Chapter 19-3
眼下で崩れゆく聖剣の神を見下ろして、ララは息を吐く。
「どうした、ララ」
「ごめんなさい、カヴォロス」
「ララさん……?」
ララは結花を抱き寄せ、告げる。
「私と結花はここまでみたい。聖剣の神がいなくなったんだもの、当然よね」
彼女たちの身体は光の粒となって消えつつあった。
「安心して。消えるのは私だけ。この子は無事に元の世界へ送り返すわ」
「そんな……! ララさん、せっかくまた会えたのに……!」
「あら、こんな時まで人の心配? 優しい子ね。……あとは任せたわよ、カヴォロス」
「……ああ。結花、先に帰って待ってろ。必ず帰るから」
「嫌……! 竜成君! 竜――」
伸ばした手は届かなかった。結花とララの姿は消え、その場に残った聖剣は瞬く間に錆び付き、砕け散った。
必ず帰る。その言葉が叶うとは思っていない。だが約束した。だからまずは、次の敵を討つ。
カヴォロスは踵を返し、裂け目の外へと飛び出した。同じく飛び出した他の面々とともに、先に離脱していた破砕球が彼らを回収する。
そしてカヴォロスたちはダルファザルクの元へと帰還する。
「お見事。やはり神とはいえあの程度の存在。君たちには相手にもならなかったようだ」
するとそこでは、ロキによる拍手と賛辞が待っていた。
しかし誰もその賛辞に応える者はいない。構えを取り、戦闘態勢に入る。
「これは嫌われたものだ。初対面なのだがね」
「ならばもう少し友好的にしてもらいたいものだな。殺気がにじみ出ているぞ」
「おっと、これは失礼。では死合うとしよう。我が名はロキ。この世界に新たに君臨する神である」
開戦。
切り込むのは紅蓮の魔人と化したグラファムントだ。烈火を纏いロキの前に躍り出た彼は、その剛腕を以って彼奴へと殴り掛かる。
これをロキは避けもしない。なぜなら彼の前には神の剣すら防いだ魔力障壁があるからだ。これによってグラファムントの拳は弾かれるが、彼はなおも攻めたてる。何度も、何度でも障壁を殴りつけるのだ。
そして、ロキの横合いから攻め込む者たちの姿があった。カヴォロスと辰真である。彼らは左右に分かれ、ロキの側面から仕掛ける。が、そちらにも魔力障壁が展開されており、カヴォロスの拳と辰真の刀は防がれてしまう。
だが。
「後ろは取ったぞ」
強烈な冷気がロキの背後から迫る。ロキの背後に回り込んでいたアヴェンシルが、氷の刃を振るう。これに串刺しになるかと思われたロキだったが、なんとそこにも魔力障壁があるではないか。
見やれば、ロキと背中合わせに立つ者の姿が浮かび上がってきた。
エレイシアだ。
彼女は既にロキのそばに控えており、彼女の力でロキの防御壁は強化されていたのだ。
「ならこっちはどうさね」
しかし、姿を消して迫っていたのはこちらも同じ。頭上に跳躍していたデビュルポーンが、その落下の勢いを利用し首を狙う。だがそれさえも防ぐのが彼らの障壁だった。360度。どの角度でさえ隙はない。
「こんなものかね? では、次はこちらの番だ」
ロキから黒い波動が噴出し、彼の身体を包んだ。そしてその衝撃波により、カヴォロスたちは弾き飛ばされ散り散りに地面に叩き付けられてしまう。
「陛下!」
気付いた時にはもう遅かった。ロキは地を蹴り既にダルファザルクの眼前へと肉薄していた。彼奴は黒い波動を纏わせた掌底を繰り出す。対してダルファザルクは手を前にかざした。
すると彼の前に魔力障壁が展開される。聖剣を前にはなんの役にも立たない代物だったが、そうでなければ話は別だ。彼の魔力障壁はこの世界髄一の硬度を持つ。
拮抗する両者であったが、しかし圧されているのはダルファザルクだ。彼の足は徐々に後退しており、押し込まれていた。やがて耐え切れず、弾き飛ばされて背後の壁に激突。崩れる壁の中に彼の身体は埋もれてしまう。
「陛下!!」
まさか、ダルファザルクの魔力障壁すら通用しないとは。
これが神。ただのシステムではない、真なる神の力なのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます