Chapter 18-4

「ぐ、はっ……!!」


 胸を貫かれたダルファザルクは、血反吐を吐いて気を失う。

 それを確認し、エレイシアが玉座を立つ。


「よくできましたね。では、あなたは用済みです」

「――? あれ、私、何を……!?」


 結花の目に光が戻る。彼女は戸惑いながら辺りを見回すと、その惨状に言葉を失う。

 エレイシアはそんな彼女の元に歩み寄ると、聖剣を取り上げ結花に向けて斬り付ける。


「ぐっ……!!」

「竜成、君……!?」


 その瞬間、カヴォロスは立ち上がり結花を庇った。脇腹から横薙ぎに斬り裂く一撃を受け、カヴォロスはその場に崩れ落ちる。


「竜成君!」

「……まあいいでしょう。あなたはそこで見ていなさい。世界変革の時を」


 エレイシアは掌を結花に向ける。すると魔力でできた縄が結花の両手を縛り、天井から釣り上げた。


「いや……! 離して!」

「黙りなさい」


 口も縄で縛られ、結花はもがくことしかできなくなってしまった。

 これでいい、とエレイシアは足元に倒れるダルファザルクへと視線を向ける。


「では始めましょう。我が王ロキよ。再誕の時です」


 稲光が轟く。外はいつの間にか雨が降り出していた。

 そして光に照らされた玉座の間には、いつの間にか見知らぬ一人の女性の姿があった。いや、それを女性と呼ぶのが正しいのだろうか。無機質で、どこまでも透き通るような肌をしたそれはしかし、やはり女性としか形容し難い存在であった。


「来ましたか、聖剣の神。いや、その端末と呼ぶべきでしょうか。どちらにせよ、あなたには何もできない。そこの小娘と一緒に、指をくわえて見ているがいい」


 エレイシアは掌をダルファザルクへ向ける。するとダルファザルクの身体が浮き上がり、中空で固定される。そして彼を取り囲むように展開した魔法陣が光りだす。

 光は柱となって立ち昇り、ダルファザルクの身体を覆い尽くす。光は更に、すべてを呑み込まんとしてうねりを上げる。部屋全体にまで広がった光が収束したとき、そこにカヴォロスたちの姿はなく、ダルファザルクがいたはずの場所には一人の男の姿があった。


 そして聖剣の神――その端末が声を発した。


「ジンルイ……ノ……テキヲ……カクニン……ハイジョ、ハイジョ、ハイジョ……シマス」

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