第14話 人間を殺す私

もし私が勝ったらなんでもいう事を

聞いてくれますか?と私は言う。


聞いてほしい事なんてなかったが

とりあえずそう言った。


「じゃあ私が勝ったら」と

ウォッカさんは言うと


森に被害が出る前に全員殺す。

お前もそれを手伝う。

何人いようが全員だ。


勘違いするな。私達は妖精に

依頼を受けている。

鬼人族の里を救えと。


私は額に冷たい汗を感じた。


ユウキを見ると、なんと

弓を構えて放つ真似をしている。


「悪い奴はやっつけてやる」と

言いながら・・・。


だめだ、ダメだユウキ。

やってはいけない・・・。

戦ってはいけない。


私はユウキに近づく。

そして何かを言おうとするが

何と言えばいいのか、

こういう時に何と言えばいいのか

言葉が見つからなかった。


ウォッカさんがユウキに近づく。

そして言った。


お腹がすいていないか?

お菓子がある。これでも食べて

おきなさい。


とお菓子を渡す。

ユウキはそのお菓子を食べると

一時して眠る様に倒れようとする。

ウォッカさんが支え、持ち上げ

近くの木の所に寝かした。


「来ないんだろ?人間は。なら

 寝ててもいいだろう。この薬を

 使わないと起きない。」と言う。


多分、来た場合は殺戮が始まる。

それを見せないように寝かせたのだ。

子供に見せない為に。


「見せるべきかもな、本当は。

 人間の愚かな、意味のない、只の

 殺し合いを、バカげた戦いを」

ともつぶやいた。


そして私とウォッカさんも携帯食を

食べる。食べながらウォッカさんは


「これはお前が作ったのか?旨いな。

 私も料理は好きだ。今度作り方を

 教えてくれ」と言う。


「わかりました。ここで1日過ごして

 誰も来なかったら里に帰って

 一緒に作りましょう」と私は言った。


「そうだ、ウォッカさんがみんなの

 料理を1週間作るって言うのが

 私の賭けのご褒美かな」と続けた。


「そんなものでいいのか?お安い御用だ」

と笑いながら言うウォッカさん。


「娘さん、見つかるといいですね」と

私は続けて言う。

「あぁ、そうだな。」とウォッカさん。


何の変哲もない話を続けながら、

笑いながら、時間は過ぎる。


そして突然ウォッカさんは真顔になり

「残念だな、私の勝ちだ」と言った。


私は杖を持つ。

「殺さなければどうなりますか?」と

聞きながら。そして

ウォッカさんは言った。


生き残った者達は街に帰り言うだろう。

あの森には化け物が居たと。

そして討伐隊が組まれる。


そして今度はもっとたくさんの人数の

部隊が来る。もしかしたら領主が動くかもな。

やったのは人間だったと聞くだろう。


何処かの領地の間者だったかもしれないと。

そして他の領主を疑い質問状を送る。


送られた方は意味が解らず激怒して

小競り合いに発展するかもしれない。


そして領主同士、領地同士の

殺し合いの出来上がりだ。

まぁ、極論だがな。


ここは多分、黄の国だ。十分あり得る。


さっきの人数なら言い訳は立った。

行方不明になった、とか。

魔獣に食われたとか。一時はだが

開墾は止まっただろうな。


と言うと2本の剣を手にする。

何色とも言えないオーラを発する。

そして言う。

「殺戮の始まりだ」と。


約30人ほどの人間達。


「この人数程度ならまだい訳は立つ。」

と言うと


先ほどの者達も全員いる。

まぁどういって集めたかはわからい。

それが身内だけの話で他には

話していない事を祈るよ。


逆に他の領主に雇われたと言っても

いいかもな。それの方が

森に被害は出ない。


内乱になっちゃうじゃないですか!

と私は言った。すると、


何度も言う、私達の雇い主は

エルピスだ。間違えるな。

とウォッカさんは言った。


先にお前がやれるだけやれ。

掛けは私の勝ちなんだ。


「わかりました」私はそう言うと


極級魔方陣を描く。

そして唱える。


ボンバデメント・デ・エア


高密度に圧縮された透明の

砲弾が無数に人間達に当たる。


ある者は腹を貫通する。

ある者は足に当たり千切れる。

ある者は頭に当たり頭が吹っ飛ぶ。


ほぼ全員に当たる。

気が付くとウォッカさんが

その中で剣を振っている。


私は次の魔法を放とうとしたが

止めた。


私が魔法を放って、ものの10秒。


ウォッカさんの周りに死体が転がり

立っている人間はいなかった。


「19だ。私が殺したのは。そして

 お前は11だ」とウォッカさんは

返り血で血まみれになった顔で

私を見ながら言った。


返り血なのか、それが目に入ったのか

ウォッカさんの目も赤くなっていた。


私は何をしにここに来たのだろう。

話せばわかるとも思っていた。


ユウキの放った矢が引き金となった。

ユウキは悪くない。私を子供心に

助けようとしただけだ。


人はこうも簡単に殺し合う。

同族同士で。私すらも。


ユウキも人を殺した。

意味が解らずとも。


こんな世界は嫌だな。

いや、人間なんて嫌だなと私は思った。


ウォッカさんは死体を消すために

私に炎の魔法を使ってくれと言った。


私は言われたままに死体を焼く。

ほぼ焼け切った所で土魔法を使い

地中に埋める。


そう、私は黙々と、「作業」のように。


私はユウキを背中に負ぶう。

そしてウォッカさんについて行き

大きな木にぶつかる様に中に入る。


出た所は最初に岩戸を通て来た

暗闇。一時して鬼人族の里に戻る。


鬼人は笑顔で言った。

「ありがとう」と。


火の手が上がるのも止まったと。

これで少しは安心して暮らせると。


私の手を握り。


今日は飲んで行けと言う。

ウォッカさんは頷き、ご馳走も

期待するぞと笑いながら言う。


先ほどの苛烈な戦いをした人が

全く別人のように可愛く笑う。



私はただ、ユウキを負ぶい

その光景を見ているだけだった。






















 

 

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