第4話 過去と今の差

大谷さんはガチのガチで夕飯を作ってくれた。

それから美味しそうな冬瓜の煮物、焼き魚、卵焼き、ご飯、煮物を見ながら俺は目を丸くする。

あれだけの少ない食材にも関わらずよく作ったな、と思いながら。

すると大谷さんは、あの、と聞いてきた。

俺は?を浮かべながら食事の準備を終えた大谷さんを見る。


「その。明日のお昼ご飯も.....作って良い?」


「.....え?.....い、いや良いよ!そんな迷惑な.....」


「.....だめ?」


「.....そんな顔されると.....」


上目遣いで子犬の様に見てくる。

俺はその姿に赤くなってしまった。

そしてそっぽを見る。

この子かわいい.....、と思いながら。

それから俺は、わ、分かった、と返事をする。


「.....じゃあ.....作ってくるね」


「何でそこまでしてくれるんだ?」


「.....えっと。.....内緒」


「.....内緒!?」


俺は目をパチクリしながら大谷さんを見る。

すると玄関が開いた。

それから燈が入って来てから驚愕する。

すげぇ!、と言いながら。

これ全部大谷さんが作ったの!?、と言いながら。


「全部な。冷食1個も無し」


「.....へぇ.....お兄。大谷さんと結婚した方が良いんじゃないの?」


「お前は!!!!?そんな事できるか!」


大谷さんが何故かガッカリした感じを見せる。

それから難しい顔をする。

何故そんな顔をする。

思いながら居ると大谷さんは、あ。時間だ、と言ってから。

そのまま玄関に向かう。


「大谷さん。今日は有難うな」


「.....べ、別に構わないよ。.....そもそも.....中島くんの為なら.....」


「え?声が小さい.....」


「き、聞こえなくて良いの!」


それからむすっとした感じでそのまま去って行く。

じゃあね!、と言いながら、だ。

俺は目をパチクリしつつ、お、おう、と返事をしてから見送った。

そしてそのまま玄関のドアが閉まる。


「.....な、何だったんだ?」


「お兄。逃したね」


「.....え?」


何かが全く分からない。

だが.....その。

これで良かったんだよな?

思いながら俺は見送った後に大谷さんの姿を見る様に玄関を見た。


〜〜〜〜〜


「バカァ!!!!!私!!!!!」


そんな言葉を発しながら。

私は夕暮れの空を駆けてから帰る。

何でいつもこんな感じなのかな。

私っていう人間が、だ。

中島くんが好きなのに.....好きなのに!!!!!


「ツンデレの様な.....あんな.....ダメだよね」


そんな事を呟きながらマンションに一直線で帰ってから。

そのままベッドに沈む。

ヤバい.....馬鹿だ。

こんなの中島くんに嫌われちゃう。

思いながら私は涙を浮かべる。


「.....分かってる。このままじゃダメだって」


私は思いながら涙を拭う。

今日は中島くんのアドレスも聞いた。

だからもう大丈夫。


何かあったら聞けば良いのだ。

思いながら私は画面を見て微笑んだ。

えへへ、と言いながら、だ。


「.....やっぱり良いなぁ。恋って」


私は.....昔、恋愛した事がある。

だけどその恋愛は最低最悪のものだった。

だからこうして.....恋をするのは恐れているのだが.....。

でもその中でも中島くんは良い人だ。

私の.....恋する相手として.....良い感じの男の子。


全てを受け止めてくれる。

優しい。

だから好きになった。

私は告白が違うものだって思っているけど。

でも.....もうここ迄好きになったら引き返せない。


「.....中島くんに振り向いてもらうのが私だよね。頑張ろう」


思いながら私は弁当箱を見る。

しかし弁当箱は小さい。

女子用だ。


ならば今からでも仕込んで買いに行かなければ。

彼に満足に食べてもらいたい。

おかずも全部、だ。

こんな小さいのは論外だ。


「.....待っててね。中島くん。私.....勘違いでも.....恋をしたんだから」


そんな事を呟きながら。

私は玄関ドアから財布を持ってそのまま駆け出す。

鼻歌を交えながら、だ。

こんなに楽しいのは何時ぶりだろう。

昔の.....母親と別れてから、だろうけど。


「.....」


思い出すだけでも虫唾が走る。

あれはもう人間とは認識出来ない。

そして私の母親は死んだ。


そう認識している。

私は思いながらそのまま弁当箱を買いに向かう。

近所の商店街に。


「お!?雪音ちゃん!何だか上機嫌じゃないのぉ!」


八百屋さんの田中さんだ。

60歳ぐらいのオッチャンさんである。

私は笑顔で、そう見えます?、と聞いてみる。

すると田中さんは、見える見える!さては彼氏でも出来たか!?、と言ってくる田中さん。

真っ赤になった。

するとバシッと田中さんの頭が飛んだ。


「やめなよアンタ!何やってんだい!60年も生きてきて恥ずかしくないのかい!」


「いや母ちゃん.....だって.....嬉しそうだしさ!」


田中瞳さん。

何というか田中さんの奥さんだ。

ふくよかな感じの姿をしてニコニコしている。

でもそれが本当ならお祝いだねぇ、とメロンとかのフルーツを持った。

そして、これおまけね!、とビニールに突っ込んでいった.....え!?


「雪音ちゃんにお祝い!」


「待った待った!母ちゃん!それだけじゃ足りないよ!」


「ぇえ!?皆さん!彼氏出来てないです!好きな人です!」


へえぇ!彼氏出来たのかい!

何というか更に誤解されてしまった。

それから私はあわあわしながら。

商店街の人達からかなりいっぱいのおまけを貰った。

オマケじゃなくてただの分け合いの様な気がするけど.....。


でも知っている。

これは皆さんが私の事を知っていての行動だという事を。

だから涙が止まらなかった。

泣いてしまう。

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