Chapter18 神々の降臨

Chapter 18-1

 半壊した通路に二人の男が倒れていた。その片方――カヴォロスの手がピクリと動く。目を覚ました彼は、起き上がると眼下に倒れるシロッコを見下ろす。


「あんたの勝ちみてぇだな、大将」

「辰真……。ああ……」


 そこへやってきたのは辰真だった。彼は半壊した通路を見回しながら続ける。


「しかしすげぇでかい音がしたな」

「『王竜剣』を使わざるを得なかった。まさかあれを、人一人に対して使うことになるとはな」


 『暁』のシロッコ。手ごわい相手だった。死んではいないだろうが、それでもしばらくは起き上がれないだろう。


「竜成殿、辰真殿!」

「エルク! 無事だったか! ……と、陛下!?」

「久しいな、カヴォロス」


 続いて現れたエルクの姿に安堵し、ダルファザルクの姿に驚く。そして即座に彼の元に跪いた。


「魔力が戻られたのですね。いや、しかしなぜ陛下が起きているのにエルクが一緒に?」

「充分な魔力が戻ったのでな、我単独で顕現することが可能になった。グラファムントも呼べるようになったぞ」

「……お呼びですか、陛下」


 そこへ、この世界髄一の巨躯を誇る大男、グラファムントが合流する。彼の隣には、肩を貸されて歩くボルドーの姿もあった。

 どうやら、エレイシアの洗脳は解けたらしい。


「さすがは四魔神将と呼ばれる豪傑、今回は負けましたが実に天晴れですな。……おお、そなたは竜成殿か? ようやく素顔のそなたと出会うことができましたな!」

「あ、ああ。割と元気だな、お前」


 ボルドーはカヴォロスの姿を認めると、握手を求めてきた。これにカヴォロスは困惑気味に応じる。


「それで、勇者の小娘はどうしたのじゃ。先に行っておるのか?」


 そしてアヴェンシルがやってくる。彼女はカヴォロスたちを見回すと、ここにいない結花のことに言及した。


「ああ。デビュルポーンとアルフォスたちが付いてくれてる」


 すでにエレイシアの元へたどり着いているだろうか。あの二人がいれば心配はないはずだが。

 しかしそれを聞いたアヴェンシルは眉根を寄せる。


「何? ……陛下、お急ぎください。かの者たち、内通者の可能性があります」

「いや、デビュルポーンは確かに機関の一員らしいが……」

「あやつが信用ならんのは昔からじゃ。問題はあの、アルフォスとかいう若造よ。なにかしでかす気がしてならぬ」


 アヴェンシルの言葉に、ダルファザルクが頷く。


「急ごう。手当ての必要なものはここに残れ! 他の者は我とともに来い! これより我らは勇者結花の救援に向かう!」


 残るのはエルクとボルドー、玉座の間へ向かうのはダルファザルク、カヴォロス、アヴェンシル、グラファムント、そして辰真だ。


 カヴォロスたちは玉座の間へ急いだ。もしアルフォスが内通者なら、勇者の首を狙って仕掛けてくるかもしれない。


 玉座の間の扉は開いていた。そこで、カヴォロスたちの目に飛び込んできた光景は――。


「ゆ……か……?」


 ――結花が、デビュルポーンとアルフォスを斬り伏せているところだった。

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