Chapter 13-2

「エルク!」


 カヴォロスは聞こえてきた声の方へと駆け寄った。

 エルクはグルジファルドに支えられ、こちらへ歩いてきているところだった。


「大丈夫なのか?」

「ええ。私自身はただの魔力切れです」


 魔力切れとは、魔力の使い過ぎにより起こる極度の疲労だ。体力と同じで無理や無茶は禁物である。

 今のエルクの場合、それをしたのは彼自身ではないのだが。


「ですが我が祖先は、再び長い眠りに就かれたようです。次はいつお目覚めになられるか……」

「そうか……」


 ――アヴェンシル復活にご尽力いただき、ありがとうございます、陛下。

 カヴォロスは胸の内で、ダルファザルクへの感謝を述べた。


 そこへ、戦いが終わったことを察した里民たち、彼らの逃げ道の確保と治療に当たっていたベルカ、結花とデトリクスたちも合流してくる。

 そして、最後にゆっくりと歩いてきたアヴェンシルが口を開く。


「さて、では聞かせてもらうかの。何が起きておるのか」

「ああ……。そうだな、事情を説明しよう」


 思えばアヴェンシルは500年の眠りから覚めたばかりだ。自身がこの時代に転生したときのことを思い出しながら、カヴォロスは説明を始めた。


「まずはそうだな……。お前とララ――勇者ララファエル・オルグラッドが戦ってから既に、500年の時が経っている」

「そうか、500年か……」

「意外と驚かないんだな?」

「なに、実感が沸かぬだけのこと」


 なるほど、確かに。

 カヴォロス自身、今は500年の時が経ったことを理解はしているが、実感は湧いていない。


「そして500年後のこの世界に、新たな危機が訪れようとしている。それを阻止するために召喚された新たな勇者がこの、天海結花だ」

「あっ、そうだ。自己紹介。天海結花です。よろしくお願いします」


 結花は丁寧に頭を下げる。対してアヴェンシルはそんな彼女をただ見ているだけだった。


「……ふん。それで? どうしてお主と新たな勇者が共におるのじゃ」

「ん? ああ、それを説明しようとすると結構長いんだが……」


 カヴォロスはララに敗れたこと、それによって一度人間に転生したこと、その人間から再びカヴォロスへと転生したことを順を追って説明していく。


「……だから今の俺は、勇者の従者みたいなものだ。別に仕えている訳ではないがな」

「ほう? ではお主はこの娘のなんなのじゃ?」

「えっ? なにって……、幼馴染みだけど?」

「……ふむ」


 アヴェンシルの問いの真意がわからず、戸惑いながら答えたカヴォロスを、アヴェンシルはじっと見つめ、次に結花と交互に見比べ始めた。


「……ふむ。なるほどな。貴様も苦労しておるようじゃな」

「あっ、わかります?」


 アヴェンシルと結花は視線を合わせると、なにやら不思議と意気投合しだした。

 くすくすと笑いだした二人に、カヴォロスは頭に疑問符を浮かべることしかできなかった。

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