Chapter16 出撃
Chapter 16-1
「みなさま、お集りいただきありがとうございます。私はエルク。錬鉄騎士団の団長を務める聖騎士です」
今、作戦室にはエルク、カヴォロス、結花、アヴェンシル、デビュルポーン、辰真、ベルカら主要な面々と、デトリクスやアルフォスら各魔族の長を務める者たちが集まっていた。
エルクは頭を下げ、挨拶を終えると早々に話し始める。
「我らの目的は、アルド王国現女王エレイシアを打倒し、この世界に平和を取り戻すことです。彼女は突如乱心し、王都を火の海に沈めました。王都は未だ火の海に包まれ、近付くことができません」
カヴォロスは王都の惨状を思い返す。無辜の民が身体を焼かれ、命を散らしていく。その状況がまだ続いているというのか。
「彼女の目的は魔の王ロキをこの世界に降臨させること。そのロキという存在について、詳しいことはわかりません。しかしその存在を降臨させるため、女王エレイシアの手先となる一派が今、王国中の教会を襲撃、信徒狩りを行っています。彼奴らの名は、『黒翼機関』」
「なに……!?」
カヴォロスは瞠目する。ここでその名が出るとは。シロッコを名乗る男の姿が脳裏に浮かぶ。そうか。彼奴らは女王に与する者たちだったのか。
「彼奴らの目的を食い止めるためには、信徒狩りを止めるほかありません。もしロキという存在が現れたとき、何が起こるのかは正直なところ不明です。しかし、女王がやろうとしていることは人類の淘汰です。これでは真に人間と魔族が手を取り合える世界は作れない。我らの目的の真意は、人間と魔族の共存です。魔族のみなさま、そのために力を貸していただけますか」
エルクの言葉に、魔族の長たちは顔を見合わせる。今からやろうとしていることは、人間を助けるということだ。
女王エレイシアはおそらく、魔族と戦うつもりはないだろう。人間が支配する世を是正し、パワーバランスを安定させることが彼女の目的のはずだ。それはつまり、彼ら魔族にとっては益となり得る。本来であれば彼らが味方すべきは女王エレイシアなのだと言っても過言ではない。
「愚問だな」
口を開いたのはアルフォスだ。
「我らが立ち上がったのは世のため人のためではない。世直しなど考えてはおらぬ。カヴォロス殿、アヴェンシル殿のために戦い、その先に平和があればそれでよい。そのためならば、守るべきものが人間であろうが魔族であろうが些細なことだ」
違うか、とアルフォスは魔族の長たちを見回す。彼らは頷き、エルクへと向き直った。
本当は様々な葛藤があるはずだ。人の世を守るということは必然、彼らの肩身は狭くなる。だがそう言ったものは、ここに来るまでに切り捨ててきたようだ。それは彼らの目を見ればわかる。
「んで、どうするつもりだいエルクの旦那」
デビュルポーンの問い。これにエルクは頷く。
答えは決まっていた。
「打って出ましょう。今こそ反撃の時です」
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