【コラボ】『ようこそ、夢のふくろうカフェへ!』×『鋼鉄の片翼』中編
十メートルを超える丸々と太った夢鼠が、二人と一体に向かって咆吼をあげる。
“で、でかくない!?”
オオタカの頭の中で、トビが焦ったような声をあげた。
巨大な夢鼠が今度は声を出さずに大口を開ける。口の中から、黒く染まった塊が、オオタカたちに向かって放たれた。
“なんか出してきた!?”
人を包み込むほどある巨石のような弾を、オオタカとれもんとすだちは翼を羽ばたかせてかわす。
夢鼠は口を開けたまま、さらに一発二発三発と弾を連射する。無数の黒い弾が、まるで雨のようにオオタカたちへと襲いかかる。
「わわっ!? わわわ~~~っ!?」
「すだち、捕まって!」
すだちが弾をさばききれず、悲鳴をあげる。ぶつかるすんでのところでれもんが手を握り、すだちを引っ張った。
オオタカも両翼の
“これじゃあ、近づけないじゃない!”
オオタカの頭の中で、トビが困ったように叫んだ。
夢鼠から放たれる弾幕を避けるのに手一杯で、オオタカたちは前へ進むことができない。防戦一方になっていた。
「すだちを夢鼠の上まで連れて行ければ、なんとかなるんだけど……」
「で、でも、こんなにたくさんの弾、避けていけないよ~」
れもんとすだちは手を握ったまま、弾を避けつつ言葉を漏らす。
すると、オオタカが弾をかわして、れもんたちのそばまで飛んでやってきた。
「そいつをアレの上まで持っていけばいいんだな?」
「えっ、うん」
「おれがやる」
そう言って、すだちの空いている腕をつかんだ。
「へっ……?」
目を点にしているすだちに構わず、オオタカは腕を引っ張る。飛んできた弾を横に飛んで避け、夢鼠に向かって目をすがめた。
「
言うと同時に、翼の付け根に装着されている
「えぇ~っ!? お兄さんっ!? 速い、速いよ~~~っ!?」
“ちょっと、オオタカ!? 可愛い子になんてことしてるのよーっ!?”
隣で悲鳴をあげるすだちや、頭の中で騒ぐトビを無視して、オオタカは一直線に夢鼠に向かっていく。真正面に飛んできた弾は、
「わぁ~~~っ!? 目が回るよぉ~~~っ!?」
腕を握られたすだちは、されるがままに振り回されている。
オオタカがすだちの腕を強く握り直し、口を開いた。
「行け」
「へっ!?」
言った瞬間、オオタカは腕を握っている手を大きく後ろへ引き、勢いをつけてすだちを放り投げた。
「わぁぁぁぁぁああああああああ~~~っ!?」
すだちが斜め上へとロケットのように飛ばされる。真下に、巨大な夢鼠の頭が見えた。
「すだち! 今だよ!」
後方にいるれもんが叫ぶ。
「うっ、うん~っ!」
すだちは溢れそうな涙をぐっと堪え、鎖鎌を握り締めた。翼を羽ばたかせて減速し、夢鼠の頭の真上で止まって、鎖鎌を振るう。
「リストリクテッド・チェーン!!」
一本だった鎖が放射状に分かれ、まるで蜘蛛の巣を張るように夢鼠を囲む。鎖は夢鼠の体を締め上げ、動きを拘束した。開けていた大口も鎖によって強制的に閉じられて、弾を放たせないようにする。
「れもん! お兄さん! 今のうちに!」
もがく夢鼠の頭上で、すだちが鎖を思い切り引っ張っている。
弾幕がなくなった隙に、れもんは翼を羽ばたかせて夢鼠へ接近する。オオタカも
“一気に決めるわよ!”
オオタカの頭の中で、トビが叫んだ。
オオタカとれもんは、夢鼠の頭上まで飛んでいき、それぞれの武器を構える。
「夢に巣くうものは、夢の中で散れ」
れもんが言葉を紡ぐと同時に、手に持っていた刀が銀色のきらめきを帯び、徐々に太く大きくなっていく。自身の背丈の倍ほどある大太刀を、大上段に振り上げる。
オオタカは手にしていた剣を天へ掲げる。小さな羽が重なり合ってできた剣が光を帯び、左右に開いていく。そしてひとつひとつの羽に埋め込まれた
「
解き放たれた剣を、オオタカはれもんと同じように大上段に振り上げた。
「
れもんが叫ぶとともに、夢鼠の体を右から斜め左へとぶった斬る。
「はぁぁぁぁぁあああああああっ!!」
オオタカも同時に、夢鼠の体を左から斜め右へと叩き斬った。
巨大な夢鼠の体に、バッテンの斬り跡が走る。そこから光の粒子が溢れ出し、次の瞬間、夢鼠は断末魔をあげながら爆散した。
光の粒子が、まるで雪のように、周囲に降り注ぐ。襲いかかってくる夢鼠はもういない。森の上で、オオタカとれもんは軽く目を合わせて互いに肩の力を抜いた。
“やった……! 倒したのねっ!”
オオタカの頭の中で、トビが跳ねるような口調で言う。
すだちもれもんのそばまで飛んできて顔を見合わせ、ツインテールを揺らしながら破顔した。
それから、れもんとすだちは、オオタカのそばまで飛んでいく。
「ありがとう。助かったよ」
れもんがそうお礼を述べ、手を差し伸べる。
オオタカはなにも言わない。体が光に包まれていき、その光がふたつに分かれる。光が収まると、そこにはもとの姿に戻ったオオタカとトビがいた。
「いやぁー、それほどでもないわよっ」
トビは照れたように頭の後ろを掻きながら、れもんと握手を交わす。
それから隣にいるオオタカを横目で睨んだ。
「ところで、オオタカ! あなた、可愛い子になんてことさせるのよ! なんとか言ったらどうなの!」
そう言って、隣の肩をバンバンと叩く。
一方のオオタカは反応がない。だしぬけに体がふらりと揺れた。
「あっ、そういえば……」
今さらながらに、トビはここが空中で、オオタカが片翼だったことに気づく。それ以前に、合体によるエネルギー消耗で、機能を停止しているらしい。
目を閉じたオオタカは、頭から下へと落ちていく。
「やっぱり、こうなっちゃうのねーーーっ!?」
ぽかんと見ているれもんとすだちを置いて、トビは落ちるオオタカを追っていくのであった。
〈続く!(あれ……終わらないんだけど!?)〉
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