第5話 食事を作る私
追手は来なかった。
私の魔法で走らせている馬の
おかげだった。
道中は野営を繰り返し野生の
動物たちを狩り料理する。
こう見えても私は料理は得意だ。
おいしそうに食べてくれるジェニ様。
好き嫌いも言わずに。
そして数日前から私達は
ポルスカの街に居る。赤の国だ。
冒険者登録がまだされていたので
私はランクBの依頼をこなす。
報酬は安いが1人でできる
依頼も多く、目立たないからだ。
その日、依頼を終わらせギルドに報酬を
貰いに行くと
「あれだろ?子連れの冒険者って。
大変だよなぁ。」
「でも俺見ちまったよ。あいつ
上級魔法を使っていたぞ。」
「いわくつきか。でもそんなもんだろ。
この国、特にこの街では」
と、噂されていた。
そろそろこの街を出るか、と私は思い
帰えろうとした時に
ランクSの依頼掲示板にある
一つの依頼が目に入る。
依頼内容と似顔絵を見ると。
私達の確保だった。
「子供とその従者の確保」と。
気づかれてはいないと思う。
絵も下手だったし、なによりも
私は髪を切り、染めている。
ジェニ様も髪の毛を庶民のように
短く切り染めている。
そして何よりこの街では
「母さん」と呼ばせている。
私もジェニ様を違う名前で呼んでいる。
「ユウキ」と。
こちらでは少し珍しいが気になるほどでもない。
サンテミリオン様がよく使っていた言葉だ。
そこから取った。
困難や危険を恐れない心。
自分の信念を貫き向かっていく心。
そういった意味らしい。
青の国のバーボン様に
教えてもらったそうだ。
そのバーボン様も噂になっている。
バーボン様の指揮の元、紫の国を滅ぼした。と。
私は思う。あれはバーボン様の指揮ではないと。
以前、サンテミリオン様に聞いたことがある。
仲間として冒険をして居た頃の話。
バーボン様は兎に角、計画をする。
前準備をする。徹底的に。確認も3回ほど。
戦う前に既に準備をしている。
戦いの合図の前からすでに
戦いを始めている屑だと。
そしてもしもバーボン指揮の元
紫の国と戦争になったら、紫の国は
5分持たない。そして死者も出ない。と。
紫の国は30分は持った。
だから指揮官はバーボン様ではない。
宿屋に帰ろうとし、途中で
食材を買い物する。ありったけの
金を使い、見えない所でアイテムボックスに
どんどん入れる。
宿屋の前に来ると明らかに付けられ、
そして宿屋の周りに気配を感じる。敵意を。
私は構わず宿屋に入り主人に
「今までありがとう。これ受け取って。」
と宿代は前金で払ってはいたが謝礼を払う。
「どうやらあんた達も大変だな。
裏から出ていきな。厨房を通り、
その扉から。そしたら馬が居るから
それに乗っていきな」と主人。
なぜそこまで?と聞くと主人は
「そりゃあ、あんたが綺麗だからさ。
男は綺麗な人には弱いんだよ」と笑う。
「おじさん!またね!」とジェニ様、いや
ユウキは手を振る。
「おう、坊主、母ちゃんを守れよ!」と
頭を撫でる。
ユウキは大きな声で返事する。
「はい!」と。
宿屋の主人に言われたように裏に回り
急いで馬に乗り走り出す。
と同時に宿屋の中からすごい音と
口論する大声が聞こえた。
私達は振り返らずに馬を走らせ
そのまま門番に銀貨3枚を渡し門を
くぐる。
すんなり通れた事に違和感はあったが
そのまま駆け抜けた。
今日は野営だな。と思いながら馬を
走らせる。
ジェニ様、いやユウキももう慣れたのか
私を「かあさん」と当たり前のように言い
当たり前のように私の後ろにしがみ付く。
今日は野営だね、と楽しそうに笑う。
野営の準備をし料理をする。
「あれ、これはどうするんだっけ」
少し疲れているのかも。手を止めるが
すぐに思い出し調理をする私。
「はい、どうぞ、ユウキ」と食事を渡す。
キョトンとしながらも手に取り食べる
ユウキ。
「今日もおいしいや!でもなんか渡す時
凄く子供っぽかったよ」
「僕はもうフランゴも捕まえられるから
子供じゃないよ」と笑いながら言った。
そう言えば薬を飲むのをずっと忘れていた。
私はあわてて薬を取り出し飲んだ。
大丈夫だ。と言い聞かす。
今日が久しぶりだった。薬もある。
問題ない。
精神腐食の流行り病。私はこの
私だけの症状を精神退行と呼んでいる。
先ほどのように料理の仕方を一瞬忘れたり
ちょっと子供言葉を使ってしまう。
精神が逆行し子供の様な感じになるのかも
しれない。
私達は二人でおいしく料理を食べ
低級だが偽装の魔法を掛け就寝した。
ポルスカの街では紫の国の噂を集めた。
首都は壊滅し、クレマンの街も
火を放たれ蹂躙された。
公園にも火を放たれたようだ。
やはり私関連の所を探し、ユウキを
捕まえようとしている。
赤の国でそれほど大きな動きが
無かったのはやはり国が違うからか。
でも宿屋の主人も門番も何故か
協力的だった。
私を罠にハメようとしているのか
それとも本当に親切心なのか。
そう考えながら私は
いつのまにか寝ていた。
朝、覚悟を決める。
もう少し走ると赤の国の国境を越え
どの国にも属さない辺境の地バカノラだ。
小鳥が飛んだ方。助けが待つ所。
でも確実な目的の地点はない。
もしも私達がマーキングされていたら
敵は一気に来るだろう。というか
されているだろう。
私は首都からルナティアが放った
3発の長距離魔法を思い出し体が震えた。
そしてバカラの地へ入る。
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