第四部

Chapter14 斬鬼

Chapter 14-1

 男が目を覚ますと、そこはとあるアンティークショップの店内だった。


「ああ、起きたか。気分はどうだ?」

「悪くはねぇぜ。最初に見る顔がお前ぇじゃなけりゃあな」


 男の前にいたのは、喪服に身を包んだ妙齢の美女だった。

 彼女は男の悪態にも満足そうに笑う。


「ククク、久し振りだというのに随分と辛辣じゃないか。かつての戦友に再会できた喜びを分かち合わないか?」

「そいつは結構。だがよ、先に説明しちゃくれねぇか? 俺はついさっき、寿だと思ってたんだがな?」

「ああ、なにも間違ってはいないよ。享年78歳。寿命を全うして亡くなったところだ。だが思い出さないか? お前にはを」

「……そうだな。はっきり思い出せるぜ。向こうの俺が死んだときのことをな」

「それで、どうする?」

「どうもこうもねぇさ。わかってんだろ? 俺にはまだやらなきゃならねぇことがある。ったく、あの世で大人しく隠居もさせちゃくれねぇってか」

「悪いな。だがお前の魂は特別製だ。ゆっくり遊ばせておいてやる余裕はない」

「構わねぇよ。それより例のブツはあるかい?」

「ああ。持っていけ」


 女性が指を鳴らす。するとどこからか現れた一本の刀を、男は受け取った。


「はっ、やっぱこいつがなきゃ始まらねぇ。んじゃ、行ってくらぁ。さっさと全部終わらせて、お前の淹れた不味いコーヒーでも飲みに帰ってくるか」

「む。不味いとはなんだ。この私のスペシャルブレンドだぞ」

「言ってろ。じゃあな、行ってくる」

「ああ。……頼むぞ」


 男は手をひらひらと振り、そのまま店を後にした。

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