第9話 男のロマン

 悪の秘密結社筋肉ふんどし団。構成員の長男のエツ(十歳)、次男のロク(八歳)、三男のミツ(五歳)は今日も仲良し。


「兄貴、てえへん大変だ! てえへん大変だ!」

「ロク、そんなインチキ江戸っ子のふりをしてまで、いったい何が大変だって言うんだ?」

「母者が、母者が!」

「天帝がどうしたって? まさか、おやつのじゃがりこサラダを買ってくれなくなるとでも言うまいな?」

「makitaのコードレス掃除機を注文したのだぜ!」

「なん……だと!? makitaというとあのmakitaか!?」

「そうだ、兄貴。鍛え抜かれたマッチョたちが愛してやまない、あの電動工具のmakitaだ!」

「現場で使える充電式のいかつい電子レンジなどという奇天烈な商品を開発した、あのmakitaか!?」

「そうだ。屈強な男たちが過酷な現場で肩に担いでパーリーpartyするための頑丈で堅固なラジカセを作った、あのmakitaだ」

「ど、ど、ドリル、ドリルもついているんじゃないか!?」

「ああ、マッチョな男たちの必須アイテム、ドリルもきっとついているだろうよ。何せ、あのmakitaだからな」

「いざというときのために釘も撃ちだせるんじゃないか!?」

「ああ、そうだな。頑強な男たちにピストルなんてえ、ちゃちな玩具おもちゃは似合わねえ。makitaならきっとやってくれるだろうよ」

「ゴム製のいかつい装甲板もついているかも知れねえな! 楽しみだな! 鼻血が出そうだぜ!」

「兄貴、俺も楽しみすぎてふんどしが血に染まりそうだぜ!」

「鼻血を垂れ流しながらご歓談中のところ申し訳ないが、クソ兄者ども」

「ミツ、お前ってやつは五歳なのにそんな言葉を覚えやがって……。将来が楽しみでしょうがねえな!」

「俺が五歳なのは作者の設定ミスだ、気にするなエツのクソ兄者」

「く……! たまらん……!」

「クソ兄者の趣味はさておいて、さっき届いたmakitaの掃除機はこれだ」

「は!? お洒落マダムが鼻歌を歌いながら使っていそうな、その貧弱な掃除機がmakitaだと!? 筋肉の気配がまるで感じられないその掃除機が!? 嘘をつけ!」

「嘘じゃない、これが現実だ。この側面をよく見てみろ。辛くて直視できないかも知れんがな」

「こ、このロゴは間違いねえ……。間違いなく、あのmakitaだ。……エツの兄貴、俺、もうどうしていいか分かんねえよ」

「落ち着け、ロク。ないなら作ればいいだけだ」

「流石、兄貴だぜ!」

「ふ……。まずはドリルを付けるぞ。手伝え、弟どもよ」


「ごるぁぁあああああ、お前たち! 私の荷物を勝手に開けるんじゃないよ!」

「「「かかか、ドリル母ちゃん!?」」」


 悪の秘密結社筋肉ふんどし団。構成員の長男のエツ(十歳)、次男のロク(八歳)、三男のミツ(五歳)は今日も仲良し。

 三人仲良くお尻ぺんぺんの刑。









※実際のmakitaのコードレス掃除機は、評判が良い商品です。残念ながら電動ドリルや釘打ち機の機能、装甲板はついておりませんので、ご安心ください。それから、このお話は当該商品を、宣伝したり貶める主旨のものではありません。(念のための注釈)。

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