第19話 仕事をする私

次の日勇樹が外に行きたいと言うので

意を決して二人だけで外に出る。


「絶対にこのカードキーなる物を

 持って出る事」と強く言われていた。


綺麗に整備された公園がある。

街路樹もあり私は

サンテミリオン公園を思い出す。


とても遠い記憶のように感じる。

ほんの少し前の出来事なのに。


そういえばここに転移して初めて見た

2本の大きい樹木。あれはギンコだ。


ギンコとボルドーの木はよく似ている。

パッと見はわからないが

葉を付け実がなる事で違いが判る。


サンテミリオン様はボルドーの木を

植えていた。

「もしかしたらギンコが

 混ざっているかもよ?」と

笑いながら。


まぁ、ないだろうな。と私は笑う。

そう思いながら歩いていると

友恵さんがやってきた。

「おはようございます」と。


今日は少しお仕事っぽい事を

するらしく、私と勇樹は

車に乗る。


一時すると兵士たちの

駐屯地の様な所へ着く。


車を降り、建物に入ると

すれ違う人たちが頭に手をやり

挨拶をする。

敬礼と言うモノらしい。


ちょっとした小部屋に入ると

私に紙のカードを渡した。


「これ、貴方の名刺」と。

使い捨ての身分証明らしい。


陸上自衛隊 国分寺駐屯地

特別情報課 神原 希望


「まぁ軍隊の様な所ね」と。


軍隊か。やはり争う事からは

逃げられないのか、と思っていると。


「軍隊じゃねえよ。自衛隊だ」と

一人の男が言った。

ここ60年間戦争はないとも。


私の前に杖が3つ並べられている。

どのようにして手に入れたのか。


あぁそうか異世界からの人が

持っていたものかもしれないと。


聞いたら違った。作ったらしい。

剣や槍などは簡単に作れるが

杖はどうにも作れないらしい。


こちらに転移した異世界人は

ほぼ近接戦闘を得意とする者で

魔法を得意とする者は

2~3人しかいないらしい。


また、どのようにして魔法を

操っているのかさえ分からず

何故杖を持って攻撃するのかも

理解していないそうだ。


なので私が来たことで、私が

魔導士という事で研究が進むと

すごく喜んでいるらしい。


研究に力を貸してほしいと頼まれた。


私はこの世界の知識を教えてもらった。

ならば私も知っている事は教えるべきだ。


ただし私はある事を言った。

「争う事に使わない事」と。


すると男が言う。

「争いが起きないように私達が居る」

「専守防衛だ」


相手から攻撃を受けた時のみ

に防衛を行う。


「この国はそれを是としている。

 安心しろ、こちらからは絶対に

 攻撃しない。侵略もしない」

とも続けた。


その男の強い信念とも思える言葉と

その目を私は信じた。


私は3つの杖の中から一つを選ぶ。

選んだ理由は単純にいい杖だからだ。

懐が広いのだ。直感でわかった。


「何故それを?」と友恵さん。


懐が広いと直感ですが。

懐とは魔力を処理をする能力。


私は何から作られているのか聞いた。

「イチョウの幹よ」と友恵さん。


3本とも色々な伝承を基に

「それっぽい形」で作ったらしい。


イチョウと言う木の説明を聞いて私は驚く。

それはギンコの木だった。


でもこれは魔力を感じない。

しかし懐は感じる。


私はやってみたいことがあると言う。

「魔法を使う」と。


男と友恵さんは目を輝かせながら

「きたこれ」と言いながら

いそいそとどこかへ連絡し

私達をとある建物に案内した。


勇樹には見せたくないという

私のいう事を聞いてくれ

託児所なる子供を預かる所へ

連れて行った。


「思いっきり撃っていいわよ」

と鼻息荒い友恵さん。


何故か見学者がたくさんいる。


私は思う。もう使いたくないと言いながら

魔法を使う。私は私に薄情だ。


でもこれで勇樹と生活できるなら。

と自分自身に納得させる。


私は説明する。

魔法には初級、中級、上級、極級があり

その名の通り威力が違う。


また人によって使える階級が異なり

威力も差が出るる。と。

属性もあり、

それに対して相性があると。


とりあえずやってみると言い

私は杖を構える。


「あ」と私は言い友恵さんに言う。


この杖には魔力ありません。なので

単純に私の魔力のみで使うので

威力は相当落ちると。


どれくらい落ちるかわからないので

取りあえず初級を撃ってみます。と。


私は構える。

魔方陣を描くが少し展開が遅い。

私は詠唱をする。


ロックダーツ


岩の塊が現れ放たれる。

その岩は目標の的に当たると

ソレに食い込んで、一時して

ポトリと落ちる。


沈黙の後に歓声が上がった。

「すげえな、射撃の様だ。」と。


速度は十分だったが威力がかなり

弱い。と私は友恵さんに言う。


それよりも魔法を放てたことに

私は驚きを禁じ得なかった。

私は出来ないと思っていたからだ。


この世界には魔力がある。


それが確実となった。

因みにどれくらい威力が

落ちているか聞いてきたので


5分の1程度です。

それくらい落ちます。


沈黙が流れる。

次に中級を放つといい

私はやはり土系の中級魔法を放つ。


やはりこれも相当に威力が低い。


見ている者全員が驚いている。

私は威力が大したことが無いからと

思っていたが違った。


すげえな、的が粉々だ。

あれカーボンだぞ?

とヒソヒソと声が聞こえた。

「あの、私実は上級魔法が苦手で」

と言うと


全員が何か残念そうな、でも

十分だよそれで、と言う様な

雰囲気が出た。が、私は続ける。


「でも極級は全ての属性が撃てるので

 一つ二つ撃ってみます。」と。

全員が驚き私を見る。


威力が低くなっているので

問題ないかと思います、

とも付け加えた。


私は魔方陣を描く。・・・遅い。


フレームス・エト・フーダ!


炎と雷光が合わさりながら的に向かう。

的を飲み込み、閃光は

後ろの壁まで届きそして壁を

突き抜ける。


辺りが静けさに包まれる。

しかし「しょ、消火器!早く!」


消化が終わる。

「まさにレールガンだな。」と

方々で話が聞こえる。


















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