Chapter 15-4

「ご無沙汰しております、アヴェンシル様、カヴォロス様」

「ふむ。壮健なようでなによりじゃ、デトリクス。して、これはなにか、説明してくれるのであろうな?」


 アヴェンシルが指したのは、デトリクスの後ろに控える約100人の魔族たちだった。その中にはグルジファルドたち魔狼族の里民の姿もある。


 カヴォロスたちが城から出ると、彼らは魔王城城門前に並び立っていた。まるでカヴォロスたちの登場を待っているかのように。


「はい! あれから我ら里の民は協議いたしまして、アヴェンシル様たちの手助けをするべく動き出しました。そして各地の里を訪れ、協力を要請して回ったのです。そうして集った我ら97名、共に戦うため推参いたしました」

「ほう……」


 アヴェンシルが感嘆の息を漏らす。カヴォロスも同じ思いだった。自分たちのためにこれだけの魔族が、種族を越えて集ってくれたというのか。


「デトさん」


 と、そこで一歩前に出る魔族の姿があった。

 猛々しい一本角、鱗のような白銀の肌を持つ彼は間違いない。カヴォロスと同じ魔龍族だ。100歳は超えているようだが、龍魔族としてはまだまだ幼さを感じる。


「どうしたっぺ、アルくん」

「アルくんは止めてくれ。こう見えても今の龍魔族の長は俺なんだ」


 なるほど。カヴォロスの中で合点がいく。彼は恐らく、カヴォロスが里を出るとき後を託した者の子孫だろう。そういえば顔がよく似ている。


「……失礼した、アルフォス殿。それで、どうされたのだ」


 口調を正したデトリクスの問いに、アルフォスというらしい龍魔族はカヴォロスの前に歩み出る。


「あなたが四魔神将カヴォロス殿か」


 その眼光は果たして。真正面から見据えられ、カヴォロスはしかし目を逸らすことはなかった。


「そうだ。我が名は四魔神将カヴォロス。かつては龍魔族の長を務めたこともある」


 カヴォロスの名乗りに、魔族たちの中にどよめきが生まれる。彼の姿を知らない、初めて見るという若い魔族も多いのだろう。

 そしてその中から龍魔族たちがぞろぞろと前に出てくる。彼らはアルフォスの後ろに並ぶ。


 すると、アルフォスたち龍魔族は片膝を突き、頭を垂れる。


「お会いしとうございました、カヴォロス殿! 我ら龍魔族一同、どうかあなたの元で戦わせていただけるようお願い申し上げます!」


 アルフォスの言葉を受け、カヴォロスは顔を伏せる。


「……この身は里を捨て、あまつさえ敗軍の将となった身だ。何も思うところはないのか」

「ないとは言いませぬ。ですが、すべては過ぎ去った過去。既に500年の時が経っているのです。今更蒸し返すことに意味などありませぬ」

「……そうか」


 カヴォロスは同じく片膝を突き、アルフォスの手を取る。


「ありがとう。私からも頼む。力を貸してくれ」

「はっ! この身に代えても!!」


 そして魔族たちの雄叫びが、辺り一帯に響き渡るのだった。

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