Chapter 12-4
「結花? ……ああ、すまん、ララだったか」
おかしいな。結花だと思ったんだが。カヴォロスは呼んでも反応しない結花を見て、ララと間違えてしまったのだと判断した。彼女を見てどちらが表に出ているのか分からなかったのは初めてだった。
「! ララ!!」
そんな彼女へ突進してくる怪物の姿があった。彼女はゆっくりと立ち上がり、聖剣を構える。悠長に動く彼女の前に回ろうとしたカヴォロスだったが、そんな彼を彼女は手で制した。
「大丈夫」
構えた聖剣が光り輝く。光は七つの光条に分かれて怪物へと降り注いだ。爆撃のような光の雨に、怪物は為す術なく消えてなくなってしまった。地面は抉れ、穴が開いていた。
「……出力の調整、難しいな。うん」
「ララ?」
彼女は剣を握り直すと、カヴォロスの隣に並び立った。
「ほら、行くよ竜成君」
「あっ、おい! ってお前、まさか結花か!?」
駆け出した彼女は、追いすがろうとするカヴォロスを振り返る。
「さあ? どっちだと思う?」
やわらかく微笑むその姿は、大学生の頃の結花に似ているような気がした。
「ほら、早くアヴェンシルさんを手助けにいかなきゃ」
「あ、ああ!」
戸惑うカヴォロスだったが、その言葉に気を取り直す。アヴェンシルがここにいる。彼女の救出に成功したのか。確かにこれだけの氷を生み出せる魔力を持つのは彼女しかいないだろう。その彼女のピンチとなれば急がねば。
カヴォロスと結花の駆ける先、氷山のように立ち並ぶ氷漬けの怪物どもの中心に彼女はいた。
「アヴェンシル!!」
「カヴォロス!!」
飛び上がり、怪物の氷山を砕きながら彼女の元へ降り立つ。そして彼女の身体をがしっと抱きしめる。
「よかった……! 本当によかった……!!」
「な、なんじゃ!? や、止めい! こんなところで!」
アヴェンシルはそれを引き剥がそうとするがうまくいかない。
が、その背後からアヴェンシルの放つものに勝るとも劣らない冷気が。
「竜成君? やってる暇ないよ?」
「は……はい」
カヴォロスはパッとアヴェンシルの身体を離す。
「皆様!」
「デトリクス!」
そこへ、氷山を切り崩しながらデトリクスが現れる。
「も、戻ってきたかデトリクス。という事は、魔術陣は破壊できたのじゃな?」
「はっ! 魔術陣を計四つ破壊し戻って参りました!」
「でかした! これで――」
「――ううん、まだ」
結花は氷山の向こう側を見ていた。
その先、残った怪物どもが集合していく。そしてまるで組み体操のように肩に乗ってどんどんと積み重なっていく。
「まずい……! 止めるぞ!」
カヴォロスたちはそれを止めようと動き出す。が、時すでに遅く、怪物どもの身体に変化が起きた。
怪物どもは溶けて混ざり合い、一匹の巨大な怪物へと変貌したのだった。
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