Chapter 1-4
そういう事か。結花の言葉にカヴォロスは合点がいく。自分と結花に起こっている状況は、似ているようでまるで違うのか。それこそ、時間の概念さえも。
「竜成は竜成でも、俺はお前にとって未来の竜成なんだな……。だからなんかこう、若いなあとか思っちゃった訳だ。俺も年喰ったなぁ……」
カヴォロスは遠い目をして、乾いた笑みを浮かべた。目覚めてから一番衝撃的な事実かもしれない。
「竜成君?」
「ああ、悪い悪い。んで、俺には竜成としての記憶も、カヴォロスとしての記憶もあるんだ。だからここがどこだか見当は付くし、結花に何が起こったのかもなんとなく分かる。多分、気が付いてるとは思うけど、ここは俺たちの住んでいた世界とは全く別の世界だ。ここに来る前、何してたか覚えてるか?」
「う、うん。竜成君と一緒に下校してた筈なんだけど……。気が付いたらさっきのお城にいて」
「あいつらに出くわしたって訳か。こっち側に来るまでになんかこう、お告げみたいなのはなかったか? 世界を救いなさい、みたいな」
「うーん……。そういえば、何か変な夢を見た気がする。あんまりよく覚えてないんだけど」
「多分それだな。結論から言うと、お前は聖剣に選ばれた勇者なんだ。世界が危機に瀕した時、どこからか現れて、異世界から勇者を呼び出して世界を救う伝説の聖剣、っていうのがこの世界にはあって、そいつに選ばれてお前はこの世界に召喚されたんだ」
「私が、勇者……?」
結花は不思議そうな顔をしてカヴォロスを見返してくるが、カヴォロスには確信があった。カヴォロスの魔力を一瞬で跳ね返せるほどの聖なる魔力を持つ者など、勇者以外には考えられない。ララファエルとの戦いを思い出して少し胸が痛むが、目の前にいる新たな勇者は彼女ではない。勇者に敗れた記憶は、今しばらくは忘れた事にしておきたい。
「勇者……」
結花は目を閉じて自分の胸に手を当てた。
何をするつもりなのかと問おうとした時、彼女の胸元が光り輝き、一振りの剣が形を成していった。
「これは、聖剣……!? 結花、お前、これどうしたんだ」
「うん、さっき竜成君が使ってた魔法みたいなのが弾けた時から、私の中に何かがあるような気がしてて……。話を聞いて、これが私の勇者としての力なんじゃないかって」
「成程な。にしてもこれが聖剣か。パッと見た感じ、あんまり普通の剣と変わらないな」
カヴォロスは聖剣を手に取って、その意匠を観察してみる。
この世界にならどこにでもあるような、何の変哲もない両刃剣だった。刃渡りと重量はそこそこあり、シンプル故に使い易そうではある、とは思うが。
ララファエルの手にしていたものはもっと煌びやかで、これぞ最強の剣だと言わんばかりの代物だったような気がする。何が原因なのだろう。確かにこれはララファエルの手にしていた剣と同じものなのだと思うのだが。
カヴォロスはおもむろに剣を振り上げてみる。これが聖剣なら、切れ味まで何とも言えないという事はなかろうと、近くの木を斬り付けんとする。
だが、それを制止する声が離れた所から聞こえてきた。
「何をしているのです?」
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