Chapter 18-5

 神の端末は両手を男に向ける。すると彼女の掌から、超高熱量の光線が発射された。

 この部屋すら融解せんばかりの光線を受け、男は跡形もなく消える――はずだった。


 男はそれを、片手で無造作に受け止めていた。


「この私が人類の敵か……。なるほど、確かに。ある意味、この私こそがそれに最もふさわしいと言えるだろう」


 彼は光線を掴むように握りしめる。

 すると光線はたちまちの内に霧散し、消えた。


 そんな彼の胸に、エレイシアが飛び込んでくる。


「あなた!」

「エレイシア。無事だったかね」

「はい……。お待ちしておりました。我らが王、ロキ」


 彼――ロキは頷くと、エレイシアを抱き寄せたまま片手を神の端末へ向ける。

 対して神の端末は、更なる光線を照射しようと両手を掲げた。そこに収束する高密度の熱源を見ても、ロキは臆することなく相手の出方を待つ。


「その程度かね? 全力で来たまえ」


 ロキの言葉を受けてか、収束する光の勢いが更に増す。轟々と音を立てる光はやがて刃と化し、天井を突き抜ける。

 そして神の端末は刃を振り下ろした。

 光の刃は天蓋を切断しながら轟音を上げてロキへと迫る。


「ふん!」


 しかしてロキはそれをも、再び片手で受け止めてしまう。

 そしてあろうことか、光はロキの手の中に収束していき、収まっていく。端末の放った光の刃は、ロキに奪われてしまったのだ。


「さて、次はこちらから行かせてもらおう。エレイシア、離れていなさい」

「はい……」


 エレイシアを離し、ロキは前に出る。


「さて、異世界の神よ。端末ごときが相手になると思ったかね? 我が名はロキ。神話の時代を生き抜き、この世界に降臨した享楽の神だ。この私を相手にしたければ……」


 ロキは奪った光の刃を端末へと投げつけた。自らが放った高密度の熱源により、端末は爆散。消失する。


「君もその姿を現したまえ」


 空が、割れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る