さあ、誰を消そうかな?

 登校中、あたしは昨日の夢で自称悪魔が言った事を考えていた。

数年前にも、あたしのような力を誰かに与えたけど、天使に邪魔されたらしい。


その数年前には、ある高校で教師1名と生徒3名が神隠しにあった、というニュースが流れたことがある。他人事なので、それ以上は知らないし興味ないけど。


…時期が一致してね? これって、神隠しの原因は自称悪魔の力になる訳か。

なるほどね~。誰かは知らないけど、前の人がいると便利だわ。


だってそうでしょ? 多くの人を消し過ぎると、ニュースになる。

それを前の人が証明してくれたんだから。


水寺綾芽みずでらあやめ畑山琴音はたけやまことね黒空葵くろぞらあおい

消したいのはこの3人だけど、3人全員できるとは思わないほうが良いな。



 「おはよう。カズラ」

歩いている最中、後ろから肩を叩かれる。考え事してるんだけど…。


「なんだ。シオンか。驚かせないでよ」


「『なんだ』とはひどいな。せっかく声をかけたのにさ」


「ごめんごめん。怒らないでよ」

何であたしがシオンのご機嫌取りをしなきゃいけないの?



彼女は天草あまくさシオン。あたしのクラスメートだ。あたしと同じく名前が変わっているため、自己紹介の後から何かと声をかけてくる。


最初は面倒だったけど、今は数少ない友達かな。


と言っても、プライベートは知らない。連絡先は交換してるけど、実際に連絡したのは数回だ。これぐらいの距離感が好きなので、あたしは満足している。


…そうだ。シオンに自称悪魔の力のことを言ったら、どんな反応するかな?


「シオン。あたしさ、何でも消せる力を手に入れたんだ」

2人並んで歩いている時に話してみた。


「ふ~ん。夢と現実がごっちゃになってるね。まだ寝ぼけてるな」

デコピンされたんですけど。言い方のせいか?


「だったら、証明してあげるよ。いらない物ない?」

あたしが用意しても良いけど、それだとヤラセに見えるよね。


「じゃあ、これで良い? さっき切れちゃって…」

シオンはポケットから、紐が切れたストラップを取り出す。


「OK。さっそく消してみるよ」

あたしは小さい黒の球体をイメージする。イメージ通りのものが手の平に出る。


「ちょっとカズラ!? 何それ!?」

シオンは黒の球体に興味津々だ。


あたしは左手に黒の球体を出した状態で、右手でシオンのストラップをつかむ。

そのストラップを、黒の球体に押し込んだ。


押し込まれたストラップは消え、黒の球体も消え失せた。


「え…、今の何!? マジックなの?」

シオンの興味はまだ消えない。それどころか、膨れ上がっている。


「これが何でも消せる力だよ。信じてくれた?」

ついでに、両手と袖口も見せる。隠していないアピールだ。


「凄い…凄すぎるよ。カズラ。私もその力欲しい」

かなり食いついているな。これを聞かせたら、どんな反応するかな?


あたしはシオンの耳元で囁いた。

「この力さ、人も消せるんだよ」


それを聞いたシオンは目が点になる。気持ちはわかる。

しばらく考え込んでいたシオンが、口を開いた。


「だったらさ、カズラ。消してほしい人がいるんだ」


「いいよ。聴いてあげるから、話してみて」


何を言い出すのかな? 条件次第では飲んでも良いけどね。

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