第8話 捻れた世界と

俺は光龍が好きだった。

だった、ってのは簡単に言えばまあ.....今は好きではない.....という意味に捉えられるかもしれないがそうでも無い。


何と言ったら良いのだろう。

光龍と俺は釣り合わないと思ったから、だ。

交流はミステリアスすぎるのだ。


だから釣り合わないと言えるかもしれない。

だけど.....俺は多分今でも光龍は好きなんだと思う。

そう思える気がする。

何故なら.....光龍を見る度に少しだけドキッとするから、だ。


「.....」


「.....」


その筈なのだが。

放課後、俺は大谷さんに呼ばれて空き教室にやって来た時。

何故かドアに鍵を掛けられた。

俺は!?と思いながら大谷さんを見る。


「.....ゴメンね。.....もうこれしか手段がないから」


「これしか手段が無いとは!?」


何が起こっている!?

俺は真っ赤になりながら大谷さんを見る。

すると大谷さんは一歩一歩を踏み出してきた。

それから俺をジッと見てくる。


「.....な、何でしょう?」


「お姉ちゃんと何かあるの?.....その。仲が良さげだから.....」


「.....あ、ああ。その事か。.....えっとな.....俺と光龍はその。.....告白しあった仲なんだ」


「.....そうなの?」


悲しげな顔をする大谷さん。

俺はその姿を見ながら首を傾げる。

何故こんな悲しげな顔をするのだろうか、と。


だがそんな事を考えている暇は無さそうだ。

目の前に大谷さんが顔を紅潮させて立っているし.....その。

何よりも顔が近すぎる。


「.....その。何も言えないけど.....もうお姉ちゃんとは関わらないでほしいかも.....って思って」


「.....え?どうして.....」


「.....お姉ちゃんは.....その。あんまり性格が良くない。.....だから何だって話だけど.....君が心配」


「.....ああ。心配してくれているのか」


「そ、そう」


言いながら大谷さんは俺の頬に触れてくる。

な、何でしょう?、と思いながら大谷さんを見る。

すると大谷さんは笑みを浮かべてから。


そのまま手を離した。

やっぱり恥ずかしいな。こういうの、と言いながら。

そしてドアの鍵を外した。


「.....ゴメンね。誰にも聞かれたくなかったから」


「.....そ、そうなんだね」


「.....でもその.....うん。誰にも聞かれたくなかったのは本当だから」


「.....わ、分かった」


そして駆け出して行く大谷さん。

ずるずると俺はそのまま棚を背にして崩れ落ちた。

その場に、だ。


ゴメン何か期待したかもしれない。

マジに何をしてくるか分からなかった。

ビビってしまう。


「.....心臓が.....」


心臓がマジにドクンドクンと波打っている。

俺は何をされるかと思ってしまい.....危なかった。

何か.....その。

キスでもされるのかと思った。

だけどそうでは無かったので安心したが.....。


〜〜〜〜〜


光龍お姉ちゃんに負けたくない。

その為に私は一歩踏み込んだが.....それが仇になってしまった。

私は.....真っ赤になり過ぎて話にならなかったのだ。

つまり.....本当にヤバかった色々と。


「.....ばかばか私!自分で自分を追い込んでどうするの!」


私はそんな事を言いながら教室に駆け込んでから。

そのまま鞄を持ってから移動しようとした。

帰ろうとしたのだが.....目の前に.....その問題が。

お姉ちゃんが立っていた。

私を見ながら、待っていたよ、と言ってくる。


「.....何。お姉ちゃん」


「.....その。昔の事は今は置いておいて。.....戻って来ない?うちに」


「馬鹿なの?そんなの出来る訳ないじゃん。あんだけの事をしておいて?」


「.....親も心配しているしね。.....戻って来た方が.....」


だが私はその言葉に無視して帰る事にした。

そしてそのまま去ろうとした時。

このままでも良いけど生活費。

お金が無いんじゃないの?、と脅しをかけてきた。

私はジト目で背後を見る。


「.....それが?」


「.....元也にそんな恥ずかしい姿を晒すの?」


「.....中島くんは関係無いよね?何で出すの?」


「.....私の元也だしね」


貴方の元也?

馬鹿な事を言う。

私は私なりに上手くやるつもりだ。

だから後悔はしてないつもりだ。

思いながら私はお姉ちゃんを睨む。


「そんな脅しは通用しない。.....私はコツコツとやっているから」


「.....」


お姉ちゃんは心配げな顔をしながらも、分かった。今は何も言わない、と寄り掛かっていた柱から離れてそのまま去って行った。

何なのだろうかあの人は。


思いながら私はそのまま帰宅した。

不愉快すぎる。

そう考えながら、だ。

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逃げた飼い犬を探していたのだが見つからないのでその飼い犬の名前を「〇〇大好きだ!」と叫んだら名前の読み方が同じ美少女に聞かれていた件 アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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