終章 そして二人は
心地よい鳥のさえずりの聴こえてくる緩やかな傾斜の並木道。
朝の光がひときわ鮮やかなのは、きっと今日が特別な日だからだ。
ここで昨日美しい夕日の中、一生忘れることはないであろう鮮やかな景色を見た。
そう、あの人の肩越しに。
そして昨日までと違う新しい朝が目の前に広がっている。
穏やかな風が揺らす少し色づいた葉をつけた桜の木の下で、少女は静かなときめきを胸に少年の姿を探す。
やがて今日も少し恥ずかしげな顔をした少年は、少女に向かって手を振るのだ。
「おはよう」
そしてひかりは駆けだす。
抑えきれない心のままに。
澄みわたった空の下、長い黒髪は弾みながら光を集める。
お互いに初めて出会ったかのように二人は恥じらいを見せ、少しはにかむ。
「持ってあげる」
肩に掛けていた荷物に少女はそっと手を伸ばす。
そしてこの眩しい笑顔を見せる少女の手は、簡単に少年の心の中に届いてしまうのだ。
「いつもありがとう」
ひかりの大好きな少し恥ずかしげな声。
「いいの。持ちたいの」
そしてひかりはいつも優しい笑顔を向けてくれる少年にそっと寄り添う。
顔を上げた二人の向こうに朝日に映える白い校舎が見える。
昨日までとはまるで違う鮮やかな景色につつまれながら、二人は肩を寄せ合い歩き出した。
ひかりの恋 ひなたひより @gogotoraneco
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