Chapter 16-4

 城に戻ったカヴォロスたちは準備を終え、夜になると城門前に集合した。


「これより我らは王都内に転移し、強襲をかける! みな、準備はよろしいか!」


 エルクの言葉に咆哮が上がる。

 カヴォロスはその様子をどこか冷ややかに見つめた。この中に内通者がいる。エルクやデビュルポーンが目を光らせているはずだが、自身もできる限り気を付けておかねばと気を引き締める。


「では結花殿」

「はい」


 転移は結花の力で行われることになった。今の結花の力なら、200人だろうが1000人だろうが転移させられるだろう。太鼓判を押すのは、結花に魔術を指南してくれたアヴェンシルだ。


 結花は目を瞑り、大きく息を吸う。深く息を吐き、集中する彼女の身体から光が漏れ出る。幻想的な光景の中、続いてカヴォロスたちの足元に巨大な光の円が現れる。


「いきます」


 目を開いた結花の言葉が聞こえたかどうか。それすらわからない内に、カヴォロスの視界が白く染まった。


     ※     ※     ※


「来ましたね。……シュラ」


 エレイシアが呼びかけると、玉座の間に一陣の風が吹き抜ける。

 風が止むと、そこには跪く一人の男の姿があった。


「『蒼炎』のシュラ、ここに」

「迎撃の準備はできていますか?」

「抜かりなく」

「さすがですね。ではそのように」

「御意に。それでは、失礼いたします」


 もう一度風が吹き、それに呑み込まれるかのようにシュラの姿が消えた。


 エレイシアは窓の外を見やる。

 そこには紫炎に包まれる王都の姿があった。


「もうすぐです。信徒狩りは終わり、あとは聖剣を折るだけ。そうすれば、この世界はあなたの物です」

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