第12話 ユウキを見て驚く私
まぁ座りましょう。と言われ
いつの間にか、そこにある机を
囲みいすに座る。
ユウキは出された桃色の飲み物を
手に取り一気に飲む。
「お、飲みっぷりいいな」と
笑いながらウォッカさんは言うと
頭を撫でている。
「すごくおいしかった!」と言うと
ウォッカさんをじっと見る。
・・・じっと見る。
ウォッカさんはその少女を
じっと見る。・・・じっと見る。
そして言う。
「エルピス。おかわりだ」と。
私はいきなり私達に関係のないことを
聞いた。「魔王エンドとは」と。
エルピスは飲み物をユウキに出しながら
言った。
魔王?魔王はエアストじゃないの?
人間と言う悪魔を使い私達の生活を
脅かしている。
エンドは私達の願い。
それが具現化したモノ。
創生神エンドと私達は言っている。
エアスト様は向こうでは創造神と
言われています。何が違うのでしょう。
と私は聞いた。
言葉遊びだね。只の。
後から生まれたものが何故か
先に生まれたことにもなっている。
まぁもともと私達の心の中に
あったモノだからあながち間違いでは
無いけれども。
単純に私達の願い。この世を
争いのない世界にしたいという。
ほんの一部の種族だけだ。まぁ人間だ。
私達は種族なんて気にしない。
だってそうじゃないか。
己と言うものは一つだけだ。
お前だってそうだろう。
お前が二人いるのか?
そこのジェニエーベルとお前は
似ていないじゃないか。
ただ姿かたちが・・・。
猫耳を生やしているのか
角を生やしているのか。
色が緑なのか赤なのか。
それを異質と思い拒絶するのか
自分とは違う当たり前の事として
認めて共存するか。
人間は前者で私達は後者。
それだけだ。
だから今でも人間とは共存したいと
思う。そう思い、紫の国とは
交易をしていた。
あの様な事があっても私達は
思うのだ。共存できる、と。
しかし、目の前で起こっている事には
対処はする。だってこの世から
理不尽な消え方をしたくないから。
エルピスは飲み物を飲みながら
普通に冷静に話をしている。
私は言葉が出なかった。
反論が出来なかった。
しかし、中には良い人間もいる。
とも、言えなかった。
私は何故ここに呼ばれたのでしょうか。
と話を変えることとした。
やってほしいことがあるの。
今鬼人族の里が大変なことになっている。
人間のせいで。
人間の貴女が人間を止めてほしいの。
私は種族関係なく共存を求めている。
だから鬼人族は助けたいと思う。
だから人間とも争いたくはない。
同族であるあなたが人間を止めて。
出来るでしょ?と笑いのない笑い顔で
エルピスは言った。
ウォッカさんは、お茶を飲みながら
「残酷だな、お前は」と。
エルピス・・・様は返す。
あら、いたって当たり前の事じゃない。
それが出来ないなんて理解が出来ない。
同じ種族よ?
「さっき人間はどうしようもないと
言っておきながら。」とウォッカさん。
そこまでは言ってないわ。
だってサンテミリオン・・・は魔族か。
アルザスはやろうとしたじゃない。
人間なのに。
もしも止めることが出来たら
貴方とジェニエーベルを送ってあげる。
ジェニエーベルが「人間として」生きる
事の出来る場所に。
少し含むように言った。
人間として生きる、成長できる場所。
そこなら。ユウキと・・・一緒に。
私は「やってみます」と答えた。
私はここに追記する。
「人間として」との意味をはき違えていた。
少女の言う「人間」。そう、それは
「悪魔として」生きる場所。
人間のみの世界であることを。
ウォッカもついて行くでしょ?
というかついて行く気満々ね。
ジェニエーベルはどうするの?とも
聞いた。
子供にも聞くのか!と私は驚く。
しかしユウキはいう。
「僕は母さんと悪いことをしているヤツを
やっつける!」と。
じゃあこれを貸してあげると
エルピスは小さな弓を渡す。
「それで母さんを守りなさい」と。
ユウキはそれを受け取り大きくうなずく。
満面の笑みで。
私は新しいスコティの服を作るので
残念ながらスコティはいけないわ。
だから帰ってくるときはこれで合図して。
そして手を前に出し、ウォッカさんに
笛の様な物が付いているペンダントを渡す。
いきなり魔方陣が現れる。
「突然かよ!」とウォッカさん。
勿論私も驚く。
ユウキは何かワクワクしている。
母様も父様も死んだ。しかし、いままで
体験したことのない事や場所、
好奇心も強いのだろう。
これが子供と言う者なのかな・・・と
私は思った。
そして転移した。
目の前が燃えている。
鬼人族達が火を消している。
一時して火が消え、私達に気づいた。
「ウォッカさんじゃねえか。久しぶりだ。
娘は見つかったのか?」と言う。
ウォッカさんはとても残念そうに首を振る。
「そうか、まぁなにか噂を聞いたら
すぐに教えるよ」とも言った。
そして言う。
「なんで人間がいるんだよ」と。
沈黙が流れるが、それを破る声がした。
「助けに来たんだ!」と。
声の主はユウキ。
小さな弓を手に取り子供ながらも
真剣に言っていた。
その真剣な顔をしている子供を見て
鬼人族は少し戸惑っていたが
「ぷっ」とその鬼人族は吹き出すと、
「言うじゃねえか、
じゃあ助けてもらおうかな」
と笑いながら右拳を突き出した。
ユウキは少しキョトンとしたが同じように
拳を突き出し、突き合わせ笑った。
こんなにも簡単に出来るものなのか。
初めて会った見知らぬ姿をしたモノと
仲良さげに笑う事が。と私は思った。
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