第3話 はい!尾行してました!
新学期初日の昼休み。
場所は屋上へ続く階段。
そこで俺は、階段に腰掛けて妹の手作り弁当を1人で食べていた。
妹に「毎朝弁当作るの面倒じゃない?作らなくてもいいんだよ?」と言うが「は?なに言ってんの?他の女の子から弁当もらうの?」や「お兄は私のご飯を食べていればいんだからね!」と、いつも言ってくる。
何で怒って言ってくるのかはわからないが、美味しいからありがたく弁当を作ってもらってる。
(それにしてもあの不良に絡まれた女の子と同じクラスになるとは…。まぁ、髪を結んでないから俺とは気づかないと思うが…)
俺が涼風さんのことを考えていると…
「あ、こんなところにいた!」
涼風さんが手を振りながら走ってきた。
「え、涼風…さん?」
「もう…探したんだからね。汐留くん」
(まてまて、何でここに?いや、それより、何で俺なんかに話しかけてきてるの?)
そんなことを思う。
すると…
「ここ座っていいかな?」
「ど、どうぞ?」
「ありがと!」
涼風さんが隣に座る。
(え、何で隣に座ってるの!?てか近い近い!)
肩が触れそうなくらい近くに涼風さんが座る。距離が近いため、涼風さんからいい匂いがして、頭がクラクラしそうになる。
「ごめんね。午前の休み時間は他の人達から話しかけられて、挨拶することができなくて…」
涼風さんが申し訳なさそうに言う。
「全然、気にしなくていいよ」
(なるほど。クラスメイトと親睦を深めるためにここまで挨拶に来たってところか)
そんなことを思っていると…
「ちょっとごめんなさい」
涼風さんが俺の髪の毛を上げて顔を確認する。
「やっぱり…あの時の人だったんだ…」
(や、ヤバい!目つきの悪さが涼風さんにバレてしまう!)
そう思って涼風さんに話しかけようとすると…
「この前は助けてくださり、ありがとうございます」
髪の毛を持ち上げていた手を外して丁寧にお辞儀をされる。
(もしかして、不良に絡まれてた時のことを言っているのか?いやいや、そんな勘違いはするな!今は髪の毛を結んだ格好じゃないから絶対に同一人物とは思わないはず!)
そう考えて…
「お礼をされるようなこと、してないけど…」
「いやいや!春休みの時、裏道で私が不良に絡まれてるところを助けてくれたよね!?」
(え!なんでこの人助けた人と俺が同一人物って思ったんだ!?もしや超能力とか!?)
「あ!なんでわかったかと言うと、汐留くんから助けられた後、こっそり尾行してたんだ!だから、髪を下ろした汐留くんが助けてくれた人ってすぐに分かったよ!」
胸を張りながら言う。
制服の上からでもわかるくらい大きかったものが、胸を張ることで、さらに大きく感じ、目線が下へと移動する。
「ちょ、ちょっと!どこ見てるの!」
俺の目線に気づいた涼風さんが慌てて胸を隠す。
「あ、いや!別に見てたわけじゃないよ?」
なぜか疑問系となる。
すると…
「やっぱり、男の子は大きい方が好きなんだね」
涼風さんが頬を染めながら、上目遣いで聞いてくる。
「ま、まぁ、一概には言えないが、大きい方がいいんじゃないかな?あ、でも!俺はそんなことないぞ!?」
「いや、説得力ないけど…」
「ですよね……」
ジト目で言われた。
(そりゃ、涼風さんの胸を見てしまった俺に説得力なんかないよな…)
俺は納得してしまう。
(と、とりあえず、この話題は終了させないと)
このままこの話題を続けるのはマズイので、俺は慌てて話題を変える。
「そ、そんなことより!確かにあの日、俺は涼風さんを助けた。でも俺にお礼なんか必要ないよ……って!あれから俺を尾行してたの!?」
「はい!尾行してました!」
「その行動力がすごいな!」
(どう言う思考回路で、『尾行しよう!』ってなったんだよ!)
「さすがに家までは尾行してないよ?いや、しようとは思ったんだけど…」
「しようと思ったんだな」
(よかったぁ、家までバレなくて)
「でも、尾行してたくらいで、今の俺が助けたってわからないだろ?だって助けた時と格好が違うから」
「あ、それはね。本屋に着いてすぐ、トイレに入ったのが見えたから、トイレから出てきた時にもう一度声をかけて、今度こそ連絡先を交換しようと思ったんだ。そしたら、全然知らない人が出てきて驚いたよ!」
(そーいえば、別れてから書店に行くまでに、俺を見てヒソヒソと話してた人が多かったから、本屋に入ってすぐに結んだ髪をほどいたんだったな)
「でも、全然知らない人が着てた服が助けてくれた人と同じ服だったから、汐留くんが助けてくれた人なのかは半信半疑だったけど、さっき顔を確認して確信に変わったよ!」
「な、なるほど?」
(それで今の俺と結び付けたのか…なるほど納得)
涼風さんの推理力に感心する。
「あれからお礼を言うために、時間があれば汐留くんを探したんだけど全然見つからなくて…」
「は、春休みはあの日以来、家から出なくて…なんかごめんなさい」
「ふふっ、全然謝ることないよ!」
(確かに、なぜ俺が謝ってるんだろう…ってそうじゃなくて!尾行の件をビシッとダメだよ!めっ!って言わなきゃ)
そう思い、涼風さんと目を合わせるが、すごく可愛い顔で微笑まれた。
(くそぅ、こんな顔されると強く言えないじゃないかぁ)
そう思って言う機会を逃す俺であった。
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