Chapter12 氷姫降臨
Chapter 12-1
アヴェンシルが目を覚ました時、そこは彼女の敬愛する魔王ダルファザルクの胸の中だった。
「へい、か……?」
「目覚めたか、アヴェンシル……!」
何故自分が生きているのか。ここはどこなのか。いや、そんな事よりも。何故陛下はこうも憔悴しきっているのだろうか。
「目覚めてすぐ、まだ状況が呑み込めぬだろうが、頼む。カヴォロスたちの手助けに行ってくれぬか……!」
「カヴォロス、の……?」
まだはっきりしない意識の中、アヴェンシルは周囲を見渡す。そこは雪山だ。見覚えがある――いや、ここはあの勇者ララファエル・オルグラッドと戦い――負けた場所だ。
その下方、魔狼族の里からはざわめきのような喧騒が聞こえてくる。
アヴェンシルはよろめきながらも立ち上がる。つまり、あそこでカヴォロスが戦っているということ――?
続いて立ち上がろうとしたダルファザルクだったが、叶わず膝を突く。
それを彼のそばにいた魔窟族の男が慌てて支えた。
「お主は」
「はっ! あっしはカヴォロス様の部下をしておりやした、グルジファルドと申しやす!」
アヴェンシルは再度里の方へ視線を向けた。
溶けた氷が水になり、里の方へ川となって流れている。アヴェンシルが手を振ると、川は瞬く間に凍り付いていく。
「……グルジファルド、お主は陛下を」
「わ、分かりやした!」
「今参るぞ、カヴォロス」
アヴェンシルは凍った川に飛び乗ると、そのまま川を滑り直滑降で里へと向かう。
里が近付いてくると、目に入ってきたのはかつての仇敵と同じ獲物を持つ少女と、それを庇うようにして立つ部下の姿だった。
「待て」
アヴェンシルは飛び上がる。魔狼族の長たる彼女が現れた事により、里の気温は急激に下がり、彼女の周囲には吹雪が吹き荒れる。
「それ以上の狼藉はこの妾――四魔神将アヴェンシルが許さぬ」
そして彼女は里の中心、怪物たちの群がる只中へと舞い降りる。
おもむろに怪物に手を触れる。それだけで、怪物は凍り付いて砕け散った。
「あ……アヴェンシル様……!!」
「礼を言うぞデトリクス。よく里を守ってくれた」
「勿体なきお言葉……!!」
頭を垂れる側近に微笑みかけると、アヴェンシルは怪物どもへ向き直る。
ただそこに在るだけで。怪物どもはその存在の恐ろしさを認識し、たじろいだ。
「さて、お主ら。ここが我が里と知っての狼藉であろうな? でなければ、妾を愚弄するにも程があるぞ」
両腕を振るう。するとあろうことか、十数匹の怪物どもが一瞬にして氷柱の中に閉じ込められたではないか。
だがその間を縫って、氷結していない怪物どもがアヴェンシルへと肉薄する。
「その程度の存在で妾に触れようなど、おこがましいにも程があるわ」
それをアヴェンシルは睥睨し、一瞬にして叩き伏せる。凍り付いた怪物どもは粉々に砕け散った。
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