Chapter 19-4
カヴォロスは立ち上がる。
彼が構えると、その腕に鎧が集結していく。『王竜剣』の構えである。
「みんな、時間をくれ……!! 俺の残りの魔力、この一撃にすべて込める……!!」
装填される魔力が増え、『王竜剣』から深緑の煌めきが漏れ出る。完全に魔力がオーバーロードしている。カヴォロスはその衝撃に顔を歪めながら、それでもありったけの魔力を鎧に込めていく。
「させませんよ」
そこへエレイシアが展開した炎の壁が、カヴォロスを強襲しようとする。
が、それを阻んだのはアヴェンシルの放った氷の壁だ。
「させぬよ。妾の相手をしてくれぬか? 女同士、積もる話もあろう?」
「四魔神将、アヴェンシル……!」
「ならば私が止めるしかないな」
アヴェンシルにより封殺されたエレイシアに代わり、ロキは自身でカヴォロスへと吶喊しようとする。
しかしその前にグラファムントが立ちはだかる。
「ぬうっ……!」
「ふん……っ!!」
両腕で押し合う形になり、拮抗する。体格ではグラファムントが大きく上回っているが、それでもロキを押し込み切れない。どころか、ロキの黒い波動が強まるにつれ、グラファムントの身体が徐々に後ろに下がっていく。
「持ちこたえてくれよ、グラファムントの旦那!」
「合わせるぜ、黒いの」
そこへ飛び込んでくるのはデビュルポーンと辰真。先行するデビュルポーンが、その神速の小刀捌きで瞬く間にロキの魔力障壁を何重にも斬り付ける。
「辰真の旦那!」
「おう!」
そしてデビュルポーンが身を退き、辰真がロキへと肉薄する。たった今、デビュルポーンが斬り付けた箇所へ正確に、苛烈に斬りかかる。
渾身の、そして技ありの一撃はしかしロキの魔力障壁を貫通するには至らない。
辰真、デビュルポーン、グラファムントは三者三様に舌を打つ。
「そろそろいいかね? どきたまえ」
魔力障壁が破裂し、辰真たちを弾き飛ばす。細かく割れた障壁は刃と化し、辰真たちの身体に突き刺さっていく。
これでもう、彼奴の行く手を阻む者はいなくなった。ロキはカヴォロスへ向かって足を踏み出す。
「させぬぞ……!!」
終わりかと思われたその時、瓦礫の中から立ち上がったのはダルファザルクだった。
彼は掌をロキへ向けると、彼奴の眼前に魔力障壁を展開した。
「お前がその一撃にすべてを賭けるのなら、我もこの瞬間にすべての魔力を回そう……!!」
「くっ……!!」
その強度を前に、さしものロキも障壁を破り切れない。
それならば、とロキは振り返りダルファザルクへと掌を向けた。
瞬間、ダルファザルクは笑みを浮かべた。
「ゆけ……カヴォロス!!」
「うおおおおおおおおおおおおお――っ!!」
『王竜剣』を構えるカヴォロスが、ロキの眼前に迫っていた。
緑色の奔流が爆発し、加速したカヴォロスの拳がロキの魔力障壁に突き刺さる。
「……見事」
そして障壁を突き破り、ロキの心臓を抉ったのだった。
これによりロキは体中から黒い波動を全放出する。そして彼自身もその波動に呑まれて消え去ってしまう。
勝った。
カヴォロスはその場に崩れ落ちる。魔力も完全に切れ、体力も底を尽きた。立ち上がれない。周囲から声がかかるが、何も聞こえない。
そんなカヴォロスの身体は、次の瞬間に光の粒となり、消えた。
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