第24話 うるせぇぇぇぇ!どこにそんなテンション上がる要素があるんだよ!

前回のあらすじっ!

 涼風さんは俺じゃないどこかのイケメンに助けられ、それを聞いた火口さんのテンションがとどまる所を知りません。誰か助けてください。以上、現場からの中継でした。




「汐留さん汐留さん!」


 はい、汐留です。


「やっぱり汐留さんは私の時のように困っている子をすぐに助けることのできる行動力がある男の子なのですね!」


 と、キラキラした目で言う火口さん。


(いや、今回も、ものすごく偶然が重なった形だったんだけど!)


「い、いやー、火口さんの時も涼風さんの時もホントに偶然で……」


「でも、私はあの時、汐留くんに助けてもらってよかったと思ってるんだよ?」


「わ、私も、汐留さんに助けてもらって嬉しかった……です」


 と、二人から素直にお礼を言われるので


「お、おう。それなら良かった」


 と、答えることしかできなかった。




 しばらく無言の時間が続いたが、そろそろ興奮が収まったと思うので涼風さんの話の訂正を試みる。


「火口さん、さっき涼風さんが語ったことは8割くらい嘘だからね」


(不良から助けたところと、名乗らず去ったところしか合ってないからな)


「え!あれってそんなに嘘があったんですか!?」


 と、涼風さんに聞くので…


「そんなことないよ!私から見たらこんなお話だったよ!」


「キャーーーーーーー!!」


「うるせぇぇぇぇ!どこにそんなテンション上がる要素があるんだよ!」


 落ち着いたと思ったら一瞬で復活。振り幅が激しいな。


 とりあえず、火口さんをどうやって落ち着かせようか……。さっきから「私もこんなこと言われたい!」だの「私も悪い人に捕まってみようかな」だの言ってる。


(ヤバいな、思考回路がよくわからないことなになってる。これは俺じゃどうしようもないな)


と、思い、涼風さんにお願いをする。


「おい、涼風さんがこの状況を作ったんだから、どうにかしてくれ」


 そう俺が言うと…


「いや、最初は私だけど、再発させたのは汐留くんだから…」


 と、ジト目で言われる。


(うっ!た、確かに俺が再発させてるわ。でも、涼風さんもちょっとは盛ってるって言えよ……。俺と涼風さんの記憶に違いがありすぎだろ)


 俺じゃどうするのが正解かわからないので、とりあえず、全力で涼風さんにお願いする。


「はぁ、わかったよ。私に任せて。何とかしてみるよ」


「すまんな。頼む」


 俺の言葉を聞き、立ち上がって火口さんの前の段差に腰掛ける。そして火口さんの方を向き……


「わかるよ!その気持ち!私も昔は悪い人達から助けられるヒロインになりたい!って思ってたんだ!でね、実際に助けてもらうと……」


「(ゴクリ)」


 と火口さんが唾を飲み込む。


(ん、なぜそこで溜める。しかも何だこの空気。まるで今から重大発表でも行われるかのような……)


「なんと!マンガに出てくるヒロインの気持ちを味わうことができます!」


「キャァァァァァァーーーーーーー!!!!」


 火口さんのテンションがもう一段階引き上げられました。


(こいつ、火に油を注ぎやがったな!)


 そう思い、涼風さんを見る。


「いやー、うん……やっちまった!」


 “テヘッ”と言いながら俺に向かって舌を出す。


「………………………………」


 涼風さんがものすごくかわいい顔をしてる。


(こいつ、かわいい顔したら許してもらえるとか思ってるな……)


「あの〜………ごめんね?」


「………かわいい顔して謝れば全て解決すると思うなよ?」


「…………はい、すみませんでした。どこまで火口さんが興奮するのかなと思い、実験したくなりました。反省してます」


 とりあえず正座させて反省してもらおう。


(くそぅ、涼風さんは使い物にならない!どうやって落ち着いてもらおう。このテンションで教室に返すわけにもいかないし………)


 と、そんなこと考えてると……


「あ、こんなところにいたんだ!…って何この状況」


 と、あれこれ考えてると先島さんが現れた。


 まずい!この状況で他の人に会うのはまずい!先島さんから見れば…


 ①正座している転校生

 ②正座している転校生を見下している  

  陰キャ

 ③バグってるクラスメイト


 っていう訳のわからない状況が完成している。


 と、とりあえず弁明を…


「い、いやぁ、俺も知りたいんだが………」


「ふぅん…………………………で?」


「はい、全て俺が悪いです。申し訳ありませんでした」


 どうやら、先島さんから“汐留君が全て悪いんでしょ?”みたいな目で見られてる。逆らえる勇気がないので、認めてしまった。


(まぁ、1割くらいは俺が悪いとは思ってる。全て俺が悪いことにされるのは癪なんだが……はい、言い訳を許してくれる雰囲気じゃないですね)


 そんなことを考える凛であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る