第7話 足にしがみ付く私

残っている者達が後ずさりをし

攻撃の手を止めた瞬間に馬に乗り

逃げる。


どっちの方角とかはない。

取りあえず馬を走らせる。


男たちは追ってこなかった。

何故かは知らないが兎に角

馬を走らせた。


「やるじゃねえか姉ちゃん。」と

男は私達を見ていた。

「追わないんです?金貨500枚を」

と言われ


「俺はな、あんな姉ちゃんが

 大好きなんだよ。強いし。

 マジでやりたかったぜ。」

と言うと続ける。


あっちの方に逃げられたらお手上げだ。

この人数で行ったら食われちまう。


「で、逃がしたって言うんですか?

 青の国の役人に。」と

股間を押さえた爪使いは言う。


「そうだなぁ、強かったのでやられた

 とでも言っとけ。それに綺麗だったって」

と男は言うと、爪使いは


「了解しましたー」と笑う。

「生きててほしいものですね。」

とも言う。それを聞いて男は


「あぁ、生きててほしいもんだ。

 しかし、無理だろうなぁ」と。


敵が追ってこないのを確認して

私はジェニ様抱えながら馬から降りて

まずジェニ様の手当てをする。


私は魔法使いなので回復魔法は使えない。

だからいつも治療用の道具と小物を

アイテムボックスに入れている。


ジェニ様の応急処置が終わると

私は肩に刺さった矢を抜く。

激痛と鈍痛が走る。


よかった。毒は塗られていない。

が、出血の量が多い。

血止めをしながら布を巻く。


脇腹も出来る限りの回復薬をかけ

血止めをし布を巻き付ける。


張り詰めた気が抜けたのか

体全体に力が入らない。


ジェニ様は気を失っているのか

目覚めない。


私達は馬に再度乗り走り出す。

何処へ向かうのかもわからず

馬が走るままに進む。


2時間ほど走ると

馬が止まってしまった。


私は疲れたのかと思い、

馬から降りここでもう一度

休憩することとした。


私は怪我をしていた事と

魔力を相当消耗していたことで

馬の状態を気にしていなかった。


そして私も男たちから逃げられたという

安心感と走る間に何も危険が

無かったことから気を緩めていた。


私は寝ていてしまった。

異様な気配に気づき目が覚める。

どれくらい寝ていたのか。


よかった。ジェニ様は私の腕の中で

まだ気が付かないのか寝ているようだった。


馬に乗り込もうとするが、馬は居ない。

異様な気配が広がる。


後ろから何かの視線を複数感じる。

私は背中に悪寒が走る。

私は振り向かずにそのまま


私を中心に極級魔方陣を描く。

同時にその視線を向けた何かが

私の方に飛び掛かってくる。


エクスプロージョン・デ・エア!


風属性最大の魔法を放つ。

と同時に振り替えると、そこには


おびただしい数の魔獣が居た。

勿論魔法で吹き飛んだ魔獣もいるが

それを意に介せずに近づいてくる。


約40匹は居るかと言う

見たこともない魔獣。


頭に長い角を生やした8本足の

体の大きさが人ほどの。


地面を這いながら突進してくる。

私は防御魔法を放つが角で割れてしまう。


距離を取る為に魔法暴発をさせる。

敵も吹っ飛ぶが私も吹っ飛ぶ。


私の体に激痛がはしり、体が軋む。


私は四つん這いになりながらも

極級魔法を放つ。

多分、魔力量的に最後の極級魔法。

しかしまだ中級魔法程度なら数発は打てる。


敵が半数くらいにはなる。

敵はその場で動かない。魔法に驚いたのか。

いや、動かないと言うより動けていない。


するとその魔獣の背後から大きな影が

現れる。


体の大きさが人の2倍ほどはあろうか

腕が10本。体の中央に目が3つ。

その下に大きな口がある。


ヘカトンケイル!名前持ちの魔獣。


名前持ちとは上級魔獣の上の上の存在。

洞窟とかに湧くボス級、が2体いた。


なぜこんなところに・・・。

今の私では無理だ。と唇をかむ私。


1匹が雄たけびを上げると

周りの魔獣は八方に散る。


私は攻撃をあきらめ魔法防壁を張る。

残りの魔力を全部使う。


気が付くと1匹のヘカトンケイルが

私の横に立っており左腕で

掴もうとする。


私はありったけの力を籠め

ジェニ様を抱えながら後ろに飛ぶが

3本の右腕が私を殴りつける。


魔法防壁がいとも簡単に砕ける。


連続で左腕2本を使い私を殴る。


私はジェニ様に当たらないように

体をひねり、背中でその攻撃を

まともに食らう。


この子だけはと思い、思い切り

抱きしめ私から地面に落ちる。


ジェニ様にはケガはない。

私は少しホッとした。


再度、魔獣は私を掴もうとしたが

私が何とかその手を避ける。


と同時に私は蹴られ、吹っ飛ぶ。

再度ジェニ様を強く抱きしめ

私から地面に落ちる。


目の前がかすむ。あぁ、

すごい量の血だ。私のだ、多分。


そうか私はここで死ぬのか。


約束も守れずに。

サンテミリオン様、ごめんなさい。

本当にごめんなさい。


ジェニ様ごめんなさい。

守ってあげられなくて

本当にごめんなさい。


私は倒れようとする。もうここで

倒れようとする。


しかし体が動いている。

魔獣から逃げる様に地面を

這いつくばりながら。


ゴメンナサイと繰り返しながら

体を動かしている。


誰か、誰でもいいです。

この子を。この子だけでも。

助けてください。


誰か。誰でもいいです。

と私は口にする。


かすむ目の前に誰かの足がある。

私は足を握る。


あぁ、幻影ではない。

先ほどいた男たちか。


もし助けてくれるなら喜んで

抱かれてっやろうじゃないか。


ジェニ様を助けてくれるならば

喜んで体を開こうじゃないか。


そう思いながら

その足にしがみ付きながら言う。


「この子を、この子を助けてください。

 この子さえ助かれば私は・・・」

もう言葉も出なくなった。


私は遠くなる意識の中で

その人の言葉を聞く。


「よく頑張ったな。後は任せろ」

そう聞こえた。


横に転がりながら最後に見たのは、

意識がなくなる前に見たのは、


桃色がかった白い髪の毛で

2本の剣を持った女性剣士が

私を見て微笑む姿だった。




















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