ウザい奴消しの後押し

 友達の天草あまくさシオンの家に泊まることになったあたし。目的はシオンのお父さんを消すことだ。そのことは、シオンとシオンのお母さんの許可を得ている。


夕食にカレーをごちそうになった。ルーのとろみや辛さの好みが合わなかったけど仕方ないか。わがままを言ってるのはあたしだし。


その後は、1番風呂をいただいた。さすがのあたしも気になったが、シオンのお母さんが勧めてくれたので、ありがたく入らせてもらった。


シオンのお父さんが帰ってくるまでは、シオンの部屋で待機だ。

帰りは深夜みたいだし、既に敷いてある布団で仮眠しようかな?



 …布団の上でくつろいだら、掛け布団すらかけず寝ちゃったか。今何時だ?


22時50分か。もう深夜っていえる時間帯だよね?


あたしはベッドでスマホをいじっているシオンに訊いてみた。


「シオン。お父さん帰ってきた?」


急に声をかけたので、シオンは体をビクッとさせた。


「びっくりした。カズラ起きたんだ。…いや、まだ帰ってないよ」


「そっか…」


2度寝しようかな? そう思った時、玄関の扉が開く音が聞こえた。


「帰ったぞ~!!」

やけにデカくて酔った感じの声だな。この声の主が、シオンのお父さんか。


「おかえりなさい、あなた。もう少し静かにしてもらえる?」

シオンのお母さんが、お父さんの声のボリュームを気にする。


「あ? 何でだ?」

不満そうに反論するお父さん。


「シオンのお友達が泊りに来ているのよ。だから…」


「この家の主は俺だぞ。なんで俺がシオンの友達ごときに遠慮せねばならんのだ」


横暴な態度だな~。シオンとお母さんが頭を抱えるのがわかる。

相手がクズだと、消すのに躊躇しないけどね…。


その後は、声が聞こえなくなったからよくわからない。



 シオンの部屋の扉がノックされる。シオンが返事した後、お母さんが顔を出す。


「あの人はソファーで寝てるわ。…カズラちゃん。お願いしても良い?」


「わかりました。今行きます」


あたしとシオンは、リビングにあるソファーに向かう。



シオンのお父さんは、ソファーに寝転がって寝ている。

いびきはうるさいし、酒臭い。近くにいるだけでイライラするな。


あたしは黒の球体を出した。そしてそれを、シオンのお父さんに押し込む。

シオンのお父さんは吸い込まれるように消えていった。


なんだ、人も物と同じように消せるんだな。


「凄い…、本当にあの人がいなくなった。これで平穏な生活が戻ってくる」

シオンのお母さんは涙を流している。


「カズラ、本当にありがとう」

シオンにお礼を言われるあたし。



 シオンのお父さんを消した後、あたしはシオンは再び部屋に戻った。

お母さんはお父さんの私物を捨てる準備をするらしい。


やることはやったんだ。後は好きにしてね。


あたしは布団、シオンはベッドの上にいる。あたしがシオンを見上げる形だ。


「やっぱり、カズラの力は凄いね。あっという間に消せちゃうんだもん」


「あたしも驚いた。人も物と同じように消せたからね」

これは今後の役に立つ。最初にシオンのお父さんを消してよかった。


「カズラには借りができたから、私にできることは何でも言ってね」


シオンのその厚意、あたしのウザい奴消しに利用させてもらうとしよう。

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