第10話 お父サンタ

 ここは日本の都会でも田舎でもないどこかの町のどこかの住宅地にある秘密結社のアジト。構成員の長男のエツ(10歳)、次男のロク(8歳)、三男のミツ(5歳)はとても仲良し。絶叫にも似た男の子の声が、今日も元気に響いていました。


「オラオラ、お父サンタぁ! とっととプレゼントをよこしやがれ!」

「よこしやがれ!」

「やがれ」

「やれやれ、俺の子供たちは相変わらず騒がし……、あれ? 三人もいたっけ?」

「何を言っているんだ、お父サンタ。桃園の誓いごっこをやらせたいからって、俺を望んだんだろう?」

「そうか? そうだったか? 三男のお前が言うのなら間違いないだろうな」

「そうと分かったらとっととプレゼントをよこしやがれ! 俺はもちろんトゲトゲ肩パッドだ」

「よこしやがれ! 俺はトゲトゲふんどしが欲しいぜヒャッハー」

「やがれ。俺は女が欲しい」

「「「こいつ、五歳児のくせになんてものを!」」」

「まあ、落ち着け、クソ野郎どもよ。今年のプレゼントはこれだ!」

「こ、これは……マキタの掃除機にリボンを巻いただけじゃねえか!」

「おいおい、落ち着けっつったろう? お父サンタのこの俺がこれだけで終わらせると思うか? そらよ!」

「ま、まさかのマキタの掃除機二つだと!? ど、どういうことだ、親父ぃ!」

「そ、そうだ! どうしろって言うんだクソ親父!?」

「まさかこれは……!?」

「さすがにミツは気付いたようだな。……そうだ。掃除機二刀流だ」

「「なんだと!?」」

「流石はお父サンタだ。伝説の勇者オオタニサーンとかけているとは」

「ふっ。それだけじゃないぜ」

「……待て。それ以上言うんじゃない。それは禁忌だ。言ってはいけない。言ったらヤツに殺される」

「ミツ。お前はいつからそんな腰抜けになった? さっきまでのお前はそうじゃなかっただろ? 禁忌って奴にはな、男は自分から飛び込んで行かなきゃいけないものなんだよぉ!」

「「「こいつ、おとこだぜ」」」

「ふっ。俺、かっこいい」

「で、禁忌ってのは具体的になんだ?」

「聞きたいか?」

「お、おう」

「本当に聞きたいのか? 聞いたが最後、もう後戻り出来なくなるぜ?」

「聞かせてくれ。男は自分から飛び込むもんなんだろう? 親父ぃ!」

「流石は俺の息子たちだ。いいだろう、教えてやる。それはな……」

「「「ごくり……」」」

「ドリル二刀流だ!」

「「「なんだってぇー!」」」

「あんた達!! ドリルを付けるならこの私の屍を乗り越えてみせな!」

「「「「かかか、母ちゃん!?」」」」

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