第13話 お願いをする私
私はあたりを見回す。敵の存在は
確認されない。
「どこから攻撃しいるんですか?」と
私が聞くとその鬼人族は言う。
そりゃぁ、むこうだ。と。
私よりも体二回りは大きい鬼人族。
全体的な能力はボルドーのような
吸血族の方が高いが、力に任せた
近接戦闘では鬼人族に軍配が上がる。
その鬼人族が人間に襲われている?
私達は歩き出す鬼人族について行く。
ちょっとした洞穴に岩戸がある。
鬼人族は
ウォッカさんと何か話している。
ユウキは弓を構え矢を撃つ真似をしている。
話が終わるとウォッカさんは
私の所へ来て言う。
「ちょいとお出かけだ。
最悪戦いになる。というよりも
戦になる。人間とやり合う」と。
3人で岩度に入る。
とても暗かったが歩くと少しずつ
明るくなり森の中になった。
後ろを振り返ると風洞は無い。
後ろも森だ。
少し歩くと木を切り倒す音が聞こえる。
大勢の人間が開墾をしているのだろう。
そして3人はその方へさらに歩く。
その人間達は私達に気づくと
「なんだ?お前ら。邪魔だどけ」と
手を身振りをして私達に言う。
「誰に断ってこんなことをしている?」と
ウォッカさんは言う。
言われた男たちはキョトンとして
一時して全員が笑う。
「許可なんているかよ。なんでいるんだよ。
ここは未開だ。ここを開墾して
工場を作るんだよ」
「さてはお前たちもここを狙っていたのか?
残念だな。俺達が先だ。」
「力ずくならそれでもいいぞ?
俺たちは慣れているからな」と
其々が言い、嫌らしい笑いをしている。
私は思っている事を言う。
多分、合っていると思う。
「ここは、精霊とかの里と繋がっているの。
ここが壊されれば向こうも壊される。
ここが焼かれれば向こうも焼かれる。」
「だからお願い。やめてほしい」と。
ウォッカさんはそれを聞くと
「あってると言えば、あってるな。
違うと言えば違うけど」と言った。
私の話を聞いた男たちは私を少し
憐れんだような目で見て言う。
「お姉さん、頭おかしいんじゃないか?
まぁ、繋がってるとしても
それが何の関係があるんだ?」
「よく見ると綺麗な二人だな。
そろそろ休憩時間だ。一緒に
イチャイチャするか」とイヤラシイ
動きをしてウォッカさんに近づいた。
「そんなたいそうなモノなのか?
お前のここは」と言うと
ウォッカさんは剣の鞘の先で
思いっきり男の股間を突いた。
男は悶絶して倒れ転がる。
「てめえ!いい加減しろよ!なんの
権利があって邪魔をするんだ!」と
男たちは言う。
ウォッカさんは私を見る。
何かを促すように。
私にどうにかしろと言ってるような目で。
「権利なんてありません。私はただ
やめてほしいと。でないとあちらの
里が・・・」と言ってる時に
「だから!それはさっき聞いた!
俺たちは生活が懸かってるんだよ!」
「確かに精霊とかいるが、だからそれが
どうした!他に移って住めば
いいじゃないか!」
そう言うと私に近づき腕を握る。
「母さんをはなせ!」とユウキが言う。
弓を構えて。
「なんだ!小僧!打ってみろよ!
そんな小さな矢でどうするんだよ!」
「ほら!お前の母ちゃんを助けてみろよ!」
と私に抱き着きながら笑いながら言う。
一閃の矢が放たれる。
その矢は男の眉間に当たり
後頭部から矢じりが見える。
全員が沈黙する。
なんなんだ、この矢は。
こんな小さいのに恐ろしいほどの
貫通力。子供の力なのに。
と、私はユウキを見て驚く。
「このクソガキがっ!」と男が
斧を持ちユウキに襲い掛かる。
私はハッとして魔方陣を展開して
魔法を放つ。・・・放ってしまった。
突然の事だったので、
ユウキが死ぬと思って、
助けないといけないと思って、
ランス・デ・ローチを。
戦士でも何でもない、冒険者でも
何でもない、只の一般の男に。
男の頭が吹っ飛び体だけになり
血を大量に吹き出しながら倒れた。
血がユウキにかかる。
私はユウキを抱きしめ血が
かからないようにする。
「こいつらやべえ!に、逃げろ!」
と誰かが言うと全員がどこかへ
逃げる様に走っていった。
「僕、母さんを助けたよ」と
ユウキが言う。
「そうだね、ありがとう。
ありがとう、ユウキ」と
もっと強く抱きしめた。
そうだ、ユキはただ私を助けるために
それだけの為に矢を放った。
私はユウキを助けるために
魔法を放った。
その結果、男は死んだ。
仕方ないじゃないか。だって
だって・・・。
人間はこんなにも簡単に争う。
私もそうしてしまった。
子供がやった事だからでは
済まされない。
攻撃してきたから私も攻撃した、
と言ってもそれは言い訳だ。
死んだ男も家庭があるだろう。
子供もいたかもしれない。
奥さんと幸せな生活をしていた
かもしれない。
奥さんは今日の食事の準備を、
全員で楽しく食べるための
食事を今、作ってるかもしれない。
私は殺してしまった。
人間は本当に愚かだ。
私も愚かだ。
ウォッカさんは言う。
「行くぞ。」と。
私は里に帰るのだろうと思って
どうやって里に帰るんですか?
と聞くと、衝撃的な言葉を発する。
「帰るんじゃねえ、追う。そして
殺す。」と。
今ならあれくらいで済む。とも言った。
「なぜですか!
もう終わったじゃないですか!」と
私はウォッカさんに言った。
仲間を連れて戻ってくる。大勢の。
その中には冒険者とかもいるだろう。
私達が居ないとわかっても、
探すために森を焼く。
火であぶりだそうとする。
私達を捕らえ、男の仇を取ろうと。
そしてまた、里に被害が出る。
私はそんなことはないと言う。
絶対にないと。
「じゃあ、賭けをしよう。」
とウォッカさんは言った。
1日ここで待つ。3人で。
もしも誰も来なかったらお前の勝ちだ。
しかし大勢の人間がやってきて
森を破壊しようとするならば私の勝ちだ。
私はその賭けを受けた。
人間を信じて。
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