Chapter 11-4
カヴォロスはララ、デトとともに里へと急いだ。
グルジファルドの言う「訳の分からん連中」とは一体。まさか、王国からの追手がここまで来たのか。しかし王国の騎士たちを見て訳が分からんなどと言うものだろうか? ともかく急がねば。平穏な暮らしをしている同胞たちをみすみす見殺しにする訳にはいかない。
「これは……!?」
里に辿り着いたカヴォロスたちが見たのは、異形の怪物と戦う里の民たちであった。里の民らは各々の武器を手に、魔獣たちを引き連れ怪物と戦っていた。ベルカもそれに手を貸している。だが、あれは一体なんだ? 怪物は包丁を逆さにしたような頭部を持ち、その身体はまるで影のように黒ずんでいた。あんなものは見た事がない。それが数十匹。
「来たか」
そして怪物どもを従えるように、その後ろに控える男の姿があった。東洋系の顔立ちをした、背の高い男である。彼はカヴォロスたちが現れたのを見るや、どこからともなく大剣を取り出した。
「貴様、何者だ」
「答える必要はないな、四魔神将カヴォロス。どけ。俺が用があるのは聖剣の勇者だけだ」
「なんだとっ……!?」
男は言うや否や大剣を振りかざしてララへと疾駆する。
カヴォロスはすかさずその間に割って入り、男の大剣を腕で受け止める。
「邪魔だ。どけと言っている」
「できんな! ――ララとデトリクス殿は怪物どもを! こいつは俺が相手をする!!」
「ええ」
「はい!」
ララとデトが共に怪物の群れの中へ向かっていくのを、カヴォロスは肩越しに確認する。そして腕を大きく振り上げ、男の大剣をかち上げる。
「破っ!」
男の腹へ掌底を繰り出す。狙いすました一撃だったが、これを男は大剣で受け止める。しかし掌底の威力を殺しきれず後方へと地面を滑っていく。
「……ふん。噂よりはやるようだな」
「まだまだこんなものではないぞ。我が拳、その身を以って確かめてみよ」
カヴォロスは腰を低く落として構える。
「四魔神将カヴォロス。推して参る」
再度激突。カヴォロスは地を蹴り、肘打ちを繰り出す。男が横薙ぎに振るった剣とぶつかり、火花が散る。魔龍族であるカヴォロスの皮膚は龍の鱗に覆われ、並みの金属を遥かに凌ぐ硬度を持つ。故にこのように刃物と打ち合おうが斬られはしない。まして彼奴の剣は斬撃よりも打撃が本懐。その長さと重さを以って相手の鎧を貫通することが本質なのだ。
なればこそ、打ち負ける訳にはいかず、負ける訳がない――!
カヴォロスは弾くように腕を振るい、剣を跳ね返す。たたらを踏む男の懐に踏み込むべく、更に地面を蹴る。これに応戦する男が振るう剣と、カヴォロスの拳が三度交錯する。その衝撃に両者跳ね返されるが、更に四度・五度・幾重にも拳と剣が重なっては火花を散らす。
だがそれも、彼奴が追い詰められるまでの話だ。徐々に前進していたカヴォロスに対し、後退していた彼奴はやがて、民家の壁にその背を付けることとなる。逃げ道を失ったのだ。
カヴォロスはこれを機と捉え、渾身の蹴りを見舞う体勢を取る。これを避ける術は奴にはない――はずだった。
突如として巻き起こった突風。思わずカヴォロスは目を瞑ると、その間に男はカヴォロスの眼前から姿を消していた。
「終わりだ」
男の姿はカヴォロスの頭上にあった。彼奴は剣の切っ先を下に向け、そのまま直下のカヴォロスへと急降下してくる。
そしてそのまま、剣はカヴォロスの肉体を貫いたのだった。
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