Chapter 15-2
辰真を仲間に加えてから一か月が経過しようとしていた。
敵側に動きはなく、それぞれがそれぞれの準備を進める中、カヴォロスと辰真は結花の稽古にかかりきりになってくれていた。
「ふっ!」
結花が放った一閃。それが辰真の眼前をかすめる。
「おっ。いい太刀筋になってきたじゃねぇか。んじゃ、少し本気で行くぜ」
辰真の姿が、結花の前から消える。いや、違う。これは彼の動きが変わったのだ。速度を上げた辰真の動きに、結花の目は追いついていない。そのため、辰真の姿は消えたように見えた。
しかし、結花の目ではないなにかが、辰真の動きを捉えていた。
――後ろ!!
結花はその感覚に任せて剣を振るう。反転しながら背後に向けて横薙ぎに振るった剣は、見事に辰真の剣と切り結ぶ。そう。辰真は結花の背後に回り込み、一撃を見舞おうとしていたのだ。
「やるじゃねぇか」
「ありがとうございます……!!」
しかし辰真の剣は重く、結花は切り結んだ状態で踏ん張るだけで精一杯だ。
「そこまで!」
声が掛かったのは、剣が弾かれるその寸前だった。
カヴォロスの掛けた声で、結花と辰真は剣を下ろした。
「よく今のに反応できたな、結花」
「うん……。ありがとう」
「よし、休憩にしよう」
カヴォロスが微笑むと、結花はそれに合わせて頷いた。
※ ※ ※
「どうだ、結花の調子は」
結花を休ませている間に、カヴォロスは辰真の元へ歩み寄る。
「悪くねぇな。日に日に仕上がっていってるぜ、ありゃあ」
「そうだな……」
カヴォロスは振り返る。木陰に座って休憩する結花は、ああしていればいつも通り、普通の少女にしか見えない。
「さっきの動き、どう見る」
カヴォロスは先程の結花の動きについて言及した。
一段ギアを上げた辰真の動きに、結花は見事に反応した。だがカヴォロスには、彼女にその動きが見えているようには思えなかった。
「反応速度は化け物染みて来やがったな。あれを勘って言っちまうと、少し違うような気もするが……」
「ああ……。後ろにも目が付いているような、そんな動きだった」
見えていないのに、見えている。そうとしか表現できないような動きである。
思えば、ララにもそんな節があった。最後の戦い、彼女にはこちらの動きがすべて見透かされているような感覚があったのを覚えている。
「まさか、未来が見えている……?」
「んなアホな。……とは言い切れねぇが、俺は少し違うと思うがね」
「ふむ……」
結花の見せた反応速度の正体。それは一体なんなのだろうか。
「竜成君! 辰真さん!」
と、そこへ休憩中のはずの結花が走り寄ってきた。
「どうした?」
「そ、それが……」
息吐く間もなく話そうとする結花に、カヴォロスはまずは落ち着けと声をかける。
頷いた結花は、先に息を整えてから口を開く。
「誰かが、近付いてきてるの。強い力を持った人たちが、こっちに」
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