい!そうでしょ!?汐留くん!?」


 頷けよ?みたいな雰囲気を出す涼風さん。俺より必死だな!


「そ、そうなんだよ。妹からも“お兄は目が見える状態で家から出ない方がいいよ?目的地に着くまで邪魔する人がたくさん出てくると思うから”って言われてるくらいなんだよ!多分、俺の目つきの悪さから警察や不良達のお世話になるんだと思う!それくらい目つき悪いんだよ!」


 と、一所懸命に説明する。


すると…


「舞ちゃん必死だなぁ」


 と、涼風さんが呟いているのが聞こえてくる。


(うん、俺もそう思うんだけど、妹からしたら兄が警察のお世話になるのは問題だからな。必死になるのも無理はない)


「何やら必死だけど、そんなこと言ってたら昼休憩終わっちゃうよ!だから、はいコレ!」


 俺の前にヘアゴムを渡してくる先島さん。いや、話聞いてた!?


「あ、あの、先島さん?汐留くんの目つきは………」


「大丈夫だよ!涼風さん!目つきが悪いくらいでウチやゆきっちは汐留君のこと嫌いになったりしないから!」


 ものすごく嬉しい言葉を言われる。


「あ、あぁ〜」


 と、よくわからない言葉を発する涼風さん。まだ、なんとかしようと思っているらしい。


「大丈夫だよ、涼風さん。この二人ならビックリして逃げ出したりとかしないと思うから!」


(ごめんな、舞。外で髪の毛を纏めるなって言われてるけど、この二人なら大丈夫だと思うから)


 そう思いながら先島さんからヘアゴムを受け取る凛であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る