Chapter 17-2

 アヴェンシルによって氷漬けになった聖騎士たちを後目に、カヴォロスたちは玉座の間を目指して駆けた。


「待たれよ」


 だがそこに、筋骨隆々とした一人の聖騎士が、巨大な戦斧を手に立ちはだかった。


「騎士ボルドー……!!」

「騎士エルクよ。これ以上の狼藉、許すわけにはいかん」


 生きていたか。カヴォロスは地下水道での別れを思い出す。

 が、喜んでいる状況ではなかった。

 カヴォロスたちの前で仁王立ちする彼は、明らかな敵意をこちらに向けてくる。どうやらその身は再び、エレイシアによって洗脳されてしまっているようだ。


「カヴォロス殿、行ってください。ここは私が」

「……いいのか、エルク」

「はい。一人の聖騎士として、そして一人の友として、必ず彼の目を覚まさせてみせます」


 エルクは剣を構え、ボルドーへと斬りかかる。


「今です!」


 ボルドーがそれを小手で受け止める間に、カヴォロスたちは駆け出した。

 なにか妨害が入るかと思いきや、ボルドーは眼中にないとでも言うように微動だにしなかった。


 なんにせよ、この隙を逃すわけにはいかない。駆け抜けたカヴォロスたちは、引き続き玉座の間を目指す。階段を駆け上がり、上階へ向かうと、そこには二人の男の姿があった。

 一人はあの時戦った東洋風の男、シロッコ。そしてもう一人はたしか、ミハイルといったか。


「貴様ら……!!」


 身構えるカヴォロスたちを前に、ミハイルが頭を下げる。


「お久しぶりです、カヴォロス殿。私は聖騎士ミハイル――改め、『黒翼機関』のエキスパート、シュラと申します。どうぞお見知りおきを」

「そうか、貴様も……」


 彼奴には表の顔と裏の顔があったということか。エルクとは親しい仲に思えたが。

 だからと言って、立ちはだかるのなら容赦する気はない。


 顔を上げたミハイル――シュラの手には一振りの両手剣があった。金色に煌めくそれは、まるで聖剣と見紛うほどの業物だった。

 シュラの身は紺碧の鎧に包まれ、隣に立つシロッコもまた、紅蓮の鎧に身を包んでいた。


 そしてその背には、一対の翼がはためいていた。


「我が名はシュラ。『蒼炎』の二つ名を拝命した、『黒翼機関』がエキスパート。我が宝具、『エクスカリバー・レプリカ』の前に散れ、勇者たちよ」

「我が名はシロッコ。『暁』の二つ名を拝命した、『黒翼機関』がエキスパート。我が宝具、『ガラティーン・レプリカ』の刀の錆となれ、勇者たちよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る