第12話 ex.続・迷子パーティ
その頃、グランたち迷子パーティは……まだ、ダンジョンを彷徨っていた。
「はぁ……はぁ……。まだ着かねえのかよ。もう一日経ったぞ」
「で、でももう三層よ! ここからは慣れた道だし、迷うはずないわ!」
「そ、そうだよな! 上層は魔物も弱いし、俺たちなら余裕だ!」
道に迷い続け、なんとか階段を見つけること、一日。
精神的にも肉体的にも疲労し、食糧も底をついた。
這々の体でなんとか三層まで辿り着いたが、彼らの気力は限界だった。
「……油断するな」
唯一疲れを見せないのは、【守護】のスキルを持つエルドだ。
重い鎧と盾を持ちひたすら魔物の攻撃を防ぎ続けた彼がいたからこそ、まだ生きていられたと言える。
だが、結局エルドも地図を読めないのでまったく進まない。
「この道は知ってるぞ! おいエルド、早く前に行け!」
「やっと帰れるのね! 太陽が恋しい……」
階段への道を見つけて、テンションが上がる迷子パーティ。
「こっちだよな!」
「ええ、絶対こっちよ!」
意気揚々と歩みを進める。
さっきまでは重たかった足も、出口が近いとあらば軽くもなる。
【万能地図】にスキルが進化したシクレが半日足らずで突破した帰り道に、丸一日以上いるのだから。
陽の光を浴びる時を、ずっと待ちわびていた。
「ここを曲がると階段が──」
三層最後の曲がり角に差し掛かった。
……しかし。
「は?」
予想外の光景に足を止める。
「は? え? おい、階段はどこだ?」
階段があるはずの、その場所……曲がり角の先には、壁しかなかった。
しかも、まるで通路の途中で無理やり埋められたかのような、歪な壁だ。
「なんでだよ! ここに階段があるはずだろ!? 地図なんてなくたって、さすがに間違えるわけ……!」
「もー! なんでよ! グラン、また間違えたの!? 何回目よ!」
「なっ……! お前だってこっちで合ってるって言ってただろ!?」
二人は醜く言い争う。
ここに来るまで散々道を間違えた彼らだったが……今回、三層の階段に関しては、彼らの記憶は正しかった。
実際、この道をまっすぐ進めば二層へ向かう階段がある。
シクレが【地形操作】によって大穴を開け、落ちないようにと壁面を塞いだときに、分断されてしまったが。
「もうやだぁあああ。帰りたい……」
「うるせえ! 騒ぐな!」
「なによ! あんただってうるさいわよ!」
涙を流すエレンと、イライラして怒鳴り散らすグラン。
普段は冷静なエルドも、今回ばかりは戸惑っていた。
「だいたい、あんたがあの雑用係を追放したのが間違いだったんじゃない? せめて代わりに地図を読める人を入れてからにしないから!」
「なんだと!? お前だって賛成してたじゃないか! 嫌がらせのためにダンジョンで追放しようって!」
ようやく、シクレの重要性に気がついたようだった。
それも当然だ。追放した途端に、迷子になったのだから。
まさか道が塞がれている理由も、そのシクレだとは思わないだろうが……。
「クソ! 言い合いをしても仕方がねえ。ほかの道を探すぞ!」
「もう歩きたくないわよ……」
「歩かなきゃ死ぬぞ! もう水も食糧もほぼないんだからな!」
「わ、わかってるわよ!」
ついに出られる、と思ったのに、その希望が一瞬にして潰えたのだ。
彼らの気力は、もうゼロに等しかった。
それでも、意地だけで歩き始める。
「俺は間違ってない! あの雑魚が必要なわけねえんだ!」
なお、その直後。
彼らが離れたころに、再び【地形操作】によって道が元に戻されたのであった。
それに気がついたのは、三層を一周したあとだった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます