Chapter 11-5

 ララの出した聖剣は、酷くくすんで最早かつての輝きは失われていた。彼女はその刀身を一瞥し、柄を強く握りしめる。

 それを見ていたデトが口を開く。


「その剣の事、今は何も聞きません。ですのでまずは、この状況を打開しましょう」

「……ええ。ありがとう」

「……その剣の持ち主からそう言われる日が来るとは、夢にも思いませんでした」


 それだけを言い残し、デトは怪物の群れの中へと飛び込んだ。

 彼女の両腕には氷の刃が発生しており、それを以って怪物たちと激突する。怪物の頭部と切り結んだそれはたやすく砕かれてしまうが、瞬時に再度刃を発生させ、腹部へと斬りかかる。


 そうして怪物どもを次々に屠っていくデトに続き、ララも怪物に斬りかかる。

 横薙ぎに振るった剣で怪物の腹部を両断すると、返す刃とともに反転。背後に迫っていた怪物を袈裟斬りで屠る。続いて里の民へ襲いかかろうとしていた怪物へ肉薄するや、跳び上がり上空から斬り倒す。


「あ、ありがとうございます!」

「お礼はいいわ。ここは任せて、あなたは傷付いた人の救護を」

「は、はい!」


 武器を置いて駆け出した里の民を見送り、ララは次の怪物へ相対する。頭部を振り下ろしてきた怪物に対し、側面へ回り込むとその首を斬り落とす。二体で囲もうとしてきた怪物の足を斬ると、体勢を崩した所を叩き斬る。


 そうして怪物どもを倒していくが、彼奴らは絶えることなく次々と現れる。次第に疲労の色が濃くなっていき、ララは聖剣を地面に突き刺して膝を突いてしまう。


「ララ様!」


 それに気付いたデトが、ララの前に立つ。彼女は動けなくなったララに向けて頭部を振り下ろそうとしていた怪物との間に割って入ったのだ。


 デトの身体が怪物に斬り裂かれる――その寸前だった。


「待て」


 突如として、極寒の地であるはずの里の気温が、更に下がった。


「それ以上の狼藉はこのわらわ――」


 吹雪が吹き荒れる。怪物たちはその声と吹雪に動きを止めた。

 そしてその吹雪の中心、台風の目のように凪いだ空間に、一人の少女の姿があった。


「――四魔神将アヴェンシルが許さぬ」

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