ミネルヴァの章 最終話 歩き出す私

燃えたらいけないので今度は

ランス・デ・ローチを唱える。

やはり魔方陣の展開が遅い。


放たれた魔法は穴の開いた所の

横に当たると壁自体が

崩れた。


「い、今のも5分の1?」と

友恵さん。

それくらいですね、と私。


「対戦車砲じゃねえか」と

謎ワードが飛び交った。


「それよりもです。この世界には

 魔力があるのに何故皆さんは

 使えないのでしょうか」と

私は素朴な疑問を投げた。


「そういった事も研究しているのよ」

と冷や汗をかきながら言う友恵さん。


場所を基の部屋に変え話をする。


とりあえず世間体を気にして

週に5日のここへの出勤。

暇なときは研究を手伝いう。


依頼があったらそれを行う。


通勤にはやはり世間体を気にして

自転車で行う。

自転車とはこちらの乗り物らしい。

後で練習をするとも言った。


勇樹は託児所よりも幼稚園がいいと。

友達もできるし、それが普通の

生活だからと言われる。


そうして生活の流れを教えられる。

私は一つの不安要素を友恵さんに話す。


精神退行。病気の事を。

それについても説明する。


友恵さんはあまり驚かずに聞いていた。

「ここには病院もあるので一度受診して

 頑張って直しましょう」と笑う。


どうやらそう言った症状、似た症状は

この世界にもあるらしい。


そう言うとじゃあ練習しましょう、と

言い私を外に連れ出す。

目の前にある乗り物。自転車。


悪戦苦闘する事約4時間。

ついに私はこの自転車を乗りこなす

事が出来るようになった。


勇樹にも準備するが勇樹は幼稚園に

行くのは迎えのバスなる乗り物が

くるらしい。


ほぼ全ての事が終わると既に

外は暗い。


私達はホテルに帰り、お風呂に入り

食事を頼む。


そして私はパソコンを開き

情報を吸収する。

この世界の事を調べる。



そうして次の朝。

友恵さんが迎えに来て

やはり宿屋の様な所へ

私達を連れてくる。


「ここがあなた達が住む

 アパートよ。」と友恵さん。


ホテルを小さくした様な

宿屋の様な建物。

この辺りでは一番良いモノらしい。


中に入ると見たこともないような器具。

一つ一つ説明をする友恵さん。


わからなかったらパソコンで調べます。

と覚えることが多すぎてそう答えた。


そしてこの辺りにあるよく使いそうな

お店の地図。


「この赤い二重丸の所、弁当屋とは?」

と私は聞く。友恵さんは言う。


「料理が上手くできない時は

 使うといいわ。まぁ持ち帰り

 専門の食事屋さんね」と。


「私なんて、ほぼ毎日使ってるわ。」

と笑う。


あぁ、そうか。表には出さないけど

私の病気や、そういった事を

心配してくれてるんだ。


なんていい人なんだろう。

それが仕事としても、暖かく感じる。


あと何かあったらこれを使って?と

小さな器具を渡す。

「スマホよ」と。


使い方を聞くがよくわからないので

基本的なことだけを教えてもらった。


他にも、冷蔵庫、洗濯機。テレビ。

お風呂。もうちんぷんかんぷんだ。


取りあえず説明書で勉強すると言う。

何かあったらスマホで連絡すると。


そうして友恵さんは手を振りながら

出て行った。



こうして私と勇樹の異世界での

二人の生活は始まった。


最初はもう日記をつけないと思ったが

いつもやっている事なので

続けて書いて行こうと決めた。


私が母親として。

勇樹にありがとうと言って貰うために

頑張って母親になろう。


私は母親として歩いて行く。

勇樹と二人で歩いて行く。

これからずっと。

この命が続く限り。




時は現在 ジェニの部屋。


ジェニエーベルは日記を閉じる。

何度でも言うよ、母さん。

ありがとう、本当にありがとう。


そしてジェニエーベルは席を立つ。

全てを思い出した。と言いながら。


暗い部屋の中、

ランプの光に照らされる

勇樹の目は、

・・・泣いたからだろうか。


少し赤く光っていた。



ミネルヴァの章 ~完~


そして話は混乱の第4章へ続く。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る