95.この夜に、今ひとたびの《決着》のとき・⑨


「……『片面浸透障壁』?」


「然り。読んで字のごとく、『片面のみ浸透・突破が可能、もう一面は通常の障壁として展開し、働く』魔術障壁のことだ」


 耳慣れない単語に眉をひそめるユイリィへ、トリンデン卿は答える。


「戦術上の用語だ。魔術としての名称はまた別にある」


 具体的な用途としては、戦場における戦術防壁である。

 敵陣からの矢や魔術を障壁となる面で弾きつつ、自陣からの矢や魔法を素通しとして敵陣を叩く。また、障壁を解除することなく陣地を護りながら、歩兵・騎兵といった主戦力を前進させる――防御を維持しつつの攻勢を可能とする、特殊な魔術防壁だ。


 元々は大陸東方の魔術国、《いただきなる魔術王国》と名高き王国ディオ・クラウドで開発――より正しくは、『復刻』と呼ぶべきであろうか――された魔術構成である。


 さる野戦においてはじめてこの術式が用いられた際は、押し寄せた敵軍を一方的に砲戦魔術で叩き伏せ、まさしく蹂躙と呼ぶべき撃滅比キルレシオでもって一昼夜のうちに戦争を講和・終息にまで導いたという。

 これは、それほどの『発明』だった。


 もっとも、現在では術式構成が広く知られるようになり、件の野戦のように一方的な勝利を獲得しうる術式では既になくなって久しい。

 が――


「この片面浸透障壁だが、展開の仕方次第で『檻』として用いることもできる。今は生垣ロッジ迷路の外周四方と上下の計六面に展開し、かの刺客めを迷路の中へ閉じ込めている、ということだ」


 ――徹底している。地面にまで件の障壁を展開しているということだ。

 たとえば、偶然に地下の隠し通路を――ランディ達と生垣ロッジ迷路で見つけた地下通路だ――発見したとしても、そこからの逃走は、展開された障壁に阻まれる。


「かの刺客めもよく頑張ったが――しかしここまで追い込めば、もはや再度の逃走を許す心配もなくなった。あとは我が護衛騎士と冒険者達の中から突入隊を編成し、ゆるゆる決着をつけるだけだ」


「レドさん」


 その時だった。

 ブルーネとフライアのふたりにもみくちゃにされていたランディが、おずおずと呼びかける声を発したのは。

 危機を切り抜けた高揚で緩んでいた場の空気が、まるで水を打ったように静まり、張りつめる。


「どうしたねランディ少年。そのように不安げな声を出して」


 問い返すトリンデン卿の声も、常よりぎこちなく、こわばって聞こえた。

 ランディはなおも躊躇うように何度もうつむきかけ、無為に口を開閉させるばかりだったが――やがて勇気を奮ったように面を上げ、切り出した。


「さっき……さっきメルリィさんに、レドさんがゆってたことは」


「? 閣下、何の話です?」


 不思議そうに口を挟むフライアを、トリンデン卿は片手を挙げて制した。


「フライア。すまないが、別邸に待機している冒険者達を呼んできてはもらえまいか。ブルーネは邸外へ戻り、待機している者達の中から有志を募ってきてほしい」


 突入隊を編成する準備である。その指示自体は何らおかしなことではなかったが。


「一仕事終えた後に億劫ではあるだろうが、どうか頼む。突入隊の編成を早々に始めたいのでね――魔術障壁を展開する術士達に、あまり長く負担をかけ続ける訳にもいかない」


 トリンデン卿が重ねて頼むと、ふたりはなお困惑した様子ながら、ひとまずはその指示に従うことに決めたようだった。

 「またね」「それじゃあね」と揃ってランディの頭を撫でてから、それぞれが受けた依頼遂行のためその場を離れる。


 ふたりの女冒険者がいなくなると、トリンデン卿は改めてランディと向き直り、彼の前で片膝をついて視線の高さを合わせた。


「……ランディ少年。君が聞きたいのは、先ほど私がメルリィ・キータイトへ語ったことについてだね?」


 ――トリンデン卿と、《万変する万影バルトアンデルス》。彼の暗殺が成功裏に終わったとき、然る後に起こること。


 ランディは《万変する万影バルトアンデルス》に関する仔細を知らないはずだが、それでも感じる不穏さはあったのだろう。トリンデン卿が目の前に立った瞬間から僅かの間、ランディは怖気おじけたように怯みかけたが――ぎゅっと目を瞑ってこくこくと首を縦に振り、何度も頷いた。


「そうか」


 ひっそりと目を伏せ、静かな溜息を零す。

 そして面を上げたトリンデン卿は、ランディの肩に手を置き、真っ直ぐにその目を合わせた。


「ランディ少年――あれは嘘だ」


「うそ?」


「そう、嘘なのだ。このフレデリク・ロードリアンがメルリィ・キータイトへと語ったすべて――その一切合切はあの場を切り抜けるため咄嗟にぶちまけた口から出まかせ、単なるハッタリだったのだ」


 ほうけたように、目を丸くするランディ。

 トリンデン卿は声を立てて笑った。


「いや、嘘に決まっているであろうとも! 私だって人並みに命は惜しいし、自分が死んだ後も私そっくりの身代わりが平然と私の人生を代行するなどと、そのようなおぞましい状況は想像するだけで怖気おぞけが走る! どうしてそんな恐ろしいことができようものか!!」


 はっはと高らかに笑いながら、ぽかんと立ちつくすランディの肩を叩く。


「少年がメルリィ・キータイトの人質となったときは、私も心底慌てふためき、肝を冷やした。どうかしてあの場を切り抜け、我が朋友たる少年を無事救い出さねばならぬと――私は今にもあふれ出さんとする動揺を圧し潰し、懸命に頭を巡らせたのだ」


 トリンデン卿は恥じ入るように目を伏せ、ゆるゆるとかぶりを振った。


「ゆえに! 恥も躊躇ちゅうちょ滅却めっきゃくし、はったりだろうと何であろうとぶち上げて! とにもかくにもかの刺客めの耳目を引き! 精神的に圧倒し!――別邸に詰めた冒険者達の誰かが我らの窮地に気づき、逆転の一手が打ち出されるまでの時間をひねり出さんと試みた!

 その試みは見事成功裏に終わり、かの忌まわしき刺客めは頼もしき冒険者達の手でもって打ち払われた!」


 拳を固め、天を仰ぎ、朗々と語ることばを力強く張り上げる。


「然るに! あれは私の必死さと明晰なる頭脳が生みだした、あの場限りのまったきでっちあげ!……作り話だったのである!!」


「……ほんとに?」


「ああ、本当だとも! 冒険者レドは、愛すべき朋友に対し嘘を語る舌など持たぬ!」


 力強く頷き、トリンデン卿はどんと自身の胸を拳で叩く。


「どうやら……真に迫りすぎた私の語りは、かの刺客のみならず我が仲間、愛すべき朋友なるランディ少年をも無用に怯えさせてしまったようだ。怖い思いをさせてすまなかったね、詫びさせてくれ」


「そんなこと!……ほんとは、ぼくがあんなふうに捕まったりなんかしなかったら、レドさんだってそんなこと」


「気に病まずにいてくれたまえ、ランディ少年。我らは冒険を共にする仲間、一人は皆のため、皆は一人のためにと力を合わせる朋友同士ではないか。

 無論、いかなる経緯を経てあの状況に至ったかはいずれ君の口から語って聞かせてもらいたいところだが――しかし、互いに支えあい、助けあうのは当然のことだ」


 あらためて、そのちいさな肩を叩いて励ますと、トリンデン卿は立ち上がった。


「これより私はこの館を預かる当主として、最後の幕を引かねばならぬ。かくも長い夜となったが、ランディ少年――どうか、後のことはこのフレデリク・ロードリアンに任せてくれたまえ」


「あのっ、レドさんもういっこだけ!」


「ん? 何かな?」


 踵を返そうとするその背を呼び止めて。

 ランディは問いかけた。怯みそうになりながら。


「メルリィ、さんは――メルリィさんはこれから、どうなっちゃうんですか……?」



 その問いを向けられた瞬間、トリンデン卿の肩がこわばるように微かに震えたのを見た。


 その、動揺の発露でランディはすべてを察してしまったし、そうしてランディが察してしまったことを、トリンデン卿もまた察したようだった。


「……彼女が投降の呼びかけに応じ、降伏してくれるのならば、それで決着だ」


 だが――と。

 トリンデン卿は生垣ロッジ迷路を見遣る。


「だが、彼女はそれを良しとしなかった。

 冒険者とは己が身を『冒険』という危険に晒す生き様であり、危難を払うにおいて代償とする命の危険もまた、彼らが身を置く冒険のうちではあろう――だが、私は彼らに対し、本来無用の危険に身を晒せとまで命ずることはできない。言うまでもなく、我が護衛騎士達にもだ」


「トリンデン卿」


 ランディとトリンデン卿の間に、ユイリィが割って入っていた。

 ランディを庇うように立ち、咎める目で見上げるユイリィに、トリンデン卿は後ろめたさを覚えたように鼻白み、眉をひそめる。


 ――ああ。


 ランディにもわかってしまった。トリンデン卿が敢えて口にせずに、あるいはできずにいた全部。


 メルリィは降伏なんかしないし、諦めたりもしないのだろう。そうするならもっと早くに、いくらでもその機会はあったのだ。


 たとえば、《諸王立冒険者連盟機構》支部での襲撃に失敗したときに。

 たとえば今日の昼に、スレナへ擬態していたのを見破られたときに。

 ランディを人質にしてもなお逆転されて――逆に追い詰められた、そのときに。


 メルリィが姿をくらまして現れなくなるなら、降参してトリンデン卿の暗殺を諦めるなら、きっとその時点で何もかもが終わっていた。

 けれど、彼女はそうはしなかった。諦めて、やめてなんかくれなかった。

 その結果が、今――この時の現状なのだと。


「ランディちゃん」


 ふと。

 行き場のない思考の隘路あいろに迷い込んで、真っ暗になってしまったみたいな足元へ落ちていた視線をはっと上げた、その時。

 傍らにはユイリィがいて、じっとランディの顔を覗き込んでいた。


「ランディちゃんは……メルリィのこと、助けたいの?」


「……………………」


「どうしてか、教えてくれる?」


 頷くことも、そうだと答えることもできなかったのに。ユイリィは問いを重ねる。


 ランディが、彼女を助けたいと思ってしまっている――その、理由を。


「わるいひとじゃないのかな、って。思ったから……」


 ――違う。これだけじゃダメだ。言葉が足りない。

 だって、メルリィはトリンデン卿を、レドさんを暗殺しようとしたひとで、だから彼女は悪い暗殺者だ。


「さっき、ぼくが捕まったとき……『ごめんなさい』って、言われて。ぼくに、ケガさせたくない――みたいに、ゆってて」


 ――宣言を違えるつもりはありませんが。


 苦しげに呻く声でそう前置きして、メルリィは懇願した。きっと、ランディ以外の誰にも聞こえなかった、誰にも届かせなかったことばで。



わたしはあなたに危害を加えたくはないのです――どうかこのまま、何もせず大人しくしていてください。お願いします』



「首を絞めるみたいにしたときだって、ほんとはちっとも苦しくなんかなかったんだ。ユイリィおねえちゃんやレドさんからどう見えたかはわかんないけど、ぼくはほんとに、なんにもされなかったんだ」


「なんにもしてないことはないよ。彼女メルリィはランディちゃんに切っ先を突きつけて、トリンデン卿を脅迫する人質にした」


 返す言葉もなかった。

 それでも――だなんて反駁は、絶対に言えなかった。


 人質作戦が失敗してトリンデン卿が無事だったのは、トリンデン卿がとても頭のいいひとで、なおかつヴィムやブルーネ、フライアといった冒険者達の援軍があったからだ。

 もし、そうでなかったら――メルリィがどうしていたかなんて、ランディみたいな子供にだって想像に難くない。


 ぜんぶ分かってる。だから、あのひとにひどいことをしないで、みたいな言い草なんか、口が裂けても言えやしない。

 ああ、だけど――それでも、


「それでもランディちゃんは、彼女を助けたいんだね」


「……もう、わるいことなんかやめてほしい」


 くぅ。

 と、足元で鳴く声を聞いた。


 クゥだった。今までいったいどこに行っていたのか――ランディが人質にされたときには薄情にも我関せずを決め込んで、どこにいたのか気に留める余裕もなくなっていたちいさな幻獣が、ちょこんとお座りしてランディを見上げていた。


 ――脅威をけっして恐れないで。

 ――望みを訴えることばを躊躇ためらわないで。


 あの、本当の世界から遠く隔てられてしまったみたいだった静謐の中庭で。

 ひとりぼっちの《真人》――ハルアの口を借りて、クゥが約束してくれたことを思い出す。


 ――その意思こそが、


 その訪れを証明する、《選定の竜ファフニール》からの約束。


「メルリィさんは、ユイリィおねえちゃんのおねえちゃんなんでしょ? だったらやっぱり、ぼくにとってもお姉ちゃんだもの」


 ただの悪い暗殺者だなんて、そんな風には思えない。

 他人だとか、関係ないだとか、そんな風にも切り捨てられない。


「悪いことなんかやめてほしい。けど――メルリィさんにも、ひどいことになんかなってほしくない……」


 でも、そう思うのと同じくらい、やっぱりランディは分かってしまう。


 自分なんかじゃ、そんな風にはできない。

 兄のシオンやトリンデン卿や、ほかにもたくさんの『大人』みたいに、ランディはできない。子供だから。


 ――今のキミは、いまだちいさく力弱い子供です。

 ――けれど、キミはその岐路を選定することができるのです。


「わかった」


 けれど。

 優しく応える声があって、ずっとランディを見つめていたユイリィの眼差しがほどけるのを感じた。


「トリンデン卿。突入隊の編成はどれくらいかかりますか?」


 ユイリィはトリンデン卿を見て訊ねた。

 青年貴族は角ばった顎を撫で、ちらと別邸に目を向ける。ちょうど、両開きの玄関扉から、フライアを先頭に冒険者達がぞろぞろと出てきたところだった。


「邸宅の外で待機している冒険者からも有志を募っているところだ。もうしばらくはかかるだろうね」


 二騎が降りていた竜の片割れ、ブルーネの騎竜の姿が消えていた。

 《遊隼館》を囲む障壁を飛び越えて、外の冒険者達を呼びに行っているのだ。


「なら、わたしもその突入隊に加えてほしいんだけど――いいですか?」


「それは構わないが……」


 突然の申し出に、当惑気味で唸るトリンデン卿。

 ユイリィはにっこりと、花のように微笑んだ。


「では、ユイリィは今から先行して突入します。先遣隊として迷路内の状況を観測し、能うるならばメルリィを確保・させます」


「ユイリィおねえちゃん……!?」


 驚愕するランディの頭をそっと撫でて、一瞥と共に笑みを深くする。

 優しく華やかな、自負と自尊の微笑。


「……それは、可能なのかね?」


「最前の段階では不可能でした。けれど、今なら可能です」


「切り札がある、ということか」


 ――いや。

 トリンデン卿は自らの呟きを一度否定し、言い直す。


「切り札の、準備が整った。そういうことでよいのかな? ユイリィ・クォーツ」


 ユイリィは答えなかった。

 だが、揺るぎも怯みもしないその静かな沈黙は、それ自体がトリンデン卿の言葉に対する肯定だった。


 トリンデン卿は黙考し、上着の内ポケットから懐中時計を取り出した。

 蓋を開いて文字盤を見下ろし、そして告げる。


「――二十分だ。我らは突入隊を編成し、二十分後に生垣ロッジ迷路へ突入。メルリィ・キータイトとの泥仕合に完全なる終止符を打つ」


 トリンデン卿は冒険者達を一瞥した。

 脚を止めた冒険者達が怪訝な面持ちになるのを見届け、彼はユイリィへと向き直る。


「だがその二十分の間に、メルリィ・キータイトがさらなる反攻を試みる可能性は否めない。君はこれを防ぐ先遣隊として突入し、能うるならばメルリィ・キータイトの無力化を図ってほしい」


 男らしく力強い口元に笑みを刻み、トリンデン卿はどこか突き放した挑発的な物言いで問いかける。


「やってくれるな? ユイリィ・クォーツ」


「いいよ。でも、ユイリィひとりで片づけちゃってもかまわないんだよね?」


「それが叶うものならね。私が真に望むのは、常にだ」


 トリンデン卿は踵を返し、足を止めてこちらの様子を伺っている冒険者達へと向かう。


「叶わぬならば妥協も重ねよう。だが、できるものなら――いいだろう。やってみせてくれたまえ」


 背を向け、最後にひらりと手を振る。こちらは任せておけ、とでもいうように。

 トリンデン卿は大仰に両腕を広げて冒険者達を迎え、彼らと輪を作って語らいはじめた。


 ――二十分。

 たぶんその時間は、その間だけは冒険者のひとたちをここに留めてくれるという、トリンデン卿からの最大限の譲歩なのだ。


「ユイリィおねえちゃん――」


「だいじょうぶ。お姉ちゃんにまかせて」


 微笑んで、ユイリィは請け負う。

 ついていた膝を上げて立ち上がり、体をほぐすように軽くて足を振る。


「今日はかっこわるいとこばっかり見せちゃってるからね。名誉挽回のつもりで、いっぱいがんばっちゃうよ」


「そんなこと――!」


 振り仰ぎ、喚きかけるその口に。ユイリィの人差し指が触れて、そっと塞いだ。


「ほんと言うとね。ちょっと嬉しかった――メルリィはユイリィの『お姉ちゃん姉妹機』だから、だから彼女もランディちゃんにとってはお姉ちゃんなんだって。

 それって、ランディちゃんにとってのユイリィが、《機甲人形オートマタ》である以上に――ちゃんと、『お姉ちゃん』だったってことでしょう?」


「……ユイリィおねえちゃんは、おねえちゃんでしょ?」


「うん。そう。そうだよ。そう――」


 ユイリィは首肯した。まるで自分へと聞かせているみたいに、何度も。


「前にも、こんなふうに約束したね。何かしないといられないなら、ユイリィにそれを伝えて――ランディちゃんに望む何かがあるなら、ユイリィはそのためにを尽くすよ、って」


「あ……」


 その言葉を、ランディも覚えている。

 兄のシオンが、ランディのせいで冒険に行けずにいるのではないかと不安で、怖くて、ぐちゃぐちゃでたまらなくて、自分で自分がわからなくなっていたそんな時に――ユイリィがかけてくれた、ことばだ。


「ユイリィはランディちゃんのお姉ちゃんだからね。だから――またユイリィに、がんばらせてくれる?」


 ――ううん、と。

 けれどあの時とは違って、今度はランディが答えるより早く。ユイリィはふるふると首を横に振った。


「違うね、そうじゃないんだ。これはユイリィががんばりたいの。ランディちゃんのために」



 ――脅威をけっして恐れないで。

 ――望みを訴えることばを躊躇ためらわないで。



 ――なぜならキミの傍には、キミの選択を支えてくれるてのひらがあるから。

 ――キミの願いを聞き届け、その実現に邁進まいしんする、がついているから。



 ――だから、


「そのために、最善を尽くすよ。――いってきます、ランディちゃん」


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