あたしの言う事が聞けない訳?

 シオン母娘がお父さん消しを依頼してきたので、言われた通り消してやった。

その後、再びシオンの部屋に戻ってきたあたしとシオン。


シオンが「カズラに借りができたから、私にできることは何でも言ってね」と言ってきた。


早速、借りを返してもらおうか。



 「実はさ、シオンにウザいクラスメート消しの手伝いをしてもらいたいのよ」

あたしは手伝って欲しい内容を正直に話した。


「ウザいクラスメート? 誰のことなの?」

あたしがウザくても、シオンはそうじゃないか。…説明が面倒だ。


「1人目は水寺綾芽みずでらあやめかな。あいつ、出しゃばりだし声がウザい」


「……」

シオンは黙って聞いている。


「2人目は畑山琴音はたけやまことね。猫なで声と男子に媚びを売る姿がウザい」


「畑山さんは、確かに嫌われているかな。私もそういう話は聴く」


他人の話じゃなくて、あんたはどう思ってるのよ?


「最後は黒空葵くろぞらあおい。アイツ、真面目過ぎじゃね?」

今まで数回、携帯の件で注意されたな…。思い出しただけでイライラする。


「黒空さん。少し頭が固いかもしれないけど、良い人だと思うよ」


ちっ! シオンは黒空を悪く思っていない。



 「ちょっと待って。カズラ、まさかその3人を消す気なの?」


「そうしたいけど、現実的に難しいの。数年前、ある高校で神隠しがあったというニュース、覚えてる? シオン?」


「…そういえば、そんなニュースがあったような気がする」


あたしも自称悪魔に会うまで、そのぐらいの認識だったよ。


「消し過ぎるとニュースになるのは、過去が証明してる。

だからさ、消せるのは1人、運が良くて2人かな」


「……」

シオンは考え込んでいる。シオンのお父さんはクソ親父だったから問題ないけど

クラスメートは違う。消すことに躊躇しているんだろう。


「誰を消すかは決めてないけど、近いうちに決めるよ。その3人の誰になっても、シオンは協力してくれるよね?」


「……」

乗り気でない沈黙なのは明らかだ。


「あんたさ、あたしがお父さんを消したんだよ。あたしに借りがあるでしょ?

ならあんたは、あたしに力を貸すべきじゃないの?」


「……」

泣きそうな顔になるシオン。いじめてるつもりはないけどなぁ…。


「心配しなくても、あんたに容疑がかからない程度の手伝いにするから安心して。

消す現場に居合わせろとも言わない。簡単なことだけ頼むつもりだから」


「……」


さっきからシオンは黙ったままだ。使えないなぁ…。

こうなることがわかってたら、お父さん消しなんて受けなかったよ。


「ねぇ…。本当に簡単なことで良いの?」

やっとシオンがしゃべってくれた。


「うん。約束する」

シオンはあたしより真面目だ。あたしにできないことができるはず。


「お母さんに迷惑にならないならやる」


乗り気じゃなかったのは、お母さん絡みか。良い子だね~。シオンは。


「やる気になってくれたところで、お願いしようか。

…黒空のプライベートを探ってくれない?」


これなら簡単だし、シオンのお母さんにも迷惑はかけないでしょ。


「黒空さんの?」


「そう。なるべく多くの情報をつかんで、あたしに報告してね。仲良くなる手段は任せるから、適当にやって」


誰を消すか悩んでいるのは事実だが、水寺・畑山・黒空の内、直接話したことがあるのは黒空だけ。なので、ウザさのレベルが段違いだ。


消したい第一候補の情報は、なるべく持っておきたい。


「それぐらいなら良いけど…」

シオンは承諾してくれた。


「言っとくけど『』なんて許さないからね」

大丈夫だと思うけど、シオンを睨んで警告しておいた。


「わかってるよ…」

怯えた表情をするシオン。…やり過ぎたか?


「さて、もう遅いし寝ようか」

深夜に帰ってくるシオンのクソ親父に合わせて起きたのだ。


まだ深夜と呼べる時間だから、余裕で2度寝できる。


「お休み。カズラ」

シオンは部屋の照明を落とした。

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