Chapter 19-2

 空が、空間が割れ、その裂け目から城よりも巨大な剣が振り下ろされる。


 帰ってきたカヴォロスたちがまず目にしたのは、そんな光景だった。


 しかしこれを正面から受け止める存在があった。彼の展開した魔力障壁が、いともたやすく剣を受けたのだ。


「はぁっ!!」


 男は魔力障壁を動かし、剣を押し返そうとしていた。障壁の圧が増し、剣は次第に裂け目の中へと戻されていく。しかしてそれは、剣の中ほどまで戻っていったところで拮抗し、止まる。


「マゾク……ジンルイノ、テキ……センメツ、シマス」


 そして裂け目の奥、剣を握っている者の姿が見える。それは先程の神の端末に似た、無機質な女性の姿をした存在だった。

 それを見上げるカヴォロスたちへ、男から声がかかる。


「あれはどうやら、すべての魔族を滅ぼすつもりのようだぞ?」

「……らしいな」

「どうかね? 私と協力してあれを討つというのは」

「貴様との決着はそのあと、ということか」

「そのように捉えてもらって構わんよ、魔王ダルファザルク。それで、どうかね?」


 男――ロキの提案に、ダルファザルクは頷く。


「いいだろう。どちらにせよ、あれを野放しにしておくわけにはいかぬ。そのあとは覚悟しておけ、異界の神よ」


 その言葉に笑みを見せたロキを後目に、ダルファザルクはその場に杖を立てる。


「『念動破砕球』!!」


 それはダルファザルクの持つ最強の魔術兵装である。大地を割って出現したそれを、ダルファザルクは手に取り掲げる。


「これはこういう使い方もできる!!」


 ダルファザルクは『念動破砕球』を投げる。それはカヴォロスたちの元へ飛んでいき、彼ら全員を呑み込んで肥大化した。

 そして直下に竜巻を起こすと、その竜巻に乗って上昇していく。


「頼むぞ! 聖剣の神を討て!」


 カヴォロスたちを乗せ、破砕球は裂け目の中へと侵入する。

 そこは先程までカヴォロスたちがいた、『輪廻の境界』との境目に似ていた。何もない真っ白な空間に、かの者だけが姿を見せている。


 彼奴はこちらへ視線を向ける。掌に閃光がスパークし、それはカヴォロスたちへ向かって放たれた。


「任せな。扇空時流――」


 破砕球から飛び出したのは辰真だ。彼は刀を両手持ちで大上段に構えると、向かってくる閃光へと振り下ろす。すると閃光は真っ二つに斬り裂かれ、あらぬ方向へと飛んでいった。

 辰真はそのまま彼奴の腕の上に着地。駆け出した。


 しかして彼奴もそれだけでは終わらない。破砕球に向けて更に攻撃を仕掛けてくる。五指から放たれる光線が、無差別に、しかし確かに破砕球に向かって発射される。


「俺たちも降りるぞ!!」


 カヴォロスの声に頷き、全員が破砕球から飛び降りる。辰真に続く形で神の腕に降り立ち、肩口へ向かって駆け上がる。

 ここまで近付かれては神も攻撃の仕様がなかった。肩口まで上ったカヴォロスたちは、次々に攻撃を仕掛ける。


「大将!」

「『王竜剣』!!」


 そしてカヴォロスによる『王竜剣』の一撃で、神は遂に粉砕されるのだった。

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