第2話 燃やす時は私に声かけてね
「ねぇねぇ、どこから来たのー?」
「隣の県から引っ越してきました」
「彼氏はいるのー?」
「彼氏はいませんよ」
等々、さっそくクラスメイトたちが涼風さんのもとに集まり、いろんな質問をしている。
涼風理央。桃色の髪をツインテールにしている。そして髪色と同じ、クリっとした大きな桃色の目。
"美人"というより"可愛い"系の美少女。
間違いない、あの子だ。
そう思い、俺は涼風さんと出会った日を思い出す。
月日は遡り春休みのある日…
「あ!今日は『転マジ』の最新刊発売日じゃないか!」
今日発売の『転生したのでマジシャン目指しました』という漫画は人気作品ではないものの、隠れたファンには絶大な人気がある。
「世間的にはあまり人気がなくて在庫が少ないから、はやく買いに行かないと無くなってしまう!」
前回の最新巻は「まぁ、なくならないでしょう」と発売日の夕方に本屋に行くと売り切れており、再入荷を待つ羽目になってしまった。
そのため、なんとしても午前中には本屋に行って買わなければならない。
そう思い、家を出ようとすると…
「あれ?お兄、今から出かけるんだ」
「あぁ、本屋が俺を待ってるからな!」
「……今日は課題をするって言ってたけど、終わるの?」
「………………」
「燃やす時は私に声かけてね」
「課題を燃やしたりせんわ!」
そんなことを言って、家を出る。
急ぐため、裏道を駆使して本屋に向かっている途中…
「やめてください!」
前方から大きな声が聞こえた。
見てみると一人の女の子が不良のような男5人に囲まれていた。
「ねぇ、お嬢ちゃん。お金が欲しいんだよね。俺たちと一日遊んでくれたら5万やるよ」
「嫌です!放してください!」
何やら強引に連れていかれそうな雰囲気がした。
「はぁ」
俺はため息をつく。
(気づいたからには無視するわけにもいかないよなぁ)
そう思い、俺は持っていたヘアゴムで眼がよく見えるように髪の毛を纏める。
そして…
「ねぇ、その女の子嫌がってるけど」
俺は男5人に声をかける。
俺が声をかけると、泣きそうな顔をしていた女の子が驚いた表情をした。
そして俺は…
(あれ?この子どこかで出会ったことがある?)
そんなことを思う。
俺が必死に思い出していると…
「お前には関係ねぇだろうが!」
近くにあったゴミ箱を蹴散らす不良。
「いや、見るからに嫌がってるじゃないですか?」
すぐそばの女の子は顔を赤くしながら頷いてる。
「はぁ、少しは痛い目を見ないと気がすまねぇみたいだな!」
そう言いながら不良の一人が殴りかかってくる。
俺はそれを躱してカウンターの一撃をいれる。
「グハッ」
俺の攻撃がクリンヒットした男は動かなくなる。
「これで正当防衛になるよな?」
俺が睨みながら言うと、目つきの悪さもあって残りの男4人が少し怯むが…
「お、おい!なにしてくれてんだよ!」
「やりやがったな、お前!」
復活した男4人が一斉に殴りかかってくる。
(遅いな。父さんのパンチの方がはやくて怖い)
そう思いつつ、一人一人の攻撃を躱し、カウンターを決めれる時はカウンターで仕留める。
そして、数分後には5人の不良は地面に倒れていた。
(思った以上に時間がかかってしまったな)
そう思いつつ、俺は優しい笑みを浮かべながら女の子に声をかける。
「もう大丈夫だよ」
「は、はい!あの、あ、ありがとうございます!」
女の子は頭を下げる。
「あ、あの何かお礼をしたいのですが…」
「いやいいよ、そんなことしなくても」
(実際、これくらい大したことないし)
俺はやんわりと断るが…
「い、いえ!そういうわけにはいきません!」
なかなか引いてくれない。
(はやく本屋行かなければ、無くなってしまうのに!)
そんなことを考えながら女の子の話を聞く。
「あの…どうでしょうか?」
「あー、そんなことを気にしなくてもいいから」
「そんなわけにもいかないです!」
今度は強い口調で言われる。
(うっ、これは何か妥協案を…)
「そ、それなら!今度また出会ったときにでもいいから、ご飯を奢ってくれればいいよ!」
「な、なら連絡先を…」
「じゃ、じゃあ、また会ったときに!もうこんなところを一人で通るなよ!君はすごく可愛いから今回みたいな不良にまた出会うことになるからね!」
そう言ってから俺は書店に向けて走り出した。
「かっ、かわいい…」
その後、その場には顔を耳まで真っ赤にした女の子が残された。
(それにしてもさっきの子どこかで見たことあるような気がするんだよなぁ)
本を買った帰り道。
俺は本屋に行く途中で偶然出会った女の子のことを考えていた。
(うーん…ものすごい美少女だったから、もし出会ってたら絶対覚えてるはずなんだけど…)
俺が必死になって思い出していると…
(あ!思い出した!小学校の頃に出会った女の子に似てるなぁって思ったんだよ!)
俺は思い出すことができ、スッキリする。
(まぁ、5年も前だから、その本人と今日出会った女の子が同一人物ってことはないだろう)
そんなことを思いながら、目的の漫画を手にした俺は家へと歩いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます