Chapter 13-4
「どうじゃ……!! この辺りで降参かの……ッッッッッッ!!」
「まだまだ……!! この程度の酒で倒れる四魔神将カヴォロスではない……ッッッッッッ!!」
二人のグラスは空になっては次々に酒が注がれ、ペースが落ちることはなかった。
そんな激戦に、里の民たちは熱狂する。
この様子を、結花は少し離れたところで傍観していた。
「はぁ……。もう知らない」
カヴォロスとアヴェンシルの飲み比べ対決が盛り上がるにつれ、結花の溜め息は深くなる。
売り言葉に買い言葉で始まったこの対決だったが、竜成はあんなに喧嘩っ早い性格だっただろうか。カヴォロスの血がそうさせるのか、それとも逆か。ともかく、結花はもう呆れて物が言えなくなっていた。
と、そこへ結花のそばにやってくる人影があった。
そちらを見やると、現れたのは金髪の美丈夫であった。
「結花殿、大丈夫ですか?」
「エルクさん。私は特になにも。それより、エルクさんの方こそ身体は大丈夫ですか?」
魔力を使い果たしたダルファザルクが眠りについたため、身体の主導権はエルクに戻っていたが、彼自身も極度の疲労に襲われ休息を取っていた。
「ええ、もうだいぶよくなりました。それよりこれは何の騒ぎですか? なにやら盛り上がっていたので、つい見に来てしまいました」
「ああ……。いえ、ちょっと竜成君とアヴェンシルさんが言い争いになって……。そうしたら怒った竜成君が飲み比べで勝負しようって言い出したんです」
「なるほど……。いやはや、かの四魔神将たるお二人の対決ですか。それは盛り上がるわけだ」
「感心しないでください……」
「おっと、これは申し訳ございません。結花殿はお気に召しませんか?」
「お気に召さないというか……。呆れてるだけですよ。人の気も知らないで……」
「なんですか?」
「いえ、なんでもないです」
結花は水を口にして思う。そういえば、今の竜成は元々大学生で酒が呑める歳だと言っていた。結花の知っている竜成は、自分と同じ高校生だ。その時間の差が、自分の知る竜成と今のカヴォロスとなった竜成の差を生んでいるのかもしれなかった。
しかし、思えばこの時間の差はいったいなんなのだろう。偶然か、それとも意図されたものか。意図したのなら誰が。……聖剣が?
「結花殿?」
「は、はい。すいません、どうかしました?」
「どうやら、勝負が付いたようですよ。お二人が心配ですし、様子を見にいきませんか?」
結花は頷き、エルクとともにカヴォロスたちの元へ向かうのだった。
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